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57 桶の正体

残り五日は特に変わった事はなく、俺は半日以上寝て過ごした。エルフ姉妹は母親が助かるかもしれないという事もあって心に少し余裕ができたのか、俺が教えたリバーシを自分たちで作って遊んでいる。

「マスター、この遊びを商人に売ればお金が貰えそうですけどしないんですか?」

エリカがリバーシしながら俺に聞いてきたので、俺は無言でアイテムボックスを開いてお金がいっぱいに入った袋を出した。

「……マスター、あなた一体何なの?」

俺が大金を持っていることに驚くリリアナ。この高そうな宿に泊まった時点で俺が金を持っていることは察せそうなものだが。

「これだけのお金が既にある。これ以上お金を持っても仕方ないだろ」

俺はそう言ってお金をアイテムボックスに入れた。

「マスターには欲はないんですか?」

「いいや、あるぞ。三食昼寝付きの生活をしたい」

「「……」」

二人は呆れたように黙ってしまう。何だよ良いじゃないか、何もしなくて生活なんて最高の贅沢だろう。






そしてあっという間に五日が経ち、俺たちは依頼したものを受け取りエルフの里に向かうことになった。

二人を抱えて走ってもいいのだがそれだとふたりの体もつかどうか分からないので馬を二頭買った。


「そう言えばお前ら二人は馬に乗れたっけ?」

「乗れます」

「乗れるわ。まさかあなた乗れないの?!」

リリアナがニヤニヤとして、勝ち誇った笑みを浮かべて見てきたので俺はムカついてリリアナの頬を引っ張った。

「ひたいひたい、悪かったわよ」

俺はリリアナがそう言って謝ったので放してやった。最初から言わなければこんな事しないのに、無駄な労力を使わせやがって。


「俺は馬よりも速く走れるからな、乗る必要は無いんだよ」

「そうなんですか?」

「マスターの分は?」


「俺は馬に乗れないから、お前らのどっちかの馬に乗せてもらうよ」

「そうですか」

何か諦めたように返事をするリリアナ。

「さあ出発だ」




俺はリリアナの腰に掴まって馬に乗っているのだが……。

「マスターもう少し力を緩めて!!」

「そんなこと言うなら少し遅くしろ!!」

俺たちが乗っている馬は全力疾走しているのだ。思った以上に馬は揺れて全力で走らせているので俺は怖くてリリアナの腰に掴まると言うより抱きついている状態だ。

「俺は乗馬初心者だぞ。少しは手加減してくれ怖いんだ!!」

「マスターこれ以上のスピードで走ってるじゃないですか?それに母の所に早く着きたいですし」

並走するエリカにそう言われたが

「走るのと乗るのじゃ全然違う!!」

俺はそう言って怒鳴った。結構怖いのだ。本当に揺れるし舌噛みそうになるし。



馬が止まったのは辺りが暗くなってからだ。野宿するために止まったのだが、それまでは一回も休まず馬を走らせていたのだ。俺は馬から落ちるように降りた。


「ハァハァハァ」

俺は足がガタガタになってうまく立ち上がることが出来なかった。産まれたての子鹿のようだ。

「情けないですね。それでも男ですか?」

リリアナが馬鹿にしたように見てくる。

「乗馬初心者に無茶させやがって」

俺は寝転がったまま文句を言った。二度と馬になんか乗らないぞ俺は。


十分くらい経って俺は立ち上がると屈伸をして足をほぐした。

「食事にしよう」

俺はそう言ってアイテムボックスから携帯食料出した。売らないでおいて良かった。


「まずいですね」

リリアナが不満を漏らすが

「諦めろ」

そう言って俺は一口携帯食料を口に含んだ。

「そう言えばお前らエルフの里にはどういった食料があるんだ?」

「そうですね。アサビと言う緑色の植物がありますね。大人たちが美味しいと言って魚と一緒に食べていますね。毒消しの役割もあります。だけど辛いだけで私たちは美味しく感じません。後は勇者が伝えたと言う味噌と醤油。あと勇者が食べて泣くほど喜んだサリがありますね。他にはー」

エリカは携帯食料を口に含みながら次の食べ物を言おうとする。

味噌と醤油かいいことを聞いたな。着くのが楽しみだ。


俺は食べ終わると桶を出した。

「それは作ってもらった桶ですね。どうするんですか?」

「ふふふ」

俺は得意満面に笑ってこれの正体を言った。

「これは風呂だ」

「……マスターこれじゃ体が入りませんよ」

俺はエリカのそんな言葉に笑みを浮かべながら精霊魔法で水を満たしてお湯にした。

「大体こんな感じでいいかな」

俺は手でお湯の具合を確かめると猫の姿になってお湯に入った。


「「あ~~納得」」

二人して声を出した。

「あったけ~。和むぜ」

俺は頭を桶の淵に引っ掛けながら体から力を抜いた。

「マスターはこのために?」

「ああ、風呂に入りたかったからな」

「風呂好きの猫って不思議ね。普通は嫌がるのに」

「俺は普通じゃないからな」


俺が風呂から出ると俺たちは寝た。見張りは立てなくても俺が寝ていても気づけるからだ。




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