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パソコンが壊れてしまったので、先週投稿ができませんでした。申し訳ありあせん ((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
「オズワルド連れて行きたいんだけど」
「ダメよ、あれはわたくしの猫。渡さないわ」
毎度のごとくシロウの取り合いをやっているのだが、今回はお互いに気合が違った。この国を出る一週間前になって、シロウとの別れが近づいたクリスが本気になったのだ。お互いに主張が通らないことが分かっているので、そのまま外に出て戦闘が始まる。
レベル・ステータス共にレベルは魔族のクミンが高いが、ここ最近の戦闘でクリスもレベルが上がり、勝敗が分かれるほどのレベルの差は無くなっていた。クミンは大剣振り一撃必殺を繰り出す。クリスはそれを避ける。クリスの細い剣で受け止めることが出来るような攻撃では無いからだ。だがクミンの攻撃の隙間を縫ってクリスの剣がクミンの鎧を削る。普通ならダメージの蓄積でクミンの鎧壊れて。負けるのだろうがクミンが来ている鎧は着用している人の魔力を吸い上げ、鎧を修復していく。鎧の無い所を攻撃するには、今よりも一歩前に踏み出して攻撃をしなければならない。しかし、それをするとクミンの次の攻撃にどうしても当たってしまう。クリスは前回相撃ち覚悟で一歩踏み出して攻撃したら、自分の体が吹き飛び、骨が折れ、戦闘続行が不可能になった。一方クミンの傷はクリスよりも浅く戦闘続行が不可能なほど追い込むことが出来なかった。
「爆風!」
「烈風!」
クミンの魔法によって、炎がクリスの目の前で爆発する。クリスは後ろに下がりながら、襲ってくる炎を風でかき消した。そのままお互いに距離を取りながら魔法を打ち合う。魔力はクミンのほうが強いのだが、魔法の相性によってクリスの魔法が打ち消す。
「フレイムランス!」
「ウォーターシールド!」
クミンの魔法がクリスの皮膚を焼こうとランスの形をした炎が飛んでくるが、水の壁によって炎が消える。クミンが忌々しそうに舌打ちをすると、先程作った炎のランスを大量に作りウォーターシールドにぶつけていく。水蒸気と共にウォーターシールドが蒸発する。クリスは大量にウォーターシールドを生成して、炎の槍を防ぐが、ウォーターシールド一つに付きフレイムランス十本で蒸発する。それが分かるとクミンは次々とフレイムランスを生成し、それをウォーターシールドにぶつけていく。クミンは数の力で押し切るつもりだ。クミンの思惑通り、クリスはウォーターシールドの生成が間に合わなくなると、足でそれを補う。クミンはそれを追いかける。普通なら走った程度で魔法から逃げられるものではないのだが、クリスにクミンの魔法攻撃が当たらないのは、クリスとクミンの魔法がぶつかりあって発生した水蒸気によって、クミンがクリスの姿を捉えられなくなったのが原因だ。だが運悪くクミンの魔法に当たったら終わりだ。クリスは自分が今作れる一番大きなウォーターシールドを作り、時間を作る。その時間で剣先を中心にして風の魔法を貯める。これまでの戦いの中で最大の魔力の密度だろう。クリスはウォーターシールドが溶けると同時にクミンに剣先を向けながら跳んだ。
「風神の槍!」
クリスが持っている剣先を中心に風魔法が体全体を覆う。そして敵に向かって真っ直ぐ飛ぶ。まさに風神が持つ風を纏う槍そのものだった。触れるものは風の魔法によって、引き裂かれる。この技の欠点はタメが必要なことと、その魔力消費が問題だ。常に全力で風の魔法を使うので、魔力がすぐにそこを尽きてしまう。
クミンが放ったフレイムランスはクリスに接触する前に風で消し飛ぶ。
「うそっ!」
クミンは突然翻してこちらに飛んできたクリスに驚いたが、そのままフレイムランスで迎撃出来ると考えた。しかし、クミンの考えはあっさりと打ち砕かれた。クミンはすでに避けることを諦めて防御する覚悟を決めた。
「このっ」
クミンは大剣の腹を見せるように持って、ガードした。クミンの大剣とクリスの剣がぶつかりあった瞬間、キーンと言う歯医者が歯を削るような甲高い音が響き渡る。クリスの剣がクミンの大剣を削りながら、前進していることが、大剣越しでも分かった。クミンが苦し紛れに魔法で攻撃するが、すべて風の魔法によって、吹き飛ばされてしまう。クミンはただこの大剣を貫かれないことを祈るしかなかった。もうすでに最初ほどの勢いが無くなっていたのは、音で分かっていたので、あとはこの魔法が切れるまで耐えるだけだった。クミンは冷静にこの攻撃の後どのように反撃をするか、考えていた。
(このままじゃ……)
クリスは自分の魔力が削れていくのが分かる。段々と風魔法の威力も下がっていく。
(あともう少し、あともう少し……)
このまま大剣を削りきれば、そのままクミンにクリスの刃が届く。だがクリスの魔力も限界だった。クリスの魔力が付き、風魔法が尽きるのが分かる。全身を覆っていた風魔法が薄くなる。すでに炎どころか小石一つ弾き返すのは難しいだろう。
(私の負け)
(わたくしの勝ち)
クリスは敗北を受け入れ、クミンは大剣を動かして、反撃の一撃を加えようとした。だがクリスの最後の魔力が尽きる寸前、クリスの脳裏にシロウが浮かび上がる。
(オズワルドのためにここまで来たのよ。こんな魔族一人に諦めていいの? ……諦めきれるわけないじゃない!)
クリスは体を包んでいた風魔法を解除して、剣先一点に集中した。その瞬間最初と同じような音が響いた。
「なぁ!?」
クミンの口から驚きの声が漏れる。今まで威力が死んでいた魔法が、復活したのだ。今までの攻撃で削られたのに加えて、今の一撃によってクミンの大剣が折れたのだった。クミンは顔に迫って来るクリスの剣先を咄嗟によけた。だが風魔法によって、クミンの顔をズタズタに引き裂くだろう。クミンは自分の顔が切り裂かれる痛みに耐えるように歯を食いしばった。だがクリスの刃は僅かにクミンの頬を斬り付けただけで、その勢いが止まった。それと同時にクリスの体がクミンに倒れ掛かってくる。
「魔力切れ?」
「………」
クミンの問にクリスは答えることは無かったのが答えとなった。クリスが悔しそうにクミンを睨む。クリスにはすでに魔力を使い果たして、一時的とは言え立ち眩みをするほどだ。魔力が無くなったは言え、まだ体力はあるが………
「私の負けです」
魔法なしでクミンと戦えると思えるほどクリスは自惚れてなかった。素直に負けを認めるしかなかった。
「……わたくしの勝ちですか……」
一方クミンは折れた大剣を見ながら、クリスの負け宣言を聞いたが、クミンとしては武器をおられ、あと一本の所まで追い詰められていておいて、自分の勝ちが受け入れ難かった。クミンの感覚としては勝ちを譲られたと感じてしまった。クミンとしては納得できなかった、だからあんなことを言ってしまったのだろう。
「今はまだ、シロウを私のモノにしておく」
「え?」
「まだ、自分のネコだと思っているならまた来なさい」
クミンはクリスにそう言うとその場から足早に立ち去った。




