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124 バトル、バトル、そしてバトル その3

辺りは騒然としていた。アルビオンが放った猫の咆哮は黒髪に当たった途端に跳ね返りアルビオンを空中へと跳ね飛ばした。射角が斜めだったために、エルフたちの背後にあるエルフの村に当たることは無かったのが幸いだっただろう。アルビオンは空中に吹き飛ばされて、エルフの村へとその体を落とした。


「何ですか?あの破壊光線は……私の魔力の減りを見る限り大量の魔力を使った技では無いですね。なのにあの威力……今のうちに始末しておいた方が良いですかね」

黒髪は跳ね返した攻撃の威力に驚きそう呟く。胸ポッケトに手を突っ込んで何かを取り出した時、エルフが四人空から落ちてきた。


「こ、怖かった~」

「空飛ぶなんて何考えているんですか?!」

「………」

「これが一番早かったんじゃよ、直線距離で突風で飛んで行くのが」

空か落ちてきたのは、リリアナ、エリカ、クシア、そして長老である。この四人は長老の精霊魔法で突風を作り空を飛んできたのである。

「アルビオンが暴れておると思ったんだが、アルビオンはどこに消えたんじゃ?」

「長老それが今、吹っ飛ばされました」

「……どう言うことじゃ?」

「それが……」

そのエルフの話を聞くとアルビオンはどうやら、カウンターを受けて村の方に飛ばされたらしい。



「あなたたちはここでエルフは殺しておきなさい、私は先程の猫を殺しに行きます」

黒髪が生き残っている部下に指示を出して、先程胸から取り出した丸く赤黒い飴玉を口に入れようと手を動かす。


火球かきゅう!!」


長老はその瞬間に出来たスキに、火の玉を手の平から飛ばした。長年の経験によってその赤黒い飴玉を食べさせてはいけないと判断したのだ。だがその手は止まることは無く、そして長老が放った火球は黒髪に当たった瞬間、長老の元に返ってきた。


「烈風!!」


長老はそれを予期していたかのように、風の精霊魔法で火球を上空へ飛ばす。


「随分と礼儀知らずですね、エルフのご老人は」

「なにお主ら人間には負けるのじゃ」

長老と黒髪は笑みを浮かべながら、話しているがビリビリと殺気が周りに伝わってくる。

「それは心外ですね、なら自己紹介させてもらいましょう。私の名前はグリード・ソルジュです。死後もお見知り置き」

グリードが腰を折って、挨拶をすると笑みを浮かべて問うた。

「それでエルフのご老人、あなたの名前は?」

長老はその言葉に笑みを浮かべて答える。

「すまないの、長老とでも読んでくれてくれじゃ」

「おや、私たちに名乗る名前は無いと言う事ですか?」

グリードがわざとらしく心外そうな声を上げて、長老に問いかける。

「いや、ワシはすでに名前を捨てた身なのでな」

「そうですか」

グリードは半分納得したが、半分は意味が分からない顔していて、さらに質問をしようとするが長老の言葉で遮られる。

「良いか、皆の者よく聞くのじゃ!!この男に魔法は効かぬ!!この男はマジックカウンターと言うスキルを持っているのじゃ。先ほどまで乱戦で気づけなかっただろうが、先程ワシの精霊魔法を跳ね返したように魔力を使った攻撃は反射されるのじゃ。わしも話には聞いていただけだが、まさか実際にこのスキルを目にするとは思わなかったのじゃあ」

「弱点は、弱点は無いんですか!!」

「ある、魔法を反射するにはその魔法と同じ魔力を消費する。魔力切れを狙ってひたすら魔法を放つか。マジックカウンターは自動ですべての魔法を反射してしまうので、回復魔法等の支援魔法を受けられない。魔力を使わない物理攻撃、ワシらな弓矢じゃ。決して効かない訳じゃ無い」


「クククク、私にはその弱点もうありませんよ」

「何じゃと……?」

クリードの体が段々と変化していく、上半身の服は破けて筋肉が盛り上がる。肌は黒色に変色して行き、鱗がはっきりと見えるようになる。目が爬虫類系のようになっていく。爪が鋭く剣のようなきらめきを持っている。

「これは……」

「ドラゴンの血じゃ……な」

クリードは全身を力を確かめるように動かす。

「エルフのご老人との会話で時間稼ぎが出来ましたよ、感謝いたします」

「何じゃと?!」

「でなければ私はエルフのご老人なんかと話しませんよ。薬の効果が出るまで少し時間がかかるのですよ、これは報告しなければなりませんね、二回目の摂取では効果が表れるまで時間がかかると」


「報告じゃと?」


「ええ、今回はこの薬、竜血丸の実験なんですよ」


「何じゃと?!まさかこれ全てが実験だと言うのか!!」

長老の言葉は驚愕の色が見える。まさか薬品実験のために、エルフの村一つ潰すなどとは考え付かなったのだろう。


「それじゃ、らせていただきますね」

その言葉を言い終わると同時に、地面から離れる長老の前に現れる。その速さは決して目で追えない早さでは無かった。長老は咄嗟に手の平を向けるが、魔法を反射するのを思い出し、魔法で自分の体を魔法で移動させようとする。しかし、攻撃しようとしたこで出来た微かな時間が長老を死へと誘った。


(しまった!!このままでは……)


長老の心には後悔で埋め尽くされ、目の前に迫ってくる剣を見つめる事しか出来なかった。


ガンッ!!


金属と金属がぶつかり合う音。


「長老は殺させません!!」

「クシア!?」

グリードの剣を止めたのはクシアだった。クシアは両手で片手で扱っているグリードの剣を止める。

「ほお~、私の剣を止めますか」

グリードの言葉にはクシアは返事をしなかった。いや。出来なかったと言った方が正しいだろう。少しでもどこからに力を割いたら、この剣を押さえ続けることは出来ないだろ。


(アルビオンさんとの一週間の訓練が無ければ、剣を止めることましてや動きさえ見えなかった。アルビオンさんに感謝です!!)


クシアは心の中でアルビオンに感謝の言葉を送り、さらに剣を握る力も送った。



長老はクシアが剣を止めている間に、その場から離れる。



「皆のも聞けーーー!!先程長老が言った様にその男には魔法は効かない、他のエルフはクシアのサポートと他の人間の殲滅だ!!……クロース姉妹、君たちはアルビオンを回復しに行くんだ」

村長が皆に指示を出した後、エリカとリリアナの元に駆け寄ってきた言った。


「え?」


「アルビオンなら、あの男を倒せるかもしれない!!だからあの男はアルビオンを殺しに行こうとした。あの猫が今、私たちの希望なのだ。行ってくれ」

村長は咄嗟に自分たちではグリードを倒せないことを悟ったのだった。

村長の必死な言葉に二人は頷いて、その場から去った。アルビオンを回復するために。



村長と長老が並んで立つ。

「さて、私たちはここでこいつらの相手をしますか」

「わしも手伝う、二人でクシアのサポートじゃ。若い芽を摘ませる訳にはいかぬ」

「行きますよ、長老」

「ああ」




クシアは危なげにグリードと剣を交えている。クシアはグリードとまともに剣を交わ無い様に、移動しながら捌いていく。アルビオンとの修行で確かに強くなったが、グリードの剣を捌くには力も技術もまだまだ足りない。ついに足をもつれさせ、地面に膝を付く。

「これで終わりです」

クシアの頭上に剣が振り下ろされたその時、クシアの地面が盛り上がりクシアを空中に飛ばた。クシアは突然のことに驚きながら地面に綺麗に着地をする。

「クシア、ワシたちがお主の動きをサポートする、好きなように動くのじゃ」

クシアは長老の言葉を聞くと頷いて、グリードに剣を向けて走る。

「その程度のスピードですなら……」

クシアの動きを余裕で見極めるたグリードの剣が襲うその時、クシアの足元から土柱が伸びクシアの移動速度を上げる。グリードの剣は空を切り、クシアの剣はグリードを斬り付けた。


「この耳長のガキが、何してくれるんだ?」


クシアの剣は確かにグリードを斬り付けたが、鱗に阻まれて薄い切り傷のような物が出来ているだけだった。だけど初めてこの戦いで付いた傷だけだった。クシアはグリードと戦えることに笑みを浮かべる。その笑みがグリードをさらに怒らせるのだった。


「こぉの糞耳がーーーーーーー!!」








一方、リリアナたちはアルビオンの元にたどり着いた。アルビオンの毛は真っ赤に染まり、地面にぐったりとしている。

「嘘でしょう?!」

「死にかけてるよ、お姉ちゃん」

エリカはアルビオン状態を見て泣きそうな声を出す。その声を聞いてリリアナは焦りを殺し冷静に答える。

「取りあえず精霊魔法で治療するのよ」

「でも私たちの精霊魔法のレベルじゃ、この傷は治せないよう」

エリカの泣き言を聞きながら、リリアナは聞きながら精霊魔法使いアルビオンの治療を始める。

「別に治し切ら無くても大丈夫よ、アルビオンの意識さえ戻れば猫の癒しで全部完治することが出来る」

「!!」

リリアナの言葉で自分たちがしなければいけないことを気づいた。自分たちはアルビオンを完治させる櫃余は無い、この瀕死の状態から少し回復させるだけで良い、意識と喋れるようになるだけで良いのだ。


二人はアルビオンに手をかざして傷を回復させていく。


「お願い」

「アル戻って来て」






                     アルビオン視点


「ここは?」

俺が目覚めたのは、暗闇に包まれている世界だった。どこまで見渡しても闇しかない。ただそんな中自分の体だけがやけにしっかりと見える。手足が猫で体は人間で顔は前世の物だった。

「まあ、いいやあ。どうでも」

そんなことがどうでも良いと感じるほど、気分は最悪でこのままこの闇の中で寝ていたかった。体が少しずつ落ちて行く感覚があるが、別にどうでも良くなるくらいだ。俺は瞼を閉じる。

そんなに俺の耳に届く声がある。

「………で」

「………………さい」

聞き覚えがある声だが、思い出すのも気怠い。


(ほっといてくれ、俺はここで寝かせてくれ)


しかし、そんな俺の思いとは裏腹に沈んでいく俺の体を上に引っ張り上げられる感覚が現れる。俺はそれに驚いて目を開けると、微かだが先ほど闇で満ちていた空間に光が見える。星ほどの小さな光だが、確かに存在する。そこに引っ張れているようだが、途中で浮き上がる力が止まる。どうやら下に落ちて行く力が強くなったようだ。力が拮抗している。


そして光に近づいたことで言葉が少し聞こえるようになった。

「……なないで!」

「…………ください!」

もう一度聞いたことで、その声の主が分かった、リリアナとエリカだ。俺はそれが分かると光に意識を向けるが、声が聞こえない。


(……何を言ってるんだ?)


俺はその疑問を解消するために、光に近づこうとした。光がやっと懐中電灯ぐらいにまで見えるようになると、何を言っているかしっかりと聞こえた。

「死なないで!!」

「戻ってきてください!!」


俺はその言葉を理解するに少し時間を有した。


(死ぬ??死ぬ?死ぬだと?!)


「こんな所で死ねるかよ」

そう呟くと俺は手足を動かして、光に向かって泳ぎだした。



あともう少しでたどり着ける、あともう少しで光に届く。そこで俺の足を何かが掴む。振り返ると俺の足首を黒い手が掴む。


「くっそ、何だこの手は?!」

少し恐怖に染まっている言葉ともに、足を振って振りほどこうとするが振りほどけずに、どんどんと引きずられていく。



「くそぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!」


俺がいくら暴れようと手は振り切れず、俺の足首だけ無く体までしっかりと捕まえてくる。黒い手が触った所から自分の体が冷たくなっていくことが分かる。この冷たさには覚えがある。





この冷たさは死だ。ああ、俺死ぬんだ。そんな考えが過ぎった瞬間、俺の頭を過ぎった物がある。



走馬灯



なんかでは無く。至極簡単で原始的な考えだ。 



死にたくない



ただそれだけだ。どんな生物も持っている、死への恐怖だ。


「死にたくねーーーーーー!!」


俺の中でその思いが爆発した瞬間、俺は黒い手を引きちぎって背中にロケットを付けているかのように、光に向かって飛んで行く。


「せっかく生き返ったんだ、二度も死ねるかーーーーーーーー!!」


俺はその瞬間光に包まれた。






               


クシアは縦横無尽に舞ながら、グリードに傷を作っていくが、それもそろそろ限界を迎えてくる。グリードの攻撃はクシアに直撃すれば、クシアは重傷を負うことは間違いなしだ。そんな攻撃を避けていればクシアの肉体的疲労もそうだが、精神的疲労はそれ以上だろう。そしてグリードは自分の力に慣れていなかったことも、クシアが戦えていた理由だ。しかし、この戦闘でグリードは段々と力をコントロール出来るようになって来ていた。


そしてついにクシアは捕まった。足を掴まれたのだ。


「?!」

「そう何度も同じような動きをされていれば、流石に私も動きを予想は出来る」

グリードはそう言うと思いっきり笑みを浮かべる。

「クシアーーーー!!逃げるのじゃあ」

長老が叫ぶがすでに時遅く、クシアはグリードの頭上まで持ち上げられる。地面に叩き付ける気だ。

「さようならだ!!」

その時一筋の矢がグリードの目の間を横切る。

「うお!!」

それに驚いて体勢を崩して、クシアを背中から地面に叩き付ける。いくらグリードが矢が刺さらない体になったとしても、目の前に矢が飛んできて驚かない訳が無い。

クシアは確かに地面に叩き付けられたが、力がしっかりと入っていなかっただけで死なずに済んでいた。

「ゴッホ、ゴッホ」

クシアは苦しそうに咳をする。背中から地面から落ちたことで、肺から一気に酸素が抜けたような感じだ。

「殺し損ねましたか、だたこれでお終いです」

「クシア、そこから離れるんだ!!」


(そんなことを言ったって、痛みと疲労で体が動きませんよ)


クシアは笑いながら、自分に踏み下ろされてくる足を見つめる。その時、辺り一帯が光のサークルで包まれる。

(体の傷が無くなっていく、これは猫の癒し)

クシアは体の傷が癒えたら、転がるようにしてグリードの足元から逃げた。


それと同時に、グリードの体が吹き飛んだ。






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