73 呼び出されたよ
俺が昼寝をしている所にあいつら三人が帰って来たのが寝ながらでも分かった。三人は母親がいる部屋に入って行く。うるさくなりそうだ。
中で一瞬の静寂、そして戸惑いの声から歓喜の声に変わって行くのが分かる。中から男のうれし泣きの声が聞こえてきた。
そしてドアが乱暴に開かれる音がするかと思うと、家の中をドタドタと走る足音がこちらに近づいてくる。俺が薄目を開けて音の方向を見ると同時に何かが俺に飛びついてきた。
「な?!」
「マスター!マスター!マスター!」
飛びついきてきたのはリリアナだった。
「何だよ?」
俺は眠りを邪魔されて不機嫌な声で返事をするが、内心はリリアナの俺に対する態度が突然変わったことに困惑していた。リリアナは俺の不機嫌な声にお構いなしに胸にギュッと俺を抱きしめる。おい、苦しいからやめろ。
「ありがとう、ありがとう。お母さんを治してくれてありがとう」
ポタポタと何かが床に落ちる。涙だ。
リリアナは俺を胸に抱きながら涙を流しながら俺に礼を言ってきたのだ。俺は何となく照臭くなり顔を背けて言い訳の言葉を口から出した。
「別に約束だから治しただけだ。三食昼寝付きを忘れるなよ」
「うん。それでも治してくれてありがとう」
そう言ってさらに強く俺を抱きしめる。
待て待てギブギブ
「苦しいもう少し緩くしてくれ」
俺の苦しそうな言葉を聞いて力が緩む。苦しかったぜ。
「ごめん」
「リリその猫は?」
背後にリリアナ達の父親がたっていた。その顔はリリアナの行動に困惑しているようだった。まあ娘が猫に一心不乱にお礼を言っているのをみたらそうなるよな。
「この猫はー」
「お母さんを治してくれたんです!!本当です!!」
リリアナの言葉を遮ってエリカが興奮して話し出す。母親が治ったことの興奮が続いているようだった。
「お父さん。マスターがマスターが。信じてください!!」
「分かった分かった。信じるよ」
リリアナの父親はエリカを宥める様そう言ってエリカの頭を撫でた。
「信じてくれるの?!」
驚いたようにリリアナは顔を上げた。苦しい苦しい力むな息ができない。俺は前足でリリアナの腕を叩いて緩めるように伝えた。
「ごめん、ごめん。興奮しちゃって。でもお父さんどうして信じてくれるんですか?」
「自分の娘がそんな下らない嘘を付くと思わないよ。それにその猫の周り居る精霊の反応を見ればね。普通の猫じゃ無いことは分かるよ」
そう言えば言っていたな俺の魔力に反応して周りの精霊が騒いでいるって。
「白い猫さん。改めてお礼を言うよ。ありがとう」
「別に構わない。俺も対価は貰う」
俺が言葉を話せるのに驚きながらも、俺に発言に目を細めるリリアナ達の父親。何かを見極めるよなそんな感じだ。この瞬間からさっきまで喋っていた男とは別の男のように感じるほど雰囲気が変わった。
「その対価とは?」
「この村の永住と三食昼寝付きの生活の提供だ」
わずかな沈黙。そして………
「っくくくくく、あははは!!」
男は堪えきれなかったように涙を目に浮かべて笑いだした。一体何が可笑しんだ?
「そうかそうか、好きなだけここに居なさい。白い猫さん」
そう言って男は俺の頭を撫でた。手はかなりゴツく、撫で方も乱暴だった。もう少し優しく撫でて欲しいものだな。
ドアが突然ノックされる。
「リリアナ・クロース、エリカ・クロース。族長が呼んでいる付いて欲しい」
この声は……何て言ったけ?ガウルンだっけ?
「分かりました」
リリアナはそう言って俺を離して素早く立ち上がった。
「エリカ行くわよ」
「うん、お姉ちゃん」
二人は一緒にドアから外に出て行く。俺も背後から二人に付いて行った。何となく興味があったからだ。
二人が連れて行かれたのは中央の通りから見える家だった。俺は二人の後をついて一緒に入る。二人は部屋の奥へとガウルンに導かれていった。この家は思った以上に奥行があるようで、家は見た目より広そうだった。
「族長連れてきました」
ガウルンが部屋の前でノックをして、部屋に入れていいかのお伺いをたてる。
「入れてくれ」
ガウルンはドアを開けて中にリリアナ達を招く。俺は真っ先に入っていった。中は何となく校長室を連想させるような配置の仕方になっていた。
中にはソニアと男が一人が座っている。
「座ってくれて構わない」
男は一番奥の席に座っていて座るようリリアナたちに促した。
「失礼します」
二人はそう言って軽く会釈をして椅子に座る。俺はその椅子の足元に座った。
「まずは謝罪とお礼を言おうか。すまないな孫娘のソニアが迷惑かけて、それと連れて帰ってきてくれてありがとう」
族長はリリアナたちに頭を下げて礼を言った。かなり感謝しているようだった。と言うかソニアって族長の孫娘だったのか。結構なお嬢様なのかな?
「そんな、族長?!それにあたし達とソニアの仲ですから気にしないでください」
リリアナはそう言って族長に頭を上げさせようとする。
「そうです。ソニアちゃんは友達ですから」
「すまないな。そう言ってくれると助かる。ソニアお前から礼を言うんだ」
族長はさっきと変わってソニアには強い調子で言葉を吐く。
「ありがとう」
ソニアはそう言って素直に頭を下げて礼を言った。目は少し赤くなっていた、たぶん怒られて泣いたんだろうなという事が分かった。まあ、当然かな。
「今度こう行った事があっても二度としないでね。例えどんなに心配でも。あとエリカあなたもよ」
「分かりました」
エリカは不満タラタラで返事をする。そこで笑みを浮かべて族長が一言口にする。
「あなたは後でお説教です。分かりましたね」
「…はい」
エリカはうなだれながら返事をする。そんなエリカを見て全員が笑みを浮かべる。
族長は真面目な顔になると質問をしてきた。
「それで旅の間何があったか話してくれないか」
族長にそう言われてリリアナとエリカはお互いに顔を見合わせて、目線で相談したみたいだ。そしてリリアナが話し始めた。これまでの旅で何があったのかを。




