48 苛立ちの理由
アンケートに協力してくださって、ありがとうございました
普通なら、酒に酔っていたタンキが偶々力が、強いだけの奴に倒されたと思うだけだろう。人間はって言うのは常識と少し違ったり、信じられないことを見たりすると、確信がない限り偶々とか、偶然で片付けるものだ。床板だって体重と勢いを、つければ割れる。だが、あの女、一瞬で俺の強さを見抜いた。戦闘経験、それがこんな差を生み出すなんて。
俺は早足で歩き宿を見つけよしていたが、さっきのことが気になって、しっかりと探せていなかった。どうしようも無い苛立ちが、自分の心を支配する。俺は途中で探すのが面倒になって見つけやすかった宿に入った。
宿屋の娘が出迎えてくれる。
「いらっしゃいません、天門の宿へようこそ。何名様で?」
「三名で一部屋頼む」
「何か部屋のご希望はありますか?」
「二階の部屋で」
「すいません。ベットが二つの部屋しか空いてませんがよろしいですか?」
「気にしない」
エルフを二人で寝かせればいいだろう。
「分かりました。どれくらいお泊りで?」
「そうだな、三日ぐらい」
適当にそう言った。最悪、延長すればいい。お金はあるしな。おっと、大事なことを忘れていた。
「温泉はあるよな?」
何のためにここに滞在するのか忘れるところだった。危ない危ない。
「ええ、もちろん。それも売りですから。それと朝ご飯と晩ご飯が付けますか?」
「ああ、付けてくれ」
「それでは竜金貨一枚と銀貨三枚で」
……立派な宿だからそれなりにすると思ったが、そこまでするのか。
俺は言われた通りにお金を払うと鍵を受け取って、教えられた部屋に向かった。
部屋の中は広くてベットが二つ、それとテーブルと椅子も。
「お前らに質問がある」
俺がそう言って椅子に座って二人を見た。どちらの目も死んでいなくて、生きる目的があるような目をしている。面倒事になるかな、これは?
「最初の質問だ。お前らの名前と年は?」
「私の名前はリリアナ・クロース。十三」
「エリカ・クロース。十一」
「お前ら、姉妹だったのか」
なんだか自分でやっていて白々しいがまあ、仕方ない。
「お前らの最初の命令は」
俺の言葉に姉妹二人共体を、強ばった。
「取り敢えず風呂だな。はい、これ服」
俺はアイテムボックスから執事服を出した。成長が早かったから汚れずに残ってるものもあるし、着なかったものまである、その中に姉妹の体に合いそうなサイズを出した。俺はそれを姉妹に渡した。
「風呂から出たらこれに着替えろ。行くぞ」
俺はそう言って姉妹の手を引いた。目を白黒させて二人共、戸惑っているようだった。面白いな。
「二人は女風呂な。俺はこっちだから。何かあったら呼べ」
俺は男風呂の方に向かった。
久しぶりの風呂だ。ワクワクして仕方ない。こっち来てからは、クリスに洗ってもらった以来だからな。
ドアを開けると、そこは露天風呂だった。日本旅館の風呂と同じくらいに広々としていて、開放感溢れる風呂だった。浴槽とは別に洗い場かしっかりと、設けられている。しかも、手桶や丸椅子が用意されていた。床は石畳で出来ている。浴槽の奥には壁からドラゴンが出ており、口からお湯を出している。
高い金が納得できるほど設備は良かった。
まあ、見ているだけじゃお風呂は堪能できないから、身体を洗ってから浴槽に入ろう。
手桶と丸椅子を掴むと、俺はお湯を汲んで丸椅子に座った。手桶と丸椅子は木製で、何とも言えない良い匂いがする。俺はお湯を頭から被った。髪が目隠しになって、顔に掛かる。
そう言えば俺は長髪だったな。忘れてた。俺は髪を絞るようにして、水を切った。洗い場には石鹸も用意されていた。使ってみると、泡立ちがよく、しかも柑橘系の香りがする。
体を洗ってざっと流して、いざ浴槽へ!!
風呂は体感温度的に四十一度ぐらいで、丁度良かった。
俺は浴槽で体を伸ばし、緊張をほぐすようにした。なんだか苛立ちが溶けていくようだった。
そして、気づいた。何に苛立っていたのか。いや、これは苛立っていたと言うより、怖がっていた。そっちのほうが正しいかな。
もし、あの教会の床に穴を開けられなかったら、俺は飼い殺しになっていただろう。自分は圧倒的な強者だと思っていた。実際魔族さえ、倒せるほど強い。そんな驕りをひっくり返された。
驕っていた自分への怒りだな。それと教会に下手したら、飼い殺しにされるかもしれなかった恐怖。それが合わさって、苛立ちになったのだろう。
ギルドで暴れたのだったそうだ。自分が強者だって確かめるだけに、あんなことことを知らずのうちにやったんだろう。
嫌になるな、本当に。
俺は全てを洗い流すかのように、頭まで一気にお湯に浸かった。
全部、忘れたくなるな、自分の見たくない部分を見ると。




