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105 噂は案外正しかった

俺たちが鶏を倒してすぐに村の方に向かって歩き出した。俺は背にエリカを背負い、クシアには折れた腕添え木をしてに自力で歩いてもらう事した。このままここにいたら寒くて凍え死にしそうだったからだ。ああ、背中のエリカの体温が心地よい。早い所、新しい服が欲しいぜ、結構真面目に。


「僕たちかなり遠くまで来てしまったみたいですね」

「そうね、私たちずっと走って逃げていたからね……ねえ」


クシアと話していたエリカが突然俺に声を掛けてくる。


「何だ?」

「どうして私たちがいる所が分かったの?」

「ああ、それか。聞いたんだよ、ソニアに聞いた」

「私たちの告白場所を?でも告白されたことはまだ伝えてないはずだけど……」

「聞いたのは学校の定番の告白スポットみたいな所だ」


俺があの時ソニアに聞いたのは学校定番か最近はやりの告白スポットだった。学校で定番なのは基本的に学校内部での告白だったが唯一違うものがあった。それがここ、学校の裏の森だ。学校内部にいるなら一緒に知らせを聞いて逃げてるだろうが、逃げていないと言う事は学校の外にいると言うことだと推測した。学校はもちろん村も塀で囲まれているが、学校の裏手の塀でが一枚だけ外れて、外の森に行ける場所があるのだ。外の森で木に見守られながら告白すると成功するとかしないとかだそうだ。大人たちが探している場所は村内部と表門の森だった。



「まあ、こう言う事だ」

「ふ~ん、助けに来てくれてありがとう」

「助けてくれてありがとうございました」

エリカがそう言うと、それに続いてクシアも俺に対して軽く頭を下げてお礼を言ってきた。腕が痛くて軽くしか頭が下げられないのだろう。二人とも帰ったら猫の癒しで治してやろうかな。



塀の前に立つと俺は地面を見て、土が削れている所探し出し、塀を退けた。

「入るぞ」

俺は腕の折れたクシアを先に村の中へ入れた。




村の中央まで行くと全員と俺たちに全員が気づき、こちらにかけてきた。

「おい、二人が帰ってきたぞ!!だれか伝えに行け!!」

「あの上半身裸の男は誰だ?誰か知っているか?」

「人間だと……おい」

「ああ」

エルフたちが俺たちの姿を見ると、二人が見つかった喜び半分、人間がいる事に対しての警戒心半分で俺たちのことを見つめてくる。すでに幾人かは俺に気づかれないように精霊魔法を使う準備までしている。ここで敵対行動をするのは本意ではないな。

「おい、クシア。あそこにいるエルフたちに何とか言ってくれないか?」

「えっとこの人は僕たちの事を助けてくれたので、味方です。たぶん」

「おい、しっかりと言ってくれよ」

「え、だって僕あなたのことよく知らなし……」


俺は背中に乗っているエリカをゆすった。


「エリカ何とか言ってくれ」

「うん、大丈夫ですよ。この人は味方です」

背後のエリカがそう言った事である程度警戒レベルは下がったようで、精霊魔法を使う準備をしている奴はいなかった。


「二人を治療できるところを案内してくれ!!二人を治療する」

「……分かった、付いて来い」

その場にいた年配のだと思われるエルフが返事をしてくれた。エルフは見た目だと全く年齢が推測できないからな。





「先生!!すまないベット貸してくれないか?」

俺たちは近くに会った家の中に案内してもらった。たぶん様子を見る限り医者の家なんだろう。

「それは構わないが……何だいその人間は!!」

「先生の人間嫌いは知っているが少し抑えていてくれないか?」

「フンッ」

一応、了承はしてもらえたようだが………連れてくる場所間違ってたんじゃないんですか?俺は部屋の奥に行くと二人をベットに座らせるた。


「それじゃ、治すよ」


俺はそう言うと猫の姿に戻った。上半身が裸のため猫の姿が衣服に埋まると言う事は無かった。

クシアは俺が猫になったことに驚いて声も出ない様子だった。俺は当然そんなクシアの事は無視して、エリカから治療を始めた。


「それじゃあ、治療するぞ。にゃ~おん(猫の癒し)」


エリカの体が光り、足首を治るのが分かった。エリカは足首の具合を確かめるように地面に恐る恐る足を付ける。足首に痛みが無いことを確認すると軽く飛び跳ねる。


「治った、ありがとう、アル!!」

「おう、それじゃ家にいる、リリアナとソニアが心配してるか知らせに行ってくれないか?」

「うん」

エリカは元気よく返事をすると、部屋から出て行った。


「さて、次はお前だな」

「え、はい」

いまいち現状について来ていけないクシアが返事をする。


「にゃ~おん(猫の癒し)治ったぞ」

「え?」

クシアは自分の腕を触って痛みが無いことを確認すると恐る恐る腕を振る。


「治って……る」

信じられないようにクシアは自分の腕から添え木を外し、自分の腕をペタペタと障って確かめる。

「当たり前だ」

「あの、あなたは一体?」

「俺か?噂ぐらいにはなってるだろう?少し前にエリカたちをこの里に連れ帰って、そして母親を治療した奴の事を」

「え?」

驚いたように声を上げる。

「それが俺だ」

「そ、そうだったんですか?噂とは違いますね……随分と」

一体どんな噂が流れているんだ?まあ、あんまりいい噂ではないだろうな。

「その噂ってのを聞かせてくれないか?」

「えっと、姿は虎で」

いいえ、猫です

「一撃でこの村を亡ぼせるほど強いらしくて、村長に自分をこの村に住まわせないと村を亡ぼすと言って脅したとか」

まあ、大体あってるかな……。

「そしてエリカ姉妹の奴隷の主だとかで、二人を足蹴にしたりとか」

完璧にあってます。

「聞いてた噂と違っていい人そうで良かったです」

ごめん大体噂はあってるわ。

「エリカさんの事を心配して助けに来てくれる優しい人だとは思いませんでした」

「ニャハハハハハハ」

俺は苦笑で対応した。


思ったより正しく噂が流れていてびっくりだな。間違ってたの虎の所だけだよ。



ここに向かって多くの人が走って来るのが分かる。これで今日のイベントは終わりかな。終わりだとうれしい。



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