64 逃走
俺は村の入口の方に向かって走った。時間的には秒単位でたどり着いたと思う。
俺は獣人と盗賊が混ざり合って戦っていたので訳が分からない状態だった。そこで俺は盗賊全員を蹴飛ばして獣人と盗賊に分けた。これで分かりやすくなった。
俺は獣人に背を向けて盗賊と向き合った。盗賊たちも俺の存在を見ると戦うのを一旦やめて俺を警戒している奴が数人。いきなりの登場に驚いている盗賊が大多数だな。
この反応で分かるのは警戒している数人は実力者だろうな。
「頭?」
手下の一人がこの状況をどう対処すればいいかと頭らしき人間を見ている。
あれが頭か……。
身長は180センチくらいで盗賊と言うよりは道場主みたいな感じだ。髪は青色で適当に切り揃えられていて、武器は片手剣を二本両手に持っている。歳は三十代後半かな
「あんたが盗賊の頭か?」
「…そうだ」
頭はゆっくりと返事をする。
「質問があるんだ」
「なんだ?」
俺は手に持っていたクロスボウを見せて
「これをどこで手に入れた?」
俺が持っているものを見て盗賊全員が息を飲んだ。
「そ、それをどこで?」
盗賊の頭はゆっくりと言葉を口から出した。
俺は森の方を指さしながら
「あそこで隠れていた奴が持ってたのだ」
俺の言葉で盗賊全員が仲間から奪ってきたのを認識する。さてさてどうするかな。
「持っていた奴はどうした?」
「今度は俺の質問に答えてよ。不公平じゃないか」
俺は笑みを浮かべながら意地悪く言い放った。
「…それは奴隷商人に貰ったものだ」
「そうか」
「ああ、それ以外はの事は知らない」
それと同時にお頭は襲いかかってきた。
俺はそれをバックステップで避けながらクロスボウをアイテムボックスにしまった。お頭はしつこく俺について来て、剣を振るった。
「お前ら逃げろ!!」
「ですが…」
「お前らが居たら戦うのに邪魔だ、行け!!」
お頭は俺を追いかけながらそう叫んだ。その言葉で手下どもは勢いよくその場から離れた。
どっかのアニメみたいにくだらない問答は無かったな。まあ、命のやり取りをしているのにそんなことはしてられないか。
お頭は行ったことを確認すると、一旦攻撃の手を止め俺を見る。
「なあ?」
「ん?」
俺も動きを止めて相手の言葉に耳を傾けた。
「俺の命だけであいつらは見逃してくれないか?」
突然の言葉に俺は顎を撫でながら答えた。
「そうだな~保証はできないな」
「……そうか」
俺の言葉に剣を構えなおすお頭。俺はアイテムボックスからミスリルの篭手を出して装備した。
いや、だってあいつらが襲いかかってきたら俺は問答無用で殺すつもりだしな。
俺は心の中でそんなことをぼやきながら、拳を構えた。
そして拳と剣が交差した。
その瞬間後ろからマスターと呼ばれて、意識が一瞬そっちに向いてしまう。
「お頭今です!!」
森の中から火の玉が俺に向かって飛んでくる。
「しまった」
その瞬間俺の体を炎が包んだ。俺は地面を転がるようにして炎を消そうとしたが中々消えない。その間にお頭は森の中に逃げていった。
「死ぬ死ぬ誰か火を止めてくれーー!!」
俺の叫びでエリカが答えてくれる。
「精霊よ彼に水を」
「別に大丈夫よ」
そこでリリアナがエリカを止めた。
「お姉ちゃん何すんの?」
エリカが慌てた様子でリリアナを見る。
「いつまでそんな茶番をしているの?」
リリアナはエリカを無視して怒ったように俺に向かって言う。
俺は起き上がると炎を弾け飛ばした。
「なんで分かった?」
俺が服についた土を払いながら聞いた。
「マスターがこれぐらいでやられる訳がないと思ったのよ。それにあなたは気配察知持っていたでしょう。それならあそこに隠れている盗賊にも気づいていると思ってね。それなら何らかの対抗策ぐらい考えているかと」
俺は魔力で体を覆い火を防いだのだ。
「なんで逃がしたですか?」
リリアナが俺の背中についた土を払いながら聞いてくる。
「あいつらは奴隷商人から貰ったと言っていた。それは嘘ではないだろう。その内盗賊と奴隷商人が会うだろう。そこを狙う」
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