141 意外な人物 意外な情報
取り敢えず、クリス、クミン、アリサの三人のIFストーリは書こうと思うます。
クリスの意外な人気に驚きました。
リリアナは気分次第取り敢えず、
「…………やめて良いぞ」
「ハァハァ」
俺は今あの訓練室に人間の姿でザイードといる。特に戦闘しているわけでなく、活性拳を15分維持する訓練をしている。今の所は活性拳を維持していられるのは30分が限界だ。なぜ限界の30分までやらないかと聞くと。
『限界までやってしまうと、その後何も出来なくなってしまうから』だそうだ。
15分活性拳を維持して、休憩、そして15分活性拳を維持する、その繰り返しだ。
案外これが辛い、休憩しても疲労が蓄積していくからだ。最後の方になると、体の覆うオーラも薄くなっていくが、15分維持しなれければならない。
「今日はここで活性拳の訓練をやめる」
「え?!」
俺はザイードの言葉に驚いた。いつもならもっと訓練が続くのに、今日はいつもの半分で訓練をやめると言ったからだ。
「そっか、じゃあお疲れ!」
休めると言うなら休まなければ!俺は喜々として訓練室を出ようとした。そこをザイードに服の襟を掴まれて止められる。その格好は、親猫に首根っこを掴まれる猫のようだろう。
「何だよ、ザイード。訓練は終わりだろ?」
「活性拳の訓練はな、これからはこれの訓練をしてもらう」
ザイードの手には日本刀だと思われる剣が握られていた。と言うかどう見ても日本刀だ。
「嘘だろう」
「転生者は基本的にこの刀が使えるらしいみたいだから、わざわざ作ってもらったんだぞ」
「いやいや、使えないから」
俺は首を横に一所懸命に振って否定した。どうやら転生者は日本刀が使えるみたいな勘違いをしている。俺が持っているスキルにも前世にも、日本刀を使った経験どころか、触ったことさえ無いのだ。使えるわけがない。
「そうなのか?今の勇者も日本刀使っているらしいぞ」
「いやいや、俺は使えないからな」
俺の言葉を聞かずザイードは、まあまあと肩を叩いてくる。
「取り敢えず、剣を教えられる奴を連れてきた。入ってくれ!」
訓練室のドアを開けて入ってきたのは、腰に日本刀を帯びた黒髪の人間が入ってきた。身長は170センチぐらいで、目が剣の先のように鋭い。と言うか人間?!
「人間だと!?この国には人間もいるのか?」
俺は驚いてザイードの顔を見つめた。
「ん、知らないのか?この国にはたまに漂流した人間がこの島に流れ着いて、自分たちの国よりここの居心地が良くてそのまま永住するという事が多々あるのだ」
ここに既に魔族と人間の共存出来る関係が出来つつあるのか?正直どのように生活をしているのか想像がつかないなから、何とも言えないけど。
「おい、銀髪」
人間の男は不機嫌そうな声を出して俺のことを呼ぶ。
「俺は人間じゃない、良く見ろ」
そう言うと髪をかきあげて目を見せる。目は魔族の特徴である青色の目が……いや赤色になった。もしかしなくても怒ってる。人間に間違えられたことが、よっぽど頭にきたのだろう。
「そう怒るな、バレル。こいつも悪気があって言った訳じゃないんだ。猫、こいつの名前はバレル・アズマ・マーモン」
その名前の中に一つだけ浮いている単語があった。『アズマ』俺はまさかと思い、ザイードを驚きに満ちた目で見つめた。
「ザイード、まさかこいつっ!」
ザイードは俺の反応を見て、困ったような笑みを浮かべて答えてくれる。
「……ああ、お前が思っている通りだ。バレルは先代勇者と先代魔王の間に産まれた子供だ」
「待て待て!だってあいつら教会に殺されたんだろ?」
あの神が作った本には少なくてもそう書いてあった。本は神によって作られたものだ。間違いがあるとは思えない。
「先代魔王と戦いの後、少しこの国に滞在していたんだ。その間に出産した」
「そうか……それで」
俺のフムフムと納得する。
「ザイードさん、それでこいつは?」
「こいつの名前はシロウ。俺たちは猫って呼んでいる事が多いけどな。ほら、あの例の猫に転生したやつだ」
「ああ、あの」
おいおい、いつの間にか俺の正体が広まってないか?本当に俺の正体は隠しきれているのか?ものすごく不安なんだけど。
そんな俺の不安のよそにバレルは黙々と何かの準備をしている。
「それじゃ、始める」
いつの間にか丸太が出現している。ザイードは俺に日本刀を投げる。それをバレルは確認すると訓練内容は話す。
「まずは垂直に斬る練習からだ。丸太を真っ二つにする練習。その次は水平斬り」
俺は受け取ると鞘から刀を抜いた。刀は綺麗で刃こぼれ一つ無い。
これなら、斬れるかも。
俺はそう思って丸太に向かって刀を振り下ろした。
「ハアー」
俺は未だに刀を縦に振っていた。ただ真っ直ぐに刀を振る事がこんなに難しいことだとは思わなかった。丸太の半分ほど切ると刀が止まってしまう、今は集中力が切れて、四分の一も斬れなくなっている。日本刀は確かに切れ味が鋭いが、その切れ味を発揮するにはそれなりの技術がいる。その技術が俺には無い。
『真っ直ぐ振り下ろす』これがこんなに難しいことだとは思わなかった。
「おい、銀髪」
俺がもう一度刀を振り下ろそうとした時、バレルが後ろから声をかけてくる。
「なんだ?」
「今日はここまでだ。これ以上やっても無意味だからだな」
バレルはそう言うと俺から刀と鞘を持って部屋を出て行く。
たぶん俺の集中力が切れていたことを、考慮して言ったのだろう。
俺は刀を持っていかれると特にすることが無いので、俺は訓練室を出た。
「お疲れ、猫殿」
訓練室の外で水を持って、マールが待っていた。
「ありがとう」
俺は水を受け取ると喉に流し込んだ。
「はあ~、生き返る。バレルは随分と無愛想なやつだな」
「バレル殿にも色々あるのだよ、色々とね」
マールは意味深にそう言って、自分の方の飲み物を口に含んだ。
「……まあ、そうだろうな」
勇者と魔王の娘の間に生まれた子供。バレルの両親はこの世界のために行動した結果、人間に嵌められて殺されてしまった。それに思う所があるのだろう。
次回は本格的に修行のシーンを書いてみます。たぶん




