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74 猫風情 

遅れました。すいません。

リリアナは旅であった出来事について掻い摘んで族長に話した。その中で族長が興味を示したのは俺の事と本のことだった。凄まじい量の魔力を持った喋る猫と破壊不能な本。興味を持ってもおかしくは無いな。


「でそこに居る猫ですか……」

興味深げに俺のことをまじまじと見つめてくる。

「何だ?」

俺は無愛想に族長に聞く。言いたいことがあるなら手っ取り早く言って欲しいんだがな。

「分かりました。単刀直入に言います。あなたは一体何ですか?かなりの魔力を持っているようですが……」

「随分と抽象的な質問だな。何が聞きたい?」

「言葉の通りです。あなたは一体何ですか?」

「ただの猫だな」

俺の言葉に族長は笑みを浮かべて言葉を否定する。

「私が知っている猫は魔力もそこまでありませんし、ましては話したりもしませんよ」

「じゃあ、人間に改造された猫だって言うことにしてくれ。安住の地を求めてここに来た、そう言う設定ならいいか?」

俺のいい加減な発言に口の端をヒクヒクさせて頬をかく族長。リリアナは諦めたよに頭を抱えてため息をつき、エリカは困ったように笑みを浮かべている。

「私が納得できるように真面目に答えてくれませんか?それになぜこの地に来たかも」

「納得できる理由を勝手に自分で考えて、勝手に納得してくれ。俺は族長を納得させる答えを持ち合わせていない」

「本当のことを言ってー」

俺はそんな族長の言葉を鼻で笑った。本当のことね……。

「何が可笑しんですか?」

俺が鼻で笑ったのが気に入らないのだろう、口調がさっきより荒い。

「族長、あんたは何を持ってあんたはそれを本当のことだと認識するつもりだ?」

「そ、それは道理が通っていて常識がー」

「ニャアハハハハハハ、なにそれ?道理?常識?くだらないな。ニャアアハハ」

俺はおかしくて床を転がって笑ってしまう。流石に俺の態度で堪忍袋の緒が切れたのだろ。

「愚弄するのもいい加減にしろ。猫風情が!!」

族長は椅子から立ち上がり俺に精霊魔法を放とうとするが、俺の自分の体から一気に魔力を解き放つ。感覚的にはサイ〇人からスーパーサ〇ヤ人2になる感じかな。俺の体から魔力を可視化できるほどの濃い魔力を族長に見せる。

「な、何なんだお前は?」

族長は驚き恐怖して、体の動きが止まる。


『猫風情が!!』


この発言を聞くまでもなく族長は俺を最初から獣として一段低くして見ていたことが、俺は目を見て分かっていた。これは教会で暮らしていた時に色々と培った経験で分かるようになった。それにリリアナから話を聞いたが自分の同族そして孫まで面倒を見て貰ったことが分かったにも関わらずお礼の言葉が無かった。そして俺から聞き出そうとしたことは、俺の正体が一体何なのかだ。その目には俺にどの程度の利用価値が有るかを探っていたことが分かった。そして弱みも。多分適当に俺を脅そうとしていたのだろう。族長として村のことを考えていたのだろ。間違っているとは思わないし、否定する気もないが。




舐めるなよ。テメエごときに脅される俺じゃ無い。




ここで圧倒的な強さを見せて屈服させる。人間と違って魔力を精霊で見ることができるエルフは、魔力を見せれば相手の強さがある程度認識できる。俺にちょっかいを掛ける芽をここで摘んでおこう。





「な、何なんだお前は?!」

俺は思いっきり笑みを浮かべて尻尾を左右に振っている。楽しくて仕方ないな。

「お前が言った通り猫風情だよ。まあ、見てなよあんたが言っている道理や常識が、どれくらい役に立たないものかこの村を使って見せてやるよ」

「な、何をする気だ?!」

さすが族長と言われるだけである、まだ俺の魔力を浴びて立っている。

「猫風情が村の半分を消し飛ばしてやるよ」

俺がそういった時、目の前に土下座をする人物が現れる。リリアナとエリカだ。

「すいませんマスター。あたしたちの村を破壊するのをやめてください」

「お願いですマスター」

苦しそうに言葉を紡ぐ、こいつらにもここまでの魔力を見せたことは無かったからな。重圧がすごいのだろう。


俺が二人の土下座を見て徐々に魔力を収めていく。家の周りには多くのエルフが集まってくる。まあ、あれだけ魔力を体から溢れさせれば当たり前か。


「……二人の土下座に免じて村を消し飛ばすのはやめてやるよ族長さん。」

俺の言葉に安心したように膝を崩して地面に座り込む。ソニアは座りながら気を失っていた。まあ、いきなりあんな魔力を見せられたらそうなるな。


「次俺を侮ったりしたら分かってるよな?」

俺の脅しに族長は首を縦に振る人形になっている。面白いな必死に顔振って。


「すまないの。若い者が迷惑かけたようで、わしの顔に免じてそれ以上脅すのはやめてくれないかの?」

背後のドアが空いており、そこには一人のエルフが立っていた。




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