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「体が重いだろう? 悪いがそのまま潰れくれないか」


ガドルの体が砂浜に沈み込む。だがそこでガドルの体が止まる。ガドルは自分の体の重さをしっかりと受け止めたのだった。エリックはそれを忌々しそうに手首についている腕輪を睨む。


(やはり全体的に僕のスペックがダウンしている)

(重いが動けないほどではない)


ガドルとエリックが同時に動き出した。ガドルの腰から剣が引き抜かれ、魔王はショートソードを取り出し、ガドルの聖剣を受け止める。金属同士のぶつかり合う音が響く。エリックはショートソード根元で受け止め、シュートソードが折れないように気遣った。


(重い)

(止めるか、これを…)


力比べに関しては剣が長く、力があるガドルに分があり、エリックが押され始める。だがエリックも黙って押される訳も無かった。


「グラビティーゾーン」


エリックが呪文を唱えると、エリックを中心に周りを包むように膜が貼られる。膜の中の重力はエリックの思いのままになる。すると突然ガドルの体が空中に浮いて踏ん張りが効かなくなる。そこをエリックに蹴り飛ばされ、膜の範囲外まで飛ばされるのだった。ガドルは無重力状態、エリックの蹴りの勢いに任せて空中を飛ぶ。空中では掴むものが無いので、勢いも殺されることが無い。クミンは視界からガドルが消えるとエリックに声をかけた。



「お、お父様どうしてここに?」

「クミンが着ている鎧が破壊されたら、僕に通知が行くようになっていてね。ついでに鎧には転移魔法が刻まれている」


エリックが得意げに語るにつれて、クミンの顔が曇っていく。


「お父様一つ宜しいですか?」

「ん? 何だい」

「ドン引きです」

「ええ?!」


クミンのドン引き発言にエリックはショックを受け、驚きの表情を浮かべる。


「人の鎧に何かってなことをしてるんですか? 」

「いやでも心配だったから」

「心配だったとしても勝手にしますか?」

「いや、嫌がられそうだったから」

「嫌がられると分かっていてやらないでください!」


クミンの怒鳴り声が辺りに響いた。結局のエリックの親バカは見えないだけで治ってはいなかっただけだった。クミンはこれから新しい物を買うときはしっかりと分解しようと心に誓ったのだった。


「いや、ごめん」

「でも今回は助かりました。わたくしたちは一旦引きます。それにマリアのことも見てもらわなければ」

「分かった、ここは僕が足止めする。撤退して」

「ではお父様お任せします」


クミンはマリアをつれてその場から離れと、同時に海水からガドルが飛び出すと同時に攻撃を仕掛ける。


「沈め」


娘と話していた声とは正反対の冷たい一言がエリックから放たれる。そしてガドルはエリックのその言葉で動きが遅くなるがー


「ぬるい」


その言葉と共に力任せに エリックの魔法を力技で無効化して、斬りかかってくる。


(回避が間に合わない)


エリックの胸をガドルの聖剣が切り裂いた。エリックは腕輪の効力によって思った以上に自分の魔法の威力が下がっていることを痛感する。


「浅いか……」


ガドルは剣から伝わった手応えで、軽く切り裂いただけだと理解した。切り裂かれる瞬間エリックが自分の体にかかる重力を減らし、無重力状態にしたのだった。切り裂かれた瞬間その勢いで、エリックは背後に飛んだのだった。


「助かったがー」


(今のままで勝てるビジョンが見えない。あの男から自由を奪うのは容易い。重力を無くせば良い、それだけであの人間は無力には出来る。だけど攻撃が殆ど効かない状態になる)


エリックはユニークスキルがあるため、他の魔法スキルが無いのだ。残ったのは武器などだが、無重力状態での物理技はあまり効かない。ここが岩場なら岩場に叩きつけるなどダメージを与える手段があるのだが、ここは砂浜と海面。砂浜や海面でもダメージ期待出来ないわけではないが、大ダメージを与えられるわけではない。


「貴様の本気はこの程度か? なら期待はずれだな、本気を出す必要もないか?」


ガドルの挑発の言葉を受けてもエリックはいたって冷静だったが、危機感は覚えていた。


(確かにこの男は聖剣の能力をまだ発揮していない)


聖剣の能力はまだ見てない。その能力が分からないのがエリックに危機感を覚えさせているのだ。単純にここで、この男を足止めすることはエリックには可能だろう。だがそれは今のままの状態で戦えば話だ。何らかの倒す方法を考えたい。その方法を考え始めようとしたがー


「行くぞ!」


ガドルは砂浜を蹴り、接近してくる。それは先ほどと違い、直線的な動きではなく、動きを予測されないようにジグザグに進んでくる。


(まずは時間を稼ぐ)


エリックはガドルの重力を消失させようと右手を突き出した呪文を唱えた瞬間、ガドルが砂浜の砂を蹴り上げエリックの視線から逃げた。


(しまった!?)


ガドルが蹴り上げた砂浜が空中で停止する。ガドルはそれを見て笑みを浮かべる。これはガドルにとって嬉しい誤算だった。ガドルにとって一瞬エリックから姿を隠せればいいと思っていたが、エリックの重力魔法によって、砂浜が空中に浮き上がったままになり、エリックの視線からガドルを隠し続ける。もちろんガドルの蹴り上げた勢いで空高く砂が飛んでいくものもあるが、全てでは無かった。ガドルは空中で浮遊している勢いのまま砂の壁につっこみエリックに斬りかかる。


(このままじゃ斬られる!!)


エリックは左腕を突き出して、剣を受け止める。肉を裂く感覚が伝わる。


(骨で止まってくれ!)


「フンッ!」


だがエリックの願い虚しくエリックの左腕が宙を飛ぶ。ガドルの剣はエリックの骨を断ち切ったのだった。


(あの細い聖剣で骨ごと斬りますか……しかも力任せに)


骨とは元来硬いものなのだ、それを力任せに斬るなど剣が欠けたりするものなのだが……。


「刃はかけてないな…」


斬られた左腕を縛って止血しながら、相手の刃を確認した。自分の能力を歯牙にもかけない相手と戦うのは久しぶりだ。レベルが上がってからは、重力で押しつぶして終わることが多かった。


「昔を思い出すよ」


エリックも最初から強かった訳では無かった。レベルが低い時には増やせる重さも、持続時間もたいたことは無かった。それでも魔物を倒したりしてレベルを上げなければいけなかった。


「あの時はどうやって倒してたかな」


エリックは昔を思い出そうと呟く。数百年単位で昔の話だ、エリックも既にどのように戦っていた記憶が薄れている。


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