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160 叫ぶ猫

明けましておめでとうございます ((。´・ω・)。´_ _))ペコリ

(俺は何をしてしまったんだ……)


ベッドの隣で寝ていたマリアの姿が目に焼き付いて、仕方が無かった。そして気を失う前に覚えていた記憶では、マリアを襲おうとしていた。


(俺はマリアを襲ってしまったのか……)


俺はどうしようもない絶望感が心を襲った。どうしよもない罪悪感で心が押しつぶされそうだ。正直あんな状態だったからと言っても許されるようなことはでは無い。


(それとも思いっきり開き直っちゃうか?)


屋根の上で自分の頭を前足でガリガリとかいた。かいたから言ってもやったことや悩むが消えることは無く。更に俺の心を重くするのであった。


「お~、シロウ起きたのか」


下から声がする。下を見るとザイードがいた。ザイードはシロウを見つけると屋根まで飛び上がってきた。片足一本で屋根まで飛び上がって着地する。


「元気になったようで、良かった。あの三人が心配していたぞ」

「そうか……」

「顔を見せないのか?」

「いや……そのな……顔を会わせにくくて、特にマリアに」

「ん? どうしてだ」

「いや、あの……」


俺が言いよどんでいると、ザイードは納得したような顔をする。 


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ザイードはシロウの反応でシロウが勘違いをしている事に気がついた。


(これはからかえそうだな、今までないほど狼狽えているシロウは面白いな。本当の事はもうちょっとしてから教えてやろう)


「そうだな、確かにあんな事をしておいて、マリアとは顔を会わせにくいよな」

「グヌ」


シロウは猫とは思えない人生に困惑したような顔をする。ザイードはそんなシロウの顔を見て、ますますいじめてやりたくなった。


「これはもう責任取るしかないよな」

「グヌヌ」


猫らしからぬ声を上げてますますザイードは内心腹を抱えて笑っていた。ここまで狼狽えるシロウも始めて見るのだ。


「どうするんだ?」

「どうにかする」


シロウはヤケクソ気味にザイードに告げると、その場から姿を消した。シロウはこれ以上何も言われなかったからだ。自分だけでどうにか解決策を考える事に集中する為に誰もいない高い木に移動したのだった。だが、それをしたところで、やってしまったことが変わる事は無い。結局シロウがしているのは逃げだっただが、シロウ自身は気が付いていなかった。。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


(ああ、クソが。どうにも出来ないな)


シロウは前足の爪で木を削りながら、何かいい案が出ないかと考えていたが、一向に案が出るどころかイライラが増すだけだった。


(大人しく、頭を下げるか……最悪ここから去るって手もある)


シロウがそんな事を考えてくると、何かが近ずいてくることを感じた。シロウはそちらに視線を向けると、空を飛んでくる物体が目に入る。飛んでくるのは翼を生やした虎、つまりスカイタイガーだった。ここら辺でスカイタイガーと言ったら、マールクスとフィーユだけだった。


「シロウおじさん、飛べるようになったよ」

「どうです?」


どうやらシロウが失踪している間に飛べるようになっていたようで、それを自慢するために二匹はシロウを探していたのだった。二匹はシロウの周りを旋回して、飛べる姿を見せる。


「良かったな」


シロウは自分のことで手一杯で、とてもじゃないが二匹の相手をしている心の余裕が無かった。素っ気ない返事をする。二匹はそんなシロウの態度に不満を持って、シロウに体と翼をこすりつけてくる。二匹の真意としては、シロウに自分たちが飛べるようになったことを褒めて欲しかったのだった。


「鬱陶しい、やめろ」


だがシロウはそんなことには気がつかず、冷たい言葉をかけてしまう。いつものシロウならそう言う事を無自覚に気づいて、褒めていたのだが、今のシロウには余裕が無かった。シロウが本格的に嫌がっていることが、伝わってしまい、二匹はシロウから離れていった。


「素直に謝るしか無いのか? と言うか謝って許されることでも無い……そうだ、マールあたりに相談してみよう」


シロウは早速マールの研究所まで掛けていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「それで私に相談とは何です、シロウ殿」

「いや、その、この国の貞操観念について?」

「ふむ………」


マールは持っていた薬品を冷蔵庫のような箱の中に入れる。冷蔵庫を開けると冷蔵庫とは思えないような冷気が外に流れ出した。幸いマールがすぐに箱を閉じたので、そこまで部屋が寒くなることは無かった。だが次の言葉で俺の身も心も寒くなるのだった。


「基本的に結婚するまでは男性も女性も、性交は経験しないのが普通だ。基本的に初めての人間が結婚相手になるのが普通だが」

「まじか~」

「ちなみに結婚しないのは相手が死別をしたか、犯罪者になったかのどちらかだ。それ以外で結婚しないのは罰があるわけではないけど、大抵は親族にリンチに会う」


マールはコーヒーメイカーのようなもので、自分のマグカップに飲み物を入れると自分の口へと運んでいる。飲むとマールはため息をついて話の続きをしてくれる。シロウじゃ内心冷や汗で自分がしてしまったことに恐怖していた。


「それにしてもどうして急にそんなことを?」

「いや、それはな……」


シロウがマール訳を話そうとすると、マールの実験室のドアがノックされる。


「マール様、マリアです。シロウいませんか?」


シロウはマリアの声を聞くとびっくりして、飛び上がった。それと同時にドアが開けられる。シロウは咄嗟に物陰に隠れて、マリアが部屋に入るといわれ変わるように部屋の外へと飛び出していった。その速さはもはや人目には映らない速度だった。


「……」

「マール様?」


その速さにマールも思わず目が点になるくらいだった。マリアはシロウが出て行ったことに気がつかず、マールに話しかける。マールは戸惑いながらも、さっきまでシロウがこの部屋にいたことを伝えた。マリアはシロウに避けられる理由に心当たりが無くて、マールに何か思い当たる理由が無いか訪ねたのだった。


「なんでシロウ逃げてるんでしょう?」

「もしかしたら……」


マールは昨日あったこととシロウが聞いてきた内容を複合した結果マールはシロウがしている勘違いに行き着いた。


(さてこれを伝えて良い物か……)


ここでシロウが謝りにくれば笑い話で済むのだが、来なかったら非常にまずい問題になるので悩んだ結果マールは伝えることはしなかった。


「私には分からない」

「そうですか……マリアはもう一度探してきます」


マリアはそう言うとマールの研究所から出て行った。マールはマリアが出て行った後もどうしたものかと悩んでいた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「結局責任取るしかなさそうだな……」


シロウは飛び出して行ったが、結局答えが出せなかった。シロウはここから抜け出すことを考えていたが、ここは離島。船がなければここから出ていくことは出来ないのだ。


「シロウ殿」

「ニャア?!」


突然背後から声をかけられて、思わず鳴き声を上げてしまう。


「驚かせてすまない」

「な、何だマールか……」


シロウは激しく鼓動を打つ心臓を落ち着かせながら、マールの声をする方を振り向くと、コウモリのような翼をつけた目玉がパタパタと飛んでいるだけだった。


「ん? ああ、これは新しい魔法で作った生き物で、端末でこれが見ている映像と音をこちら側に、こちら側の音をそちらに伝える機能を持っているんだ。早速使って見たんだけど成功したみたいだね」


目玉コウモリからマールの嬉しそうな声が聞こえてくる。その嬉しさを表すように目玉コウモリが翼をパタパタと羽ばたく。


「でそれを見せるためにマールは来たのか?」


心臓を落ち着かせて冷静になると、映像を捉えているであろう目玉を睨みつける。シロウは正直マールが新しく作った玩具に付き合っているような状態ではなかった。



「いえ、シロウ殿が勘違いをしているようなので、それを伝えに来ました」

「どんな?」

「別にシロウ殿はマリア嬢の初めては奪ってはいませんよ」


シロウはマールの言葉を半ば聞き流すように聞いていたので、マールが何を言っているのか最初は理解できなかった。


「今なんて言った?」

「だからシロウ殿は別にマリア嬢を襲ってはいませんよと言ったんです」


マールはシロウが聞きやすいように、言葉をはっきりと言う。シロウも今度は聞き取れた。


「え、でもベッドの隣で寝ていたんだぞ!」

「服を着ていましたけどね」

「え……」


マールにそう言われて、シロウはベッドで見た光景を思い出そうとする。


………確か、布団は首ものまでかかっていて、服を脱いでいることは確認してなかったな。


「じゃあ、俺は……」

「盛大に勘違いをしていただけですね」

「で、でもザイードが責任取るしかないみたいな事を…」

「からかわれたんですね」


マールにそう言われて、今もニヤニヤと笑みを浮かべているであろう、そいつの名前をシロウは叫ばずにはいられなかった。


「ニャアアアアアァァァァァァ!(ザイードォォォォォォッ!)」




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