51 本の謎
すいません、精霊魔法までは行きませんでした。
ごめんなさい
あたしは妹と一緒に、本を読み進めていくにつれてこの本の内容に驚いた。この本には、人間の国がやった悪行などもしっかりと書かれていた。人間の歴史から抹消されたもの物もすべて書かれていた。
一体、誰がこの本を書いたの?
しかも書かれていることは私が知っている限り、年号も正確だ。こいつ、なんでこんな本を持っているの!?
この本は国や教会から、私たちが確実に殺されることばかり書いてあった。そして、後ろのページの方には、止めとばかりにとんでもない事が書かれていた。
1550年 教会により勇者ギーシュ処刑
な?!
詳しく読むと、
魔王の娘を連れて教会に戻った勇者が真実を告げたが、受け入れられず。勇者は魔王の娘に、篭絡されたと言う事を理由に人質を取られ処刑された。この事実は教会が隠蔽し、公式記録では勇者は魔王と共に死んだこととされた。
と書かれていた。先代勇者は二つの名を持っていたと言われている。ギーシュとアズーマ・コージ。親しい仲間にはコージと呼ばしていたらしい。
彼は人間にしては、珍しく奴隷に反対だったそうだ。彼にはエルフ側も大きな恩がある。ミスリル金属の戦争が終わって間もない頃の事。エルフが攫われることが多くなったが、そっちにまで私たちは手が回らなかった。そして、攫われたエルフを救ったのが、勇者ギーシュだった。勇者ギーシュによって、沢山の亜人奴隷が救われた。そして、奴隷の扱いも良くなったと言われている。
まさか、こんな事が。いや、冷静になれ。これが真実だと言う証拠がどこにある。そもそも、こいつはどこから持ってきたんだこの本を?
「ねえ、この本どこから持ってきたの?」
「ん?教会の禁書棚」
あたしは驚いて声も出なかった。教会の禁書棚。証拠抹消のために多くのエルフが挑んで、諦めた場所。
最初に教会の内部に入るところから、難しい。見張りの兵は常にいて、教会の中に入ったとしても禁書棚に入ることも難しい。色々とエルフの間では言われている。
結局誰も中に入ることができずに、私たちエルフが諦めた場所だ。
「なんで、あんたこんな物を持ってるのよ!!」
あたしは思わず怒鳴ってしまった。こいつはそこら辺に落ちていたから、拾ってきたみたいな感じで言ったからだ。仕方がない。
「偶々だな、偶々」
笑ってそう言った。
「偶々で禁書棚に入れるかーー!!いいよく聞いて。その禁書棚に入るために沢山のエルフが犠牲になったのよ。それでも禁書棚には、入ることが出来なかったの。それをッング」
「分かったから少し黙れ」
そう言ってこいつは私の口を摘んで喋れなくした。乙女の唇なのだ、もう少し優しく扱って欲しい。
「お前は、それを読んで目的は達成できたのか?」
こいつの言葉で私は本来の目的を思い出した。
「出来たわ。あなたはどこまでこれを読んだの?」
「全部流し読みして、目は通した」
「なら、ここに書いてあることも、読んだわよね」
私は勇者の処刑について、書かれている所を開いて渡した。
オズワルド視点
俺は渡されたページを見た。
ああ、気になっていたことだ。
「ああ、ここか」
俺の気の抜けた声に声を荒げたリリアナ。
「あなたは、これを見て何か思わないんですか。勇者が殺されてるんですよ!!」
「不思議だな」
「…それだけですか」
俺の言葉に呆れたように俺を見る。
「それ以外に何がある」
「だって勇者が教会に殺されたんですよ」
俺は確かめるように、口にする。
「そうだ。教会は勇者を殺すしか無かった」
「…どういう事ですか?」
こいつ何も分かってないな。俺はため息を付きたくなってしまった。
「勇者が持ち帰った真実とは、勇者を殺さなければいけないほどの事だったて事だ。教会全員が一致で殺さざるを得なかった。そういう事だろう。それだけの真実を教会に持ち帰ったってことだ勇者は。教会も勇者を殺すと言うリスクを犯してまで、その真実とやらを隠したかったんだろう」
俺の言葉に気づいたように目を見開く。
「確かに勇者を殺してまで、隠したかった事って一体……」
俺は更に話を続けた。
「歴代勇者たちにも、不思議なことがある」
「え?」
エリカは驚いたように声を上げた。
「そ、それは何ですか?」
恐る恐るという感じに、聞いて来る。さっき思いっきり、本を燃やすのを冷たく断られたことが効いているのだろうか。
「どの歴代勇者も魔王を倒した後、歴史の表舞台に出てきていないと言う事だ。魔王と戦って死んだとされる勇者がいるが、パーティーメンバーは誰も死んでいなくて、無事に帰ってきている。そして生き残った勇者もいるが、誰一人として歴史の表舞台に現れていない。不思議なことだ」
俺の言葉で気づいたように目を見開くリリアナ
「確かに不思議です。勇者なら、どう頑張っても歴史の表舞台に出てくるはずです。世界を救った。それだけのことをしたのに、魔王を倒した後には出てきていませんね」
「なあ、不思議だろう」
「そうですね」
「さて、ここからが本題だ」
俺が真剣な声を出して二人を見つめる。
「「はい!!」」
二人は気合が入った返事をして、胸に両手を当てて心臓の鼓動を抑えるようにし、俺の言葉を一字一句逃さないみたいな目をしている。
「約束通り精霊魔法を教えろ」
「「…へ?」」
二人の口から気の抜けたような声が漏れた。
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