71 二度寝
設計図を見る限り、下手したらどんな距離があっても当たりそうな武器だった。まず、矢に穴が空いている理由を俺は軽くして飛距離を伸ばしているのかと思っていたが思い違いだった。あの穴には風のレールみたいのが通るような感じだ。簡単に言うならレールに乗るための滑車の役割をしているのだ。
確かに銃口?で矢が加速されるように風魔法が付いている。だがそれ以外に風のレールみたいなのを出して距離や風などでズレるのを防いでいるのだ。まさしくズレないで狙った所に当たるようになっている。
更には矢には様々な能力を付けるつもりだったようだ。魔法の無力化、矢の先を弾丸のようにして貫通力を高めるものや爆発する矢などを考えてあるみたいだ。
最後には本人に風のレールをつけて逃げられなくすることだ。引き金を引いたら確実に当たるそのような武器を作ろうとしていた。
まったく面倒事が起こる前で回収を出来て良かったかな。まあ、この先面倒なことが起こらないという保証は無いけど。
俺は読み終わるとアイテムボックスに仕舞った。
取り敢えず武器の全貌が分かったことで満足した俺は、猫の姿に戻って、服を仕舞って早々に寝る準備をし始める。
「あれ?マスターお風呂に入らないの?毎晩入っているのに」
「今日は昼寝出来なかったから眠くてな。フレッシュで体を綺麗にしたら寝る」
俺はそう言って体にフレッシュをかけると、体を丸めて寝た。今日一日走っり続けたので疲れた。
「お休み」
「お休みなさい」
「お休みです」
「お、お休み」
三者三様のお休みの返事を聞いて俺は眠りに入った。
久しぶりに夢を見た。夢を見ているのだと分かる夢だ。俺は子猫の姿でクリスと遊んでいる夢だった。じゃれたりしたり、一緒に布団の中で寝たり夢の中で沢山クリスと遊んでいた。
……あんなことが無ければずっとこんな日々が続いたのだろうか。
俺の脳裏にふとそんな考えがよぎったが、俺は考えるのをやめた。
いつかは出ていかなければ行けなかったのだ。出て行くのが早いか遅いかの違いだけだ。
俺が夢の中でそう結論付た時、夢から覚めた。
俺が目を開けると太陽が顔を出して、当たりが明るくなってきていた。
「朝か」
余り寝た気がし無いのに、朝を告げるために昇ってきた太陽を忌々しく思いながら俺は太陽を睨んだ。だが睨んだ所で太陽が引っ込むことは無いので諦めて起きることにした。
俺は体をグーと伸ばすと、アイテムボックスから桶を出して精霊魔法でお湯を入れた。昨日入れなかったから、朝風呂をすることにした。
俺は桶にお湯が溜まると前足から順に桶の中に沈めていった。温度は丁度良く気持ちよかった。俺は頭を桶に引っ掛けてそのままのんびりと入っていた。
そして気づいたら
「Zzzzzzzz」
寝ていた。俺は頭を桶に引っ掛けたままそのまま眠りに付いてしまったのだ。まだ、眠気が残っていたが自分が風呂の中で寝るとは考えて無かった。
「Zzzzzzz。ブクブク。」
バッシャ!!
「ゴホゴホ」
俺は顔がお湯の中に入って、それで目が覚めた。溺れ死ぬことがなくて良かった。俺がむせながらそう思っていると既に全員が起きていて、俺のことを注視していた。
「え~と、おはよう?」
「おはようマスター」
「溺れなくて良かったわね」
目が覚めた時にはリリアナたちは既に起きていた。太陽も完全に出ていた。俺は桶から上がると体を乾かして、桶も片付けた。そのついでに朝ごはんをだしてリリアナたちに配った。
「溺れ死ななくて良かったわね」
朝ごはんを食べながらリリアナが可笑しそうに言ってきた。
「そうだな」
俺は魚の干物を食べながら答えた。
「死因が居眠りか」
「うるさい」
俺が静かに文句を言ったがリリアナは可笑しそうにニヤニヤと笑って俺を見ていた。
「食い意地ならぬ寝意地ね」
ソニアがそう言って腹を抱えて笑った。
「うるさい!!」
俺が強く言ったがお構いなしに全員が笑う。リリアナは腹を軽く抱えて笑い、エリカは顔を背けて笑うのを我慢しながら笑い、ソニアは腹を抱えて転がりながら笑っていた。
「だってだって、ヒイヒイ。起きた時の顔がアハハハハハ、お湯から出た時の顔がハアハア」
そう言って前よりまして腹を抱えて笑うソニア。それが伝染するようにリリアナとエリカの笑いのレベルが上がっていく。
俺は笑いを止めるのを諦めて黙って魚の干物を食べることに専念することにした。
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