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コーリマスは焦っていた。段々と自分の攻撃に対応できるようになってきているマリアに。それに援護によって、氷を溶かされる。コーリマスが本気を出せば維持できないこともないが、それにはなんの意味もないことだった。コーリマスにも奥の手があるが、体に負担がかかるためあまり使いたく、使うのを躊躇っていた。。


「フッ!」


吐いた息とともに氷柱を生成して、迫ってくるマリアの進路を塞ぐようにするが、左右に飛んで難なく避ける。炎を纏った盾を突き出しながら、そのまま距離を詰めてきた。コーリマスは盾に聖剣を叩きつけて、盾ごとマリアを凍らせた。炎に包まれていた盾が瞬時に凍りつく。だが凍りついた盾の向こうには既にマリアはいなかった。


「?!」


コーリマスの頭上に影がかかる。マリアが自分の頭上に降ってくる。マリアは剣を頭上まで上げ、落下の勢いと共に剣を突き刺す。コーリマスの肩にマリアの剣が刺さる。剣は落下の勢いで剣が更に深く突き刺さる。このままではコーリマスは、剣がそのまま重要な内蔵を傷つけ命を落とすだろう。


「くうっ!」


コーリマスは本気を出した。コーリマスの体が氷で覆われ、マリアが持っている刃を止めた。そしてそれだけでは留まらず、氷はマリアが持っている剣を凍らせる。マリアは剣が抜けないと分かると、すぐに手を離し、その場から離脱した。その一瞬後にマリアが持っていた剣が完全に凍りついた、剣が完全に氷に覆われると、氷から離れ剣が、地面に落ちる。


「なんのあれは……」


クミンが呆然と呟く。


「氷の鎧」


マリアは盾を右手に持ち替える。既に剣を失ったので、盾で攻撃するつもりなのだが。


「やめといたほうが良いよ……マリアちゃん」


アリサは弓矢を叶えながら、マリアを止める。


「今までは剣にだけ注意すれば良かったけど、たぶん鎧に触れた瞬間凍らされると思う」


アリサの言葉とともに矢を放つと、コーリマスはその矢を避けようともしなかった。矢が氷の鎧に当たると矢は瞬時に凍りつき、地面に落下する。


「どうする?」


全身を覆っている氷には触れることは出来ない。魔法が効くかと言うと……


「フレイムバーン!」


さっきまではコーリマスが生成した氷は、クミンの魔法によって溶けていたが……


「溶けてないと言うより……」

「溶けるスピードより、氷の生成速度の方が早いですわ」


鎧は炎で溶かされながらも、溶けた氷を材料に鎧を生成していく。


「火力不足」


マリアの顔は苦虫を噛み潰したような顔で呟く。クミンたちにはコーリマスを攻撃する術がない。このままでは凍らされるのも時間の問題だと三人は考えた。


「ここは一旦引くよ」


アリサの声と共にフィーユとマールクスが飛んで来る。フィーユにアリサが捕まり、マールクスにはマリアとクミンが乗り込んで、その場から離脱した。コーリマスは追撃することはなく、それをそのまま見逃した。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「逃げてくれて助かった」


コーリマスはすぐに氷の鎧を解くと、唐辛子を混ぜた体温を上げるドリンクを、一気に体に注ぎ込んだ。コーリマスの口の中が火を放り込んだように熱くなるが、いつものことなのでコーリマス気にせず胃まで流し込む。胃まで流し込むと体の全体が熱くなるのを感じた。


氷獄鎧コキュートスは体温が下がりすぎる。長期戦は難しい」


コーリマスの聖剣の能力によって作られた鎧は、どんな攻撃も防ぐ鎧だが使用者の体温が急激に奪うのだった。三人を相手にしているいるうちに、低体温症で弱っていただろう。


「若いのに強かったな。侮れない」


コーリマスは聖剣を鞘に収めるとその場を後にした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「助かったわ、フィーユ、マールクス」


クミンはこれからどうするか考えながら、助けに来てくれた二匹のペットにお礼を言った。マリアはマールクスを撫でながら、辺りを見て援護に入る場所を探していた。


「アリサは本部に戻って聖剣の能力と聖剣使いの特徴を伝えてください」

「分かった、クミンちゃん」


クミンは本部の方に危険人物として、本部にコーリマスを伝えることを優先してアリサに指示を出した。アリサは返事をすると、そのままフィーユに乗って二人の元を離れた。


「聖剣使いは良いの?」

「あなたが与えたダメージによって、すぐに戦線復帰は出来ないですわ。あれ以上はわたくしたちの誰かが欠けます」


マリアが倒せないことを気にしないように、そう問にクミンはそう答えたが、正直コーリマスを殺しておきたかった。クミンとしては聖剣の能力は脅威に思っていたからだ。


(広範囲での氷結。触れただけで凍結される聖剣……そして)


クミンの脳裏に、コーリマスの全身を覆っていた氷の鎧が脳裏にこびり付いていた。


(あたしの炎魔法さえ耐え切る氷の鎧。しかも触れたものを凍らせるという凶悪な能力つき……あそこで倒せなかったことが、後々響かなければいいけど)


「クミン、あそこ」


マリアが指さした場所には、竜血騎士団に対して追撃をしている部隊だった。押している内に敵の数を減らすのは上策。本隊と合流される前に潰しておきたい、クミンはマールクスを急降下させながら、魔法を連発した。


「援護に入ります」


マリアはそう言うとマールクスから飛び降り、落下の勢いを乗せ盾を敵に真上に振り下ろした。一人の竜血騎士が顔を砂浜に叩きつけた。その衝撃は凄まじく、頭が完全に砂浜の中に埋もれていた。


「このまま行きます」


マリアはそのまま前方にいる竜血騎士に、盾を前に突き出しながら突進する。それを見た一人の竜血騎士がマリアの突進を阻んだ。


「私が足止めします」


この竜血騎士はマリアの盾を抑えながら叫んだ。ほかの竜血騎士は一瞬その場から離れるのを躊躇ったが、誰かが止めなければ撤退できないと結論を出し、その場から立ち去った。


「邪魔」


マリアはそのまま竜血騎士を力ずくでどかそうとするが、目の前に竜血騎士がポケットから赤い球体を落としながら口に含むと力が増し、マリアを突き飛ばす。


「この!」


援護に入った魔族がいたが、軽くいなされてしまう。その途中で目の前の男の容姿に変化が訪れる。背中家から片翼が生え、翼とは反対側の腕が膨れ上がり、鋭い爪が生える。鋭い爪がマリアの盾を掠める。金属と金属がこすれ合うような音がマリア耳に突き刺さる。マリアは自分の持っている盾が削られていることが音から分かる。


「クッ……」


マリアは振り払うように盾を使い、そのまま後退する。マリアが盾の表面に三本の爪痕が残っていた。そこから一撃必殺の威力が伺えた。


「武器!」


マリアの言葉を聞いて、後ろにいた一人の魔族が長剣を投げた。マリアはその動きを魔眼で見極め、綺麗に長剣をキャッチする。そしてその勢いのまま竜血騎士を斬りつける、だが竜血騎士も動いていた。マリアの長剣に合わせるように剣を振る。金属と金属がぶつかり合う激しい音。竜血騎士の力強い剣にマリアの長剣が弾かれる。


「強い」


竜血騎士が口に含んだのは、竜血丸だ。更に竜血丸を追加して、竜の力を更に追加したのだった。マリアの力では竜血騎士を押さえておくことは出来なかった。更に竜血騎士は大きく息を吸い込む。胸が膨らみ微かに光る。


「避けなさい!」


マリアはクミンの声と相手の動きから、口から何かが吐き出されるのを察知し、竜血騎士の目の前から飛び退いた。


「ガアアア!!」


そんな声と共に吐き出されたのは、白いブレスだった。そのブレスの通り道にあった物を消し飛ばした。


「腕があああ!」

「嘘だろ、バンガ!」

「止血だ、止血しろ!」


腕を消失した魔族、上半身が消し飛んだ魔族、手のひらが消し飛んだ魔族。白いブレスの通り道にあって無事なものは無かった。


「嘘でしょう……」


クミンが呆然と呟くが、現実は非常だった。再び竜血騎士が大きく息を吸い込み、白いブレスを吐こうとする。その射線上には、先ほどのブレスで負傷した魔族がいる。トドメを刺しに来たのだった。


「マリア止めて!」

「任せて!」


クミンの必死の叫びにマリアが答えた。マリアは距離を詰めた。鋭い爪の一撃を紙一重でかわし、顎に鋭い蹴りを当てた。口が上に向き、上空にブレスが放たれる。誰もが息を吐き、一瞬気を抜いた。それはマリアも一緒だった。


「げっほ」


そんな音共にマリアの口と腹から血が噴き出した。竜血騎士の背中から生えている翼がマリアの腹を切り裂いたのだった。


「マリア!!」


クミンの叫び声が妙にぼやけてマリアには聞こえていた。大きくお腹が切り裂かれ、大量の血がマリアの体から流れて出ていた。


「誰か援護を!」


クミンは援護に入る味方がいるか確認せず、マリアは助け出しに近づく。


「マリア!!」

「は……い」


マリアはすぐに返事をしようとするが、唇に力が入らず、か細い返事をするのが精一杯だった。クミンはどうにかマリアは移動させようとしたが、動かした途端マリアの上半身と下半身がちぎれそうな状態で、クミンは動かすことが出来なかった。


「マリア……は死ぬん……です……ね」

「そんな……」


マリアの言葉を否定したかったが、クミンは否定の言葉を言い切る事が出来なかった。


「…………」

「どうすればいいの、どうすればいいの!?」


クミンは辺りを見回して何か出来ないか必死に探した。回復魔法を使える魔族がいないか、連絡出来る魔族がいないか探したが見つからなかった。クミンの手に触れるものがあった。


「これは……これなら…でも…」


クミンの声には希望と不安の両方が漏れ出ていた。




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