63 盗賊の過去
正確だな。
俺は相手の位置を確認する為のゆっくりと走っているのだが、俺が居た所を正確に射抜いてくる。正確すぎるぐらいに。
普通は風や重力を考えて弓を放たないと当たらないだけどな。これだけの精度ってことは相手は弓の天才かな?
俺はそんな風に考えながら相手に近づいて行った。
そしてついに俺は相手を気配察知の範囲に入れた。
もう、遅くする理由は無いな。
俺は一気に敵まで走り抜け、顔面を蹴り飛ばした。相手は驚いた顔さえできずに背後の木に背中をぶつけた。
「グッハ」
飛ばされた瞬間、男は持っているものを抱えるようにして壊れないように庇った。あれはクロスボウ?しかもスコープみたいのまで付いてる。技術的に作れないことは無いけど初めて見るな。俺はクロスボウを持っている手を足蹴にすると、掴んで触ってみた。全体は木で作られている。全長は一メートルとちょっとあり、矢が飛び出る所には通常のクロスボウにスナイパーライフルのバレルのような感じで、何か文字が刻まれている。そう言えば矢は?
俺は辺りをキョロキョロと見るとさっきまで男がいた場所に矢筒が置いてあった。中には金属で出来た矢が入っていた。
……これはもしかしたら転生者か転移者が作ったものかな。
俺はそう思ってこれをどうしたのかと男に尋ねた。
「これをどこで手に入れた」
「誰が話すか。ペッ」
男はそう言って俺に向かって血の唾を吐いたが、俺にたどり着く前の地面に落下する。
「そうか」
俺はこいつの話を聞くのをやめて、他の盗賊に話を聞こうと思った。こいつは根性があるみたいだから口を割らせるのは苦労しそうだったからだ。それなら他の盗賊に聞いたほうが早く聞けそうだった。
俺が村の方に足を向けると、俺の足に男が飛びかかってきた。
「…なんの真似だ」
「行かせね。あいつらの所に」
俺は黙って男の手を踏み砕くと歩き出そうとしたが、足が止まる。男は俺の足に噛み付いていた。
「いかしぇねといあろ(行かせねと言ったろ)」
「その意志の強さは尊敬に値するな」
俺はそう言って無理やり足を動かして男の体を吹っ飛ばし木に叩きつけた。男はそれで意識を失った。
俺はその場から離れた。
盗賊視点
俺が父親を閉じ込めて、何日かが経った。全身にアザがあった浮浪者みたいな俺を町の人間は気味悪がって、近づかなかった。それどころか暴力を振るってくるやつまでいた。監禁されていたこともあって常識をよく知らなかった俺は金の数え方さえ知らなかった。そんな俺はスラム街の隅っこで丸まって寝ていた。食い物も残飯。
そんなある日、月さえ出ていない真っ暗な夜に俺は襲われた。理由は分からない、突然襲われた。ここではそんなことは日常茶飯事だったので、俺はどんな暗闇でも見えるような目を利用して、相手を返り討ちにして金を奪おうと考えていた。この前もそれで金を奪った。
俺は相手が俺を追いかけるように、適当に抵抗して町の暗闇に逃げ込んだ。だが事はそう上手く運ばなかった。そこら辺のチンピラなこれで十分だったのだろうが相手は冒険者だったのだ。気配察知を持っていて暗闇は余り意味をなさなかった。
俺が殺されそうになった時、冒険者が倒れた。背中には傷が。後ろには男が一人立っていた。
「仲間の仇だ」
後で聞いた話だと、そいつが連れて来た魔物を押し付けられたせいで仲間が殺されたそうだ。それを証明すれば罰することが出来たが、その手段が無く。それで仇討ちの機会を伺っていたそうだ。
「坊主、冒険者を相手によく生き残ったな」
男の感心したような声に膝を地面につけた。
助かった。
俺の心はそれで埋まった。男はそんな俺を見て笑った。
「お前は強くなるな。どうだ俺について行くか?」
俺は何かに惹かれるように頷いた。
「そうか、じゃあ坊主名前は?俺の名前はザブ」
「名前は…無い」
物心付いた時には母親は居なくて、父親だけだけだった。そして名前を呼ばれることは無かった。おい、それで通じたからだ。名前なんて一度も呼ばれた事がない。
「そうか……俺がつけても構わないか?」
俺が頷くと
「サムイ」
迷いもなくそう言ったので俺は気になって聞いた。
「…何の名前?」
「殺された仲間の名前だ」
そう。
それから冒険者を殺したことがバレたので、街から出て盗賊になることになった。
俺とお頭の出会いだった。
お頭から色々な事を習ったお金の数え方から戦いまで色々習った。お頭は俺の家族のような存在になった。そしてこの盗賊組織が俺の大切な居場所になった。俺がそれを守るためだったら命さえ掛けても構わない程になった。
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