39 手紙
「嫌だね」
俺の言葉に騎士団は固まる。
「なんで俺よりも弱い弱小勇者なんかに手柄を渡さなきゃいけないんだよ」
「ならば力ずくで奪うまでだ!!」
聖騎士団の一人が我慢が出来ず切りかかってきた。これだから何も分かっていない馬鹿は。
俺は聖騎士の剣を指で受け止め、もう片方の手で喉を手刀で思いっきり突く。俺のDEFならこいつらの剣なんて指で止められる。剣をとめられ呆然としていた聖騎士は俺に突かれた喉を手で押さえながら膝を付いて悶絶する。
「お前ら、俺はこの魔族に勝ったんだぞ。それなのに何でお前らが力で俺に勝てると思っているんだ?」
俺の言葉に全員が気づいたようにさっきまでの怒気を失う。そりゃそうだ、自分たちに対して圧倒的力な持っていた魔族を一対一で倒した人間にケンカを売っていることに今更ながら気づいたのだろう。それに
「他人の手柄を奪うことが聖騎士団のすることか!!」
「あんたたちがやっていることはもう騎士ですらないわ」
「こそ泥と一緒だ」
民衆と冒険者は俺の味方だ。俺の圧倒的強さも押して民衆は聖騎士団を責める。自分たちは正義と思ってる聖騎士団にこれはきついな。
「黙れ、我々聖騎士団だぞ!!」
いくら聖騎士団を騒ごうがそれは所詮名前だ。そして名前とはそれを表すための記号だ。行動が伴っていなければ意味がない。
さて仕上げにこいつらボコボコにしてあとは教会からの呼び出しを待つだけと思った所に一人の治療師が走って来る、あいつはグリモア司祭の右腕の少年だ。
「すいません」
少年が俺たちの間に割って入ってくる。
「治療師ごときが何のつもりだ!!」
相手が弱いと見ると威勢がよくなるな。
「教皇様からの言伝を預かって参りました」
少年は聖騎士団の態度を歯牙にもかけず冷静に言葉を発する。すごいな、あれだけ起こっている人間に一歩も引かないとは。
少年の一言で聖騎士団の動きが止まる。だが聖騎士団の団長が諦めていなかった。
「貴様のような小僧が教皇様からの言伝など!!」
「そう言うと思っていたので手紙をお持ちしました」
少年は手紙を取り出すと聖騎士団の団長に渡した。
「フン」
団長は奪い取るようにそれを受け取り、読み進めるごとに手に力が入りその手紙をくしゃくしゃにしてしまう。
「撤収だ!!」
突然の団長の言葉に聖騎士団は戸惑う。
「団長撤収って?」
「教会本部に戻るぞ!!」
団長は聖騎士の言葉を遮り突然に帰ってしまった。何が書いてあったのだろう?
「すいません。あなたにも教会本部に来てもらわなければなりません」
少年がそう言って俺に頭を下げた。
「すいません、突然だったので迎えの馬車は手配できなかったもので」
そう言ってあははと笑う少年。俺は今少年と教会本部に向かって歩いている所だった。
「聞きたいことがあるんだが?」
「何でしょう」
「あの手紙にはなんと?」
そうだ。聖騎士団の団長が怒りに任せて教皇様の手紙を握りつぶしたのだ、よほどのことが書かれていたのだろう。
「簡潔に申しますと魔族を倒した者に会いたいので客人として呼んで来るようにと」
そりゃ、頭に来てるだろうな。魔族を倒した俺のことが教皇様に伝わってるときたもんだ。これで勇者の手柄にする事が出来なくなった。そして大好きな勇者を粗末に扱った人間が教皇様に客人として呼ばれているんだものな。
「そうか」
まあ、いいやどうせ行くつもりだったし。
今回の剣止めシーンはドラゴンボールZで悟空がトランクスの剣を指一本で止めたのを参考にしてみました。
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