146 病気
ヒロインの分岐にもう少しで入るので、その分ストックを増やそうと目論んでいましたが、出来ませんでした。ごめんなさい。
時間稼ぎのために、新作を投稿します。よければ見てください。12時に投稿します
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「と言う事で俺はお米を調達して欲しい」
「と言う事でって、一体どういう事だ? 我には一切話が分からないのだが……」
魔王ルシファーに俺はエルフの村からお米を調達してくれるように頼んでいるところだった。
「寿司ネタがあるんだ。お寿司が食べたい。エルフの村には酢飯まで作れるんだ。お寿司を作らないほうがおかしいだろう」
俺の発言を聞いて、魔王は諦めた顔をする。
「先代の勇者がそなたと同じことを、言った事があった。ここからエルフの村までの貿易船を送り続けることは出来ない」
「なんで?!俺がここに来る時は船で来れたんだから、別に不可能じゃ無いだろう」
俺の発言に魔王は頭に手を当ててため息を付く。何だよ、その察しが悪くて面倒だみたいな視線は。
「良いか、エルフの村は内陸部にある。どう頑張っても人間の領地を通って、エルフの村に入らなければならない。米をこの国に輸入するには大量の船を使う。そなたをこの国にまで密かに船を送って貰うことは出来るが、大量の船が移動するような目立つ事をすれば、いずれ貿易船が魔族の国に輸出していることが必ずばれる。その後どうなるかは火を見るより明らかだ」
「にゃぁ~、船が沈められるな」
俺が納得したように声を上げたが、お寿司を食べる方法を他にも思いついた。
「輸入出来ないなら、ここで作ればいい。稲を輸入してここで栽培することは出来ないのか?」
「ここでは出来ない。季節や面積それと土などが色々関係して、作ることが難しい」
「そうか……」
俺の残念そうな声を聞いても、魔王は特に表所は変えなかった。くっそ、これがクミンのことになったら顔の色を変えて国家プロジェクトとして、お寿司を作ってくれるんだろうな。でもな~、お寿司を食べるには人間の姿じゃ無ければ食べれないからな。クミンに頼んで魔王にお寿司を作るようにすることは出来ないな。……正直人間がいなかったから、こんな事にもならなかったのに。邪魔だな、人間。俺は仕方なくお寿司を諦めた。まあ、マグロを食べられただけで良しとするか。
次の日、俺は頭がボーッとしていた。周りの風景がモヤが掛かったように見える。おまけに体がだるい。正直体がだるい。久々に感じるこの特有のダルさは……風邪か?すぐに猫の癒しで病気を直せばいいや。
「にゃ~おん(猫の癒し)」
猫の癒しを使ったが、いくらたっても体は楽にならない。俺はボーッとしている頭で思考する。魔法が発動していない?どこからか攻撃を受けたのか?だけど態々猫に魔法を封じるようなことをするか?それに、この風邪特有のダルさは説明が付かない。鼻水で鼻が詰まって、苦しくて息が出来ないし、喉も痛い。これを風邪と言わず、何と言う。
そこまで調子が悪かった俺を見て、クミンが部屋を飛び出して出て行った。誰かを呼びに行ったのだろう。
「クッシュッ!」
俺はくしゃみをすると、寒さに体を震わせて体を丸めた。この調子だと治るのには時間が掛かりそうだと言う事が自分で何となく分かった。
少しすると、クミンがどうやら獣医を連れてきたようだ。獣医は俺の体を触ったりして、具合を確かめる。
「これは風邪だと思われます」
「でも風邪にしてはかなり重症ではない?」
獣医は困ったように声を上げながら、クミンに答える。
「すいません、クミン様。猫と言う生き物に関しての治療に関する資料が無いので、現段階で言えることは、この症状を見て病気を推測することしか出来ないのです。下手に薬などを与えて病状が悪化、または有害で死んでしまう可能性もありますので」
「そう言えば確かにこの猫と言う生き物は、確かにこの島に元々いない生き物ですからね。それは仕方ないです。無理を言って申し訳ありませんわ」
クミンはかなり俺のことが心配らしい。あのとんでもない森に連れて行ったことから考えるに強さは信用しているようだけど、病気に関してはやっぱり不安になるのだろうか。
「マール様ならご相談してみては如何ですか?」
「あの方に?」
クミンは意外そうな名前が出てきて驚いたような声をあげる。マールは研究者であって、医者では無いし獣医でもない。
「はい、でもマール様は色々な研究をしています。それにマール様は色々な魔法をお使えになれます。その中で病気を解析する魔法があるかもしれません」
「分かったわ、相談してみよう」
クミンはそう言うと部屋に獣医を置いて飛び出していった。だが獣医を呼ぶより早く戻ってきた。しかも、その後ろにはザイードとバレルまでいる。何か余計な奴らまで来たのだ。マールは俺の状態を見ると、服の内ポケットから紙を取り出す。その紙の上で指を走らせる。魔法陣を書いているのだろう。それを俺の額に貼り付ける。
(猫殿どうしたんだい?君の魔法ならこれくらいの病気は治せるだろう?)
これは……闇魔法の精神同士を繋げる魔法同じだろう。マールはユニーク魔法を持っているから、普通の魔法は使えないから、ユニーク魔法で代用の魔法を使ったのだろう。
(理由が分からないが魔法が使えないんだ。病気が直せない)
(魔法が使えない?ふむ……少し待っていてください)
「ん、この猫を私の研究所に連れて行っても構わないかね?クミン嬢」
「え?わたくしは構いません。お願いします」
「では私の方で少し預からせて頂きます」
マールはそう言うと俺を持ち上げて、空中に指を走らせて何かを書いている。マールが書き終わると同時に一瞬の浮遊感、どうやらテレポートのようだ。今はマールの研究所にテレポートしたようだ。テレポートした部屋を見ると本棚や机、沢山の道具が飾られていた。思ったよりは片付いていた。マールは机の道具を腕で机の端っこにどけると、俺を机に載せる。
「今からシロウ殿の病気の正体を見させてもらうよ」
マールはそう言うと、机の引き出しからメガネを出すと掛ける。メガネのレンズの横にあるツマミをいじって、俺をじーっと見ている。
「これは……猫の病気と人間の病気両方に掛かっている」
「何だよ、それ?それより毛布よこせ、寒い」
「……毛皮を着ているのに、毛布を要求するの?」
「寒いんだよ!ゴッホ!ゴッホ!ベックション!!」
俺が咳とくしゃみを見て、椅子にかかっていたタオルケットを俺の上に落とす。
「毛布じゃないのかよ」
「今ここにはないんだ、今はそれで我慢してくれ」
俺はタオルケットを二つ折りにすると、体の周りに巻きつけてミノムシのようになる。
「でどういう事何だよ?」
「人間病気と猫の病気、両方に掛かっている。理由がよく分からないのだが……症状が魔法発動無効と鼻水、咳、熱」
「……何それ?」
俺の鼻声の質問にマールは困ったようにメガネのツマミを回して俺の体を調べている。
「私もよく分からないのだが、猫の病気と人間の病気が合わさってその症状が出たのでしょうね」
どうやら俺は猫の状態で病原菌を貰い、その上人間の姿の時に病原菌を貰ったらしい。そして両方が組み合わさって、魔法が発動出来なくなったようだ。一体どんな病気が合わさったら、そんな症状が出るんだよ。
「確かに魔法が発動しなくる病気はあるわ。どう言う理屈で魔法が発動しないかは分かっていないから、この病気に対する対処は、ある木の実を煎じて飲むんだけど……この病気に効くはどうか分かりませんね」
どうやら似たような病気はあるが、魔法が発動しないメカニムズが分かっていないから、その病気の同じ対処で効果があるかは分からないのか。
「取り敢えず、シロウ殿は病気が治るまで隔離です」
「はあ?」
体調が悪いこともあって、俺の声に苛立ちが入る。
「当たり前でしょう?この病気は何の対処法も分からない未知なる病気。魔族の私たちにも感染するかもしれません。そうなった場合抗体を持っていないから、魔族に病気が広がったらこの国は大混乱に陥いるのは避けられれない。この国の運営には魔法が多く使われている。何の対処も無いままこの国に病気は広がったら、国が立ち行かなくなります。流石にそれは避けなければいけない」
確かにマールの言う通り、病気に抗体が無かったら病気に掛かるのは避けられない。しかも感染力や感染経路も分かっていない。空気感染や接触感染なら非常にまずいよな。だけど……
「俺の食事とかの面倒を誰が見てくれるんだよ?」
「私が見る。心配することは無い」
下手をしたら国が大混乱になりかねないと言うのに、マールは至って冷静に返答をする。
「自分の足で歩いて、私が抱っこして接触感染だったらまずいから、ついて来て。隔離室まで案内する」
そう言っているマールの姿を見たら、体を中心に風の壁出来ていることが分かった。
「何だ、その魔法?」
「空気感染だったらまずいから、空気の壁を発生させる魔法」
マールは胸から指二本で長方形の魔法陣が書かれた紙を取り出した。
「魔力が供給される限り、風の壁を作ってくれるのよ」
マールはそう言うと俺と一緒に自室から出る。
「この部屋に入って」
俺が入れられた部屋は真っ白な部屋でドアが二重になっている。部屋の中は中心にベッドそれと食べ物や衣類などが部屋の中に入れるための投入口だ。本当の隔離室だな。
「後から必要なものは部屋の中に入れるから、入っていて」
マールはそう言うと部屋の扉を閉めた。
「まあ、正直言えば体調が悪い以外は、ずっと寝れるから特に問題は無いんだけどね」
俺は独り言を呟くとベッドに入る本来は人が寝るためのベッドだからかなり大きい。




