55 報いを
招かれざるお客が来たか。全く俺の安眠を邪魔するなんて死刑だな。
俺は頭を上げて窓から辺りを見回す。気配で六人程度の暗殺者が来ているのが分かる。ちなみに俺たち以外にも泊まっている客もいるし従業員で起きている奴もいる。
あ、今従業員が倒された。死んだかどうだか分からないけど、まあ、いいや治せばいいし。
俺が窓際で寝ているとドアが静かに開けられる。三人だ。ベッドに近づくが俺の姿が無いことに気づいてベッド辺りを必死に探しているが顔がこちらに向かないので喉を攻撃できない。仕方ないな。
「探しているのは俺か?」
俺の声で全員がこちらに向くが窓には寝ている猫しかいない。全員無防備に喉を晒してくれている都合がいい。暗殺者は全員黒い服で全身を包んでいて、防具などは付けていない。
俺は目にも止まらない速さで暗殺者の喉を切り裂いたが、勢いが強すぎて生首が三個出来てしまった。余り良い物ではないな。全く床が汚れるしな。俺はフレッシュで床をきれいにした。
体が軽く痙攣して、三体とも床に倒れた。その音でエルフ姉妹もすぐに起きた。
「何?」
「何ですか?」
「ん?ただ単に招かれざる客が来ただけだ。まあ、報いは受けさせた」
エルフ姉妹も死体が三体転がっていることに気づいき、自らの口を押さえる。
「これマスターがやったの?」
エリカが俺に聞いてきたので頷いた。
「マスター、あなた意外と強かったのね」
リリアナが感心したように呟いた。
「まあな、あと三人いる。俺はそいつらを片付けに行く。下の階にいる従業員が何かされたみたいだから、様子を見てくれ」
俺がそう言って部屋から出て行くと、すぐに一人を殺して二人は頭に向かって体当りして気絶させた。
俺は暗殺者ふたりをを引きずるために人の姿になると、俺は従業員が倒れている場所に戻るとエルフ姉妹二人が倒れていた従業員に精霊魔法で傷を治しているようだが治しきれていないようだ。
「マスターこの人を!!」
俺が見ると裸であることを気にせず叫んできた。見事に喉元が切られている従業員がいる。
「慌てるな。俺が治すから」
俺がそう言って暗殺者を落とすと猫の姿になった。
人間は案外簡単にすぐには死なないものだ。
「ニャーオン(猫の癒し)」
俺が鳴くと傷口がふさがり普通に息をしている。うん、問題ないな。
「何したの?精霊魔法で治そうとしたけど、流れ出る血液を押さえる程度しか出来なかったのに」
リリアナが驚いたように聞いてくる。
「俺の能力の一つさ。どんな病気でも怪我でも生きていれば治せるほどのね」
「そんな能力まで持ってるの!?」
リリアナが驚いたように声を上げた。まあ、そりゃそうだろう。どんな怪我でも病気でも治せる夢のような能力だからな。
「後でもう一つ俺の能力を見せてやろう」
俺はそう言って人間の姿になって、二階の自分たちが泊まっている部屋の窓から生首と体を地面に落とした。俺は落とし終わると執事服に着替えた。
「さてさて尋問タイムだ」
俺は下の階に降りると
「俺は少し出かける」
俺はそう言って暗殺者二人を外に連れ出した。
俺たちがいるのは街から離れた森の中だ。そう、ここでいくら騒ごうが声が町に届かないくらい遠くに連れてきた。それは俺のスピードがあれば簡単だった。
俺は死体四つを転がし、暗殺者を起こした。エルフ姉妹にこれを見せるのは余り精神衛生上良くないと思ったので連れてこなかった。
「おはよう」
俺が言うと二人は俺を見るといきなり襲いかかってくる。まあ、手を縛ってなかったからな。
「そうか、そんなに死にたいか」
俺は呟きと共に二人の腕を掴み握り締め折った。
それでもまだ諦めないので、残った腕も折る。倒れた二人の両足も思いっきり踏んづけて折る。音はなんだが車がガラスを踏み砕くような音だった。気持ちの良い物ではないな、本当に。
「お前らの雇い主を教えろ」
俺が暗殺者のマスクを取ってそう言うと
「ぺッ」
俺に向かって血を吐いてきた。俺はそれを避けると、男の頭を持って膝に叩きつけた。流石に本気ではやらなかった。やったら死ぬからな。
「ゴッホ」
男は鼻と口から血を流した。意識までは飛ばなかったらしい。
「そう言えばお前らのお仲間さんだ。ほれ」
俺は生首三つと首の所がごっそりなくなってる死体をこいつらに見せた。
「これを俺一人がやった。この意味わかるよな」
二人は目を見開く。自分たちが暗殺者として強いことを自覚している分衝撃は大きだろう。
「助かりたかったら、お前の飼い主を教えろ。まあ、十中八九領主だって分かっているが……まあ、確認だな」
「答える気にはなったか?}
二人が答えないのを見て、俺はため息をついた。
「そうか、仕方ない」
俺は一人の暗殺者の頭を踏みつけ、だんだんと力を強くしていった。
「グアアアアアアアアーーーーーーー」
男がついに耐えられなくて叫び声をを上げる。
「ほら、答えなきゃ頭が潰れるよ」
ビキビキとついに骨が軋む音が聞こえるようになる。
隣にいる男がこの状況に耐えられなくなったのか叫んだ。
「話す、話すから止めてくれ!!」
俺は足に頭を置いたまま顔を隣の男に目線を向けた。
「誰だ?」
「あんたの予想通り、領主だ」
「そうか」
俺は頭から足を退けて、俺がそこから離れようとすると暗殺者が待ってくれと言った。
「都合が良い事は分かっている。だけど足の傷だけでも治してくれ」
「ん~まあ、正直に答えたんだしね」
俺は猫の姿になると猫の癒しを使った。暗殺者は最後に猫と呟いたがすでに俺はその時には居なかった。
「ただいま」
エルフ二人にそう言って俺は帰った。
「おかえり」
「おかえりなさい」
二人が返事をしてくれたことが何となく嬉しかった。
「じゃあ、俺のもう一つの能力を見せてやるよ」
俺はそう言って領主が住んでいる屋敷の真上に跳んだ。これなら猫の咆吼を使っても周りに被害は出ないな。
「にゃーお(猫の咆哮)」
屋敷は消し飛び、でっかい穴が地面に空いた。
「これで俺の眠りを二回も邪魔した報いは受けさせたな」
俺が地面に着地して、リリアナとエリカの所に戻った。
「あれをマスターがやったの?」
リリアナが信じられないと言う風に聞いてくる。
「まあな」
「さあ、帰って寝よう」
俺たちは宿に向かって歩きだした。
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