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75 長老とのお話

取り敢えず3000字まで頑張ってみました。

今回は長いです。



俺は突然入ってきたエルフを見た。ここでは珍しく四十代ぐらいの見た目のおじさんだ。俺がエルフの里に入って見たエルフの見た目は三十代以下だった。俺は始めて年をとったエルフの姿を見たかもしれないな。


「あんた誰?」

「ここで長老と呼ばれている村一番の年寄りじゃよ」

「そこまで年寄りには見えないんだが?」

「エルフは年を取るのが遅いからの。すでに生を受けてから千年以上経っているかの~」

この容姿で千年以上か……エルフの見た目は当てにならないな。

「年長者の顔を立てるということでここは怒りを鎮めてくれないかの?」

「別に構わない。それはもう良い」

そもそも脅すだけで村を無くすつもりは無かったからな。リリアナたちが頭を下げてくることを踏んで、そこでやめるつもりだったし。

「長老どうしてここに?いつもは滝にある家で引き籠っているのに」

「何やらとんでもない魔力を感じたからの、面白そうなので覗きに来たのじゃ。すまないが同席させてもらうぞ」


そう言って空いている椅子に腰を下ろす長老。はっきり言ってただの年寄りじゃ無いな。あれだけの魔力を見たらここまで入ってくるのには誰もが躊躇するはずだ。特に魔力に敏感なエルフなら尚更。実際に家の周りに集まってきたエルフはいても中にまで入ってくるエルフはいない。なのにこいつは面白そうというと言う理由で入ってきた。何なんだこいつは?


族長は長老が入ってきたことで冷静さを取り戻したのか、床から椅子へと座り直した。それと同時にリリアナたちも椅子に座り直す。


「それで俺に関する話はもう良いな」

俺はもうこれを話題にしないと言う意味を含めて全員に聞く。誰もが否定しない、と言うかさせないぜ。


「次は本だな。これは俺も気になっている」

俺はそう言ってアイテムボックスから本を取り出した。教会から盗んできて汚れ一つ無い本だ。一体何なんだこの本は?


「これが破壊不能な本ですか…」

取り敢えず俺の怒りが収まったのからだろうか、さっきの取り乱しを無かったかのように振舞う族長に少しイラっとしながらも面倒なのでそのまま話を進めることにした。何事も我慢だな。


「百聞は一見に如かずだ。実際に精霊魔法で何かしてみろよ」

俺がそう言うと族長は俺の顔色を若干伺う。そして手を本にかざす。

「では遠慮せず行きます。精霊よ、この本を濡らせ」

水の塊が本を包んだ。青い琥珀みたいな感じだ。水の中心に本が浮いている。


族長が精霊魔法を解いて、本が机の上に落ちる。その本には水滴が一滴も付いていない。簡単に言うと濡れていない。族長は次は火で燃やしたが、本の表面熱くなっただけで特に変わりは無かった。


「長老この本が何なのか分かりますか?」

「そうじゃの~……。すまないが白猫くんワシの家まで付いてきてくれないかの?少々聞きたいことがあるのじゃ二人きりで」

何の前触れもなく長老はそう言って机の上に置いてある本を掴むと立ち上がった。俺は黙って長老の後について歩いて行った。





長老の家は族長に家よりさらに奥の森の中に建っており、すぐ近くには立派な滝がある。家はこじんまりとしていたが、一人暮らしには丁度いいくらいの家だな。掃除とかが楽そうだ。


「さあ、入ってくれ」

そう言って長老はドアを開けて俺を中に招き入れた。中は意外と整って、普通のテーブルと食器棚、本棚それと勉強机を大きくしたような物。

俺が部屋の中に入るとドアを長老は閉める。




「さて、白猫くん君は転生者だね?」

長老は勉強机の椅子に座り本を机の上に広げてパラパラと見ながらテーブルの椅子を出す。俺は出された椅子に飛び乗り座ると返事をした。

「ああ」

俺が返事をすると本を閉じて、俺を見て意外そうな顔をする。

「どうした?」

「いや、あっさり返事をしたからの」

「ほとんど確信があって聞いてきたみたいだからな。構わないかと思ってな。それに俺に気を使って二人っきりになったんじゃないのか?」

俺が聞くと長老は取って置きのイタズラがバレた子供みたいに笑って頭をかく。

「まあ、確かにそうじゃな。好き好んで昼寝を満喫するために人から猫にを転生する者に会ってみたかったからの」

「ふ~ん。じゃあ、今度は俺からの質問だな」

俺はそう言って一息おいてから言葉を口に出した。

「どうして俺が転生者だと分かった?この本に書いてあることは本当か?」

「それは年の功じゃよ。大抵のことは経験しているからの、経験から来る推測じゃよ。それと本に書いてあることは見る限り本当じゃよ」

やはり本当のことか……一体何のために?

「なんでこのような本があるのか知っているか?」

「分からんの」

「分かんないのか……残念だな」

俺はそう言って項垂れた。しっぽも元気を無くして椅子の下に垂れる。それを見て長老は笑って俺の頭を優しく撫でる。優しく力強い撫で方だ。何となく心が落ち着く。

「そう気を落とさないでくれ。ワシが答えられえる質問なら答えてやるかの」

俺はさっきとの落ち込みようが夢かのように、長老に笑みを浮かべながら質問をした。





「あんたは神またはそれに準する者に知り合いがいるんじゃないか?」

俺がそう言った途端少し心音が乱れ、呼吸も乱れる。猫じゃなかったら気付かなかったな。

「何のことかの?」

「おいおい、とぼけんなよ。心音と呼吸が思いっきり乱れたぜ」

俺がそう言うと長老は首を振って否定する。

「たまたまじゃろ。歳のせいじゃ歳の。歳はとりたくないの~」

そう言って腰を叩くを動作をする。

「長老あんた自分が神と知り合いだって、自分で言っていることに気づいていないのか?」

長老とは腰を叩く動作をやめて、椅子に座り直す。

「ほお~ワシがいつそんな事を言ったかの?」

長老が俺に挑戦的な目を向ける。多分俺がカマを掛けているだけだと思っているのだろう。

「おいおい、体は衰えても頭まで衰えるのは早くないか?」

長老は数刻の時を顎に手を当てて黙って思案していたが、首を振って口を開いた。

「ワシはそんな事を言った覚えは無いんだがの~」

俺はゆっくりと息を吸い込み口を開いた。とびっきりの笑みを浮かべて。




「長老あんたさ『昼寝を満喫するために人から猫にを転生する者に会ってみたかった』って言ったよな」

長老はそこでハットしたようね表情をする。

「なんで俺が昼寝を満喫するために転生したと知っているんだ?それは神しか知らないはずだぜ」

長老は天井を見て、自分の額を叩いて唸る。自分のうっかりさに後悔してるのだろう。

「迂闊じゃったな」

そして俺に向き直った。

「確かにワシは神、正確には女神を知っておるし、背後にいるのも女神じゃ」

「そうか。ならこの本が何の役割を持つか知っているな?」

「知っておるが……すまないの。それを話す権限は無いのじゃ」

「…そうか」

残念と言う気持ちよりやっぱりと言う気持ちだった。話せるのだったら最初の時点で話しているだろうしな。多分話せないようになっているだろうとは思っていた。まあ、長老の背後に女神がいることが分かっただけでも良しとするかな。


「だがそれについて話す権利を持っている奴がどこにいるかは教えられるぞ」

俺はそれを聞いたとたん長老の胸に飛び込み長老を見上げる。

「誰だそいつは?!どこにいるんだ?!」

俺の興奮しように若干長老は驚いているようだった。仕方ないじゃないか。もう少しで謎が解けるかと思うと少しワクワクする。


「それはの魔族の国にいるのだ」

意外な場所の名前が上がって俺は聞き返した。

「魔族の国?」

「そうじゃ魔族の国じゃ。お前が望むのなら行く手筈ぐらいは」

「あ、良いよ別に」

長老はさっきと俺の様子の違いに椅子からコケる。俺は自分の椅子にジャンプして戻った。


「なんじゃその温度差は?」

「だってそんな遠いこところに行くなんて思わなくて……せいぜいこの大陸の中だったら行っても良いかなと思ったんだけどね」


なんだろうな簡単言うと、無料で置いてあるなら漫画をよむけどけど金を払ってまで見る気は無いみたいな。それにせっかくエルフの里に来たんだしばらくは昼寝生活をさせてもらうよ。


「じゃあ俺は帰るな」

俺はそう言って机の上に置いてある本を回収すると家を出た。


「気が変わったらまた来なさい。それとたまには遊びに来るのじゃ」


後ろからの長老の言葉に俺は尻尾を振って返事をした。おもしろい人だったな。

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