133 目覚めると
俺は布と綿が敷き詰められた木箱の中で目を覚ます。どうやら気を失う前に聞いた足音の主に保護されたらしい、あのままあそこで寝ていたら確実に死んでいただろう命拾いした。ところでー
「どこだ、ここ?」
俺がいる部屋はベッドそれと机と化粧棚など色々と置いてある、部屋の主は女性のようだ。しかし、部屋の中には部屋の主はいないようだ。木箱から出てドアを開ける。ドアには鍵は掛かっていなかったようで、すんなりドアは開いてくれた。
ドアの隙間から顔を出して左右に首を振って、廊下に誰もいないことを確認すると廊下に出た。廊下は絨毯が廊下の端から端まで敷き詰められている。廊下の壁には窓が定間隔で設置されている。その窓には闇を映しているのを見るとすでに夜だと言うことが分かる。
「取り敢えず、入れる所に片っ端から入ってみるかな?」
廊下に体を全部出すとドアの開き口とは反対側に部屋がすぐ近くにある。
「それじゃあ、まずこの部屋からだな」
俺はそのドアを開けて見ると、中は書斎室のようだった。ドラマに出てくるような社長室机と肘置きついてる椅子、左右に本棚が置いてある。俺は音を立てないようにゆっくりと部屋に入る。夜のせいか分からないが、全体的に暗く落ち着いた色で統一されている。
「何か場所を知る手掛かりはないかな………」
俺は近くの本棚に近づいて本を眺める。上から順々に本の題名を見ていくが、特に場所を示す本は無く一番したの段に目が止まった。そこの本棚だけ全て同じ本で見覚えのある背表紙だった。
「これは……?」
前足を本の背表紙に引っ掛けて本棚から、一冊の本を引き出す。それから前足から爪を出して本のページを捲ろとしたが、上手くページを捲れなかったので人化をして人間の手でページをめくる。そこには教会の禁書棚に置かれていた本と同じようが書かれていた。いや、これは……
「本そのものが同じだな」
それを確かめるためにアイテムボックスから教会から持ち出した本を出して並べた。見比べると一寸の狂いも無かった。しかし……
「なぜ、教会に置いてあった本と同じものがこんな所に……」
その時、スキル危険察知が俺の体を突き動かした。人化を解いて猫の体を転がすよにうして、その場から離れた。人化といた理由は自分でも分からなかったが、体の面積を小さくするためか、それとも最強の技の猫の咆哮をいつでも撃てるようにするためか、危険察知によって半ば自動的に判断し行われた行動だった。スキルがそこまでさせるほど危険な相手だということだろうか?
「ほお~気配を殺していたのだがこれを避けるか。人の姿になることも考えるただの猫ではないな」
俺がさっきまでしゃがんでいた所には拳がめり込んでいた。その拳の主は青い髪の毛で長身の魔族だった。青髪の魔族は床から拳を抜くと俺と相対して気配を殺すのやめる。その途端その青髪の魔族の気配で俺は腰が抜けそうになった、いやあの森でレベルを多少上げてなければ動くことすら叶わなかっただろう。相手のレベルの差を肌で、気配察知、危険察知、本能、感じられる物全て感じた。青髪の魔族との絶対的レベル差を教えてくれる、戦うと思うことさえ馬鹿馬鹿しいほど。俺が唯一対抗できる技は猫の咆哮だろう。しかしそれも効き目が有るかどうか定かではない。
「だから言ったのだ、このような猫を…………」
青髪の魔族がブツブツと不満を零しているようだが、ここまで声は届かない。だが俺から意識が少し離れてる。完璧に油断している今ならー
「にゃあああああああ!(猫の咆哮)」
俺が撃ち出した猫の咆哮は青髪の魔族に直撃して壁に叩きつける。いや、直撃はしていなかった。どこから出したのか大剣が回転しながら天井に刺さる。どうやら大剣で防いだようだが、思ったより猫の咆哮の威力があったようで手から大剣が離れたようだ。この様子を見るとあと一撃入れれば行動不能に出来るはずだ。
「にゃああああ!(猫の咆哮)」
猫の咆哮が飛んでいく。だがさっきと同じように直撃したが、先ほどと全然様子が違う。先ほどは大剣が天井に刺さったが今度は猫の咆哮が天井に打ち上げられた。天井に穴が空くが俺は驚いて声も出なかった。まさか猫の咆哮を耐えるならまだしも、弾かれるとは思わなかったのだ。
「素晴らしい威力だ、我に活性拳を使わせるとは」
青髪の魔族からオレンジ色のオーラが溢れてる。俺はその光景に後ずさりしてしまう。逃げようと足を動かそうとするが、うまく動かない。男が一歩づつ近づいて来る、それに伴って圧力が増していく。そしてついに目の前に来る。
ああ、死ぬ。
脳裏がその言葉で埋まるがその言葉を打ち消すようにドアが開け放たれる。
バンっ!
「お父様、騒がしいです!!一体何をやってるんですか?それとあたしが拾ってきた猫を………。あ、いたー!お父様一体猫に何をやってるのです?」
「いや、これはだな……」
長髪で青髪の女の子が扉を開けて出てきた途端、青髪の男のオレンジ色のオーラが勢いを無くす。俺は咄嗟にその長髪で青髪の女の子の足元に走り寄った。青髪の男にとってこの青髪の女は弱点のようだったので、女の子の足元に駆け寄った。その行動が可愛らしいかったのか、女の子は目を輝かせて俺を抱き上げる。
「わああ、かわいい~」
俺の体を抱き上げて胸に抱きしめる。俺は胸の温かみと抱擁による圧力で安心が得られた。これでこの女の子と一緒に攻撃をされない限り安心だ。
「お父様、猫を苛めないでくれます。この猫を見つけたとき弱りきっていたのですよ!!」
「いや、別に我は猫を苛めていた訳ではない。そ、それにそれは普通の猫じゃー」
その言葉を青髪の女の子は遮る。
「またそうやって、お父様は。あたしがお父様の相手をしなくなりそうな要因を取り除こうとして。お父様、あたしもいい加減にしてくれないと怒りますよ」
「いや、だから猫は普通の猫ではー」
「お父様、お・こ・り・ま・す・よ?」
「……………」
その言葉で青髪の男は何も言えなくなってします。青髪の女の子はそれを見て満足して、俺を抱いたまま部屋から出ていく。
「全く、お父様の過保護にも困った物です。ねえ~、猫ちゃん」
青髪の女の子は俺の顎を撫でてくれると、そのまま俺を先ほどまでいた部屋にまで連れてかれる。
「猫ちゃ~ん、ここであたしと一緒に寝るのよ。あ、それとこれミルク持ってきたの。お腹すいたでしょう」
青髪の女の子は俺をミルクの入った器の前に下ろした。そう言えば確かに俺はお腹がすいている、と言うかあの時倒れたのは空腹のためだったしな、すいてて当然だ。俺は器は前足で傾けて口をつけて飲む。
ゴクゴク、ゴクゴク。ぷはぁ~!
俺が牛乳を飲み切るのを見ると、青髪の女の子は俺を持ち上げて一緒にベッドに連れ込む。
「今日はもう遅いから寝ようね~」
それから少しすると青髪の女の子から寝息が聞こえる。青髪の女の子が寝てからも少しの間、あの男が来ないか様子を伺っていたが来る様子が無かったので俺は目を瞑って眠りに付いた。久しぶりの安眠だった。先程まで命の危険にさらしていたのだが、それが夢のように感じられる。
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