150 種明かし
お待たせしました。
「はああああ!?全部芝居?!しかも、俺を試すための!?」
次に目を覚ました時には、魔王、バレル、ザイード、マールが一同に揃っていた。
「その通りだ」
魔王が悪びれもせずに、言い放つ。俺はそれに怒りを感じながら、この事件の全貌を解いていくことに専念した。確かに近々魔王が俺の強さを見たいとは言っていたが、こんな方法を見るとは思わなかった。
「じゃあ、マリアたちがあの場にいるのは何故だ?」
「それはたまたまだ。お前がクズグズしている間にクミンたちが来てしまったのだ、全く寝起きの悪い猫だ」
魔王はそう言って、腕を組む。
「本当ならエリック殿が倒れる所を見せて、バレル殿と猫殿を戦わせようと考えていたのだが……」
「お前が来る前にクミン様たちが来てしまってな、タイミング的に事情を話す時間も無かったのだ」
あの最初の魔王に問いかけるような視線はそれが理由か。
「で俺の強さは合格レベル達したのか?」
「合格点だな」
一応合格は出来たようで、これで修行日々が終わると思うと嬉しく思った。
「そうか、風呂入りたいんだ。風呂。どこにある?」
「……ドアノブを五回右に回せば、風呂場に繋がる」
魔王は俺のどうでもいいような、反応に何とも言えない顔をして、答えてくれる。俺はそれを聞くとさっさと部屋から出て行った。病気が治って最初にやろうと思っていたことだったからだ。
風呂に到着すると、湯船の中に早速入った。ここに来てからお風呂は桶ので入っていたのだが、久しぶりに大きな風呂で入るのも心地いいものだった。広い風呂を貸切状態で使えるのもいいものだ。他人を気にしたり、気を使ったりする必要はないからな。
俺は前足をばたつかせお湯の中を泳いでいく。端っこまで泳ぐで頭をタイルの上にのせて、体をお湯の中に浮かせる。それに飽きると前足をバタつかせて、お湯をパシャパシャとして遊んでいた。体も温まってきたら、俺は湯船から出て、脱衣場で体を乾かしていた。
するとそこに服を脱いで風呂に入ろうとしてるマリアがいた。マリアの姿は完全に服を脱いでいなくて、上半身の服を一枚脱いでいるところだった。
「あ、マリア」
マリアには既に俺の正体がばれているので、俺は普通に声を出していた。
「シロウ?でいいのかな?」
「ああ、別に構わない。マリアどうしてここに?」
「あの戦いで体が汚れたらか魔王様に体を洗うように言われたの」
確かにあの戦闘で俺たちの体は凄まじく汚れていた。服も焦げてボロボロだった。マリアのそばにはメイドが控えていて、マリアが脱いだ服を受け取っていた。
「マリアと一緒に入る?」
「いや、これ以上入ったらのぼせる」
俺はそう言って体を振るわせて、水を飛ばした。
「うん」
「あ、二人には俺のこと黙っておいてくれ」
「……アリサはあなたに会いたがっていた」
マリアが寂しそうに言う。
「それでもだ」
バレても色々面倒なことになるのは避けられない。それに普通の猫として扱われ無くなるのは明白だ。それは出来るだけ避けたい。
俺はそう言うとそこから脱衣場から出ようとしたら、マリアが俺のことを突然抱き上げる。
「な、何する?!」
俺は驚いて思わず変な声が出てしまった。
「今日マリアとマリアの友達を助けてくれたお礼」
マリアはそう言うと俺の体に顔を埋めてきた。
「う、うん」
どこがどうお礼になるのか分からなかったけど、俺は黙って抱きしめられていた。3分ぐらい経つと俺を床に下ろして、風呂場に入っていた。
「よく分からんな」
俺は首をかしげて、脱衣場から出て行こうとしたら、メイドに捕まってしまった。
「にゃ?!」
俺の驚きの声にメイドはタオルで体を胴体から吹いてくる。
「濡れた体のままで動かれては困ります」
メイドはそう言うと胴体の次に手足を拭いて俺を下ろしてくれる。
「もう、行っても構いませんよ」
俺の体から完全に水分を拭き取ることは出来なかったが、床が濡れることは無くなっただろう。メイドがドアを開けたので、そこから部屋の外に出て行った。適当に歩いていると見覚えのある場所に出る。クミンの部屋が近くのある事が分かる。見覚えのある道を歩いて、クミンの部屋にたどり着く。スキルで部屋の中にクミンがいることが分かる。俺はドアノブに飛びついて、扉を開けた。部屋の中では既にクミンはベッドの上で寝ていた。今は夜中だから当然といえば当然だ。俺はゆっくりとベッドの方に歩き、クミンの足元に丸まって眠ることにする。今日は色々な事があって、俺も疲れていたからだろう。すぐに眠りの世界に入った。
裏方の話 148話
エリック「まだ起きんのか?」
マール「猫殿はまだ寝てます。あ、アラームまた壊されました」
エ「あいつはなぜそんなに寝起きが悪い!もっとアラームを鳴らすのだ」
マ「分かりました。……今度は部屋の明かりを壊されました」
エ「寝相悪すぎるだろう」
マ「最大音量にします……起きました」
エ「良かったこれで作戦を続けられる」




