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89 ビイル・グレモリー 1

お待たせしました!!

「すまないが、アリス少しの間待ってて貰えるか?私はこれから魔王様に報告をしなければならないのだ」

「分かりました、お父様」


アリスは私にはまったく勿体無い娘だな。本当によくできた娘だ。


私は自然に笑みを浮かべてアリスの頭を優しく撫でて、魔王様の下に向かって歩き出した。





私は謁見の間で魔王様に報告していた。

「ビイル・グレモリーただいま任務を終えて戻りました」

膝を地面につけて顔を下げる、下げずにはいられない圧倒的強さそれがビンビンと伝わってくる。魔王様は私たちの命を容易く奪うことなどは無いが、それが出来ることが肌で感じられる。魔王さまは玉座に座りながら私の話を聞く。

「そうか、ご苦労だなビイル・グレモリー。報告を聞こうか」

「ではー」

私はあったことをありのままに報告した。無論あの不思議な猫オズワルドのことも報告した。正直報告したく無い事だったが。

魔物に街を襲わせた事、勇者との戦闘、オズワルドとの戦闘、そして娘奪還。

魔王さまはそれに黙って耳を傾ける。


「そうか……勇者はどうなった?」

私は深々と頭を下げて質問に答えた。

「すみません、魔王様あの後はどうなったか分かりません。たぶん存命かと……」

「そうか、それついては調べておかなければならない。すまないが誰かに調べさせてくれ」

陛下のそばにいる側近がそれに答える。

「分かりました、陛下ではこちらで調べておきます」

「ああ、頼む」


側近それは最高幹部のようなものだ。幹部以上は強さもそうだが頭も切れるも求められる。将としての才覚が求められるのだ。



魔王様:レベル????

側近:レベル100~????代

幹部:レベル80~???代

上級兵士:レベル70~???代

中級兵士:レベル50~60代

下級兵士:レベル30~40代



???はレベルの上限が無いからだ。レベルが高くても将として才覚が無いと幹部にはなれない。逆に強さが無い者は文官になる者もいる。


魔王様のレベルは分からないが、私より遥かにレベルが高いことだけは分かる。





「それでそなたを助けたオズワルドと言う猫は連れてこなかったのか?」

「本人が希望してその場に残りました」

「そうか……是非どこかで会ってみたいものだなその猫に」

「申し訳ございません」

私は連れてこなかったことを責められていると思い、急いで頭を下げる。

「そなたを責めてるわけでは無い気にするな」

そう言うと黙ってしまう。


「まあ良い、そなたの娘は無事か?」

「はい、怪我もなく」

「一応無事な姿を我にも見せてくれるかの?」

「わ、分かりました」

私は戸惑いながら立ち上がり、外に待たせている娘を呼んだ。





「……いない」

娘がいなくなっていたのである。

「一体どこに……」

「どうした、ビイル・グレモリー?」

「すいません、魔王様……娘が消えました……」

「消えた?!」

魔王様が慌てたように立ち上がる。そこに新たな報告が入ってくる。

「すいません、陛下!!」

「なんだ?」

「お嬢様にまた逃げられました!!」

そこには服が汚れて無残な姿の男性がいた。

「またか……」

魔王様はため息をついて、頭を振った。

「いつも通り対処してくれ」

「それが……そのさっきまでここに居た少女も一緒に連れ出したようで……」



「なんだと?!」



魔王様は慌てたように立ち上り、謁見の間から早足で外に出る。私は自分の娘が関わっていることので魔王様の後に付いて付いて行く

「な、なにか問題でもあるのですか?」

「我の娘一人なら問題ないのだが……そなたの娘がいるとなると問題だ」

「どういう事ですか、魔王様?」

「……それより話にくい、我の隣に来い」

私は失礼が有ってはいけないと魔王様の後について歩いていたのだが……。

「わ、分かりました」

「陛下少し魔力を下げて頂かないとビイル・グレモリーも隣を歩きにくいかと」

「そうか、すまない。すぐに下げる」

側近のアドバイスを聞いてすぐに威圧が下がり、隣を歩きやすくなる。

魔王様と並ぶように早足で横を歩く。

「我の娘の趣味はな魔物を倒すことなのだ。そのせいで十歳でレベルは70近くまである」

「十歳で、ですか…」

それが本当なら魔王様の娘は私より少し弱いぐらいだ。十歳でそのレベルさすが魔王様の娘と言ったところでしょう。

「そうだ、中々難しい年齢でな。我も仕事に忙しくあの子に中々構ってやれなくて、魔王の娘と言うことで遊び相手も出来にくく。魔物を倒すことが遊びみたいになっていてな。寂しい思いもさせて、ついついあの子に甘くなってしまうのだ。母親がいれば……そう思ってしまう」

そこには確かに魔王様がいたが、その顔は娘のことを思うただの父親そのものだった。

「分かります、私の家内もあの子を産んだとき亡くなってしまい。男手一つであの子を育てました。色々至らない点もあったと思いますが、あの子は真っ直ぐ育ってくれました」

「我は忙しくて自分の手で娘を育てることさえ出来なかった。乳母に任せっきりでな」

魔王様の短い言葉には後悔の念が一杯に詰まっていた。

「そのせいか構って欲しくてわがままを言う事が多くてな、今回もそれで勉強から逃げ出したのだろう」

「それに私の娘が連れて行ったことに問題が?」

「我の娘の趣味が魔物を倒すことだと言ったな」

「まさか!!」

私のある考えにたどり着いて仕舞う。

「娘はな鬱憤を晴らすようにいつも魔物を倒しに行く」

「魔物のレベルはいくつぐらいの所に?」

「平均50くらいだが……娘がレベルが高くても何かを守りながら戦うのは別の技術が求められる。何か起こる前に急がなければ」

私たちは話の最後は走っていた。


何も無ければいいのだが。



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