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103 たまには主人公をやってみたくなる

今回は少しアルビオンのイメージと違うかもしれません。

まずは豆腐を作る所から始まるだが……もちろん最初から他人任せで豆腐を作ってもらうしかない。

「と言う事で豆腐を作ってこれ」

「良いですよ~アルちゃん」

俺が言った材料がそろったことで、お稲荷さん作り第一段階の豆腐を作ってもらう。カナリアは大豆を入れた樽に水を注いで行って、水の嵩が大豆の高さを超えた所でカナリアは水を灌ぐのを止めた。


「これで20時間ほど放置します。まあ大豆が水を含んでパンパンになるのが目安ですね~」

「そんなにほっとくのか?」

「夏は八時間ぐらいでいんですけどね~冬は時間が掛るんですよ」

「豆腐を作るのは一日がかりなのか」


それなら今日は何も出来ないな。仕方ない今日は昨日働いた分寝てるか。俺はあくびをすると窓から屋根に飛び乗った。

「ウニャァァァァァァ~」

日光が気持ち良くて鳴きながら体を伸ばして丸めた。今日はこれ一日で終わるだろう。






俺が寝て数時間が経ってお昼を過ぎたのだが……

「さ・む・い」

急激に気温が下がって来たのだ。太陽が出ているのだが、そよ風程度でもすごく寒く感じる、毛皮着てるのに。俺は寒さで固まった体を無理やり動かして家の中に入ろうとした。俺の体は何時間も寝ていたこともあるが寒くて、体の動きがカクカクとロボットの様にしか体が動かない。

「ウギギギィ、体が、寒すぎる」

転がるように窓から家に入ると、暖かい空気が俺を迎えてくれた。なんでこんなにあったかいんだ?家の中に暖房器具は無かったはずだが……。

「?」

「あら、お帰り」

「寒かった」

「待ってて暖かいミルクを用意するから」

「た、頼む」

俺は体を震えさせながら、リリアナの足元に向かい体を擦り付けた。人の肌の暖かさが心地よい。


「!!」

「ミルクが出るまで」



俺はそう言うと足に体を巻き付けた。ふぅ~、あったかい。




「出来ましたよ~」

「待ってました!!」

俺は足から離れるとテーブルに置かれたミルクを席に座って飲み始めた。ふぅ~体が内側から温まるぜ。ミルクは俺が猫の事を考えて若干温く暖められている。


「いきなり急に気温が下がってきたな」

「毎年こんなものですよ~」

そう言うと自分にも暖かい飲み物を入れると椅子に座って口に含んだ。


「今日は鍋物にしましょうか?」

「アサビのはやめてくれよ。それをするなら別のを食べることにしるよ。あれは俺にとって辛すぎる」

「大丈夫です、別のにしますよ」


カナリアはそう言って笑いながら、また飲み物を飲んだ。


そうやって体を温めて和んでいると空が段々と曇って行くのがはっきりと分かった。そんな空をカナリアが見て


「そろそろ雪が降りそうね、準備をしなきゃ」


カナリアは木で出来た雨戸のようなもで窓を閉め始めた。このままで雪が降ったら雪が家の中に入ってしまうかもしれないから、こう言った物があって当然か。


全部の窓を閉めると部屋は真っ暗になってしまった。昼間は太陽の光で部屋が照らされていたのだが、太陽の光は窓を閉め切ってしまったので光が全く部屋の中に入らなくなってしまったからだ。それでも少し時間が経てばこの程度の暗闇なら肉眼でもみることが出来るから俺は困らないが、エルフたちはこの暗闇を精霊魔法で照らすのだろう。


「精霊よ、闇を照らし、暖炉にて大気をさらに熱せ」


その言葉と共に部屋が光で照らされた。暖炉から暖かい風が吹き抜けてくる。俺は暖炉の前に座り込むと丸くなって寝る。この無理のない暖かさが、俺を眠りに誘う、さっき寝れなかった分も寝よう、お休み。




それから数十分くらい経った頃か、あたりが騒がしくなってきた。いや、正しくは空気が騒がしくなってきたのだ。


なんだ、一体?


俺は寝たまま、耳を澄ましてみると………。どうやら昨日落とし穴にいた鶏がそのままだったらしい。それを見てあるエルフが、それを殺そうとしてへまを。その穴から鶏を出してしまった、馬鹿野郎、何してくれてるんだ。ほとんどの鶏は殺したが、一匹逃がしてしまったと言う事で子供たちを家に帰して、大人たちは村の周りを警戒しているらしい。


だがその中で、二人だけ家に帰っていない子供がいるらしい。一人はクシア・クルジスと言う男の子、もう一人はエリカ・クロースだ。


「私もエリカちゃんを探しに行く!!連れって!!」

「駄目だ、危険なことがあるかもしれない」

この声は……アルマ・ソニアか?あいつは村長の娘だからな、危ない所には出せないだろう。

「ソニアちゃん、その言葉はありがたいけど……私とカシム君も探しに出るわ。今、村の中を歩くのは危ないから、私たちの家の中でリリーちゃんと一緒に待っていてくれる?もしかしたら入れ違いになるかもしれないし、ね?」


「……………ですか?」

「え?」

「なんでもありません、家の中で待ってます」

扉が開いてソニアが入ってくる音がする。

「ソニア、大丈夫よ、父さんも母さんも探しに行くし」

「うん」


リリアナが暖炉がある部屋に招き入れた。

「何か飲み物を入れるね、待ってて?」

リリアナは台所の方に歩いて行った。俺はそれを見計らってソニアに近づいた。


「『私が村長の娘だからですか?』か……」

「?!聞こえてたの?」

「ああ、特別扱いが嫌か?」

「何かある度に村長の娘って村長の娘って……何も出来ないなんて」

悔しそうに言うソニアを見て俺は口の端をまげて笑った。

「何が可笑しいの?」

そんな笑みに気を悪くしたのかかなり怒気がある声で俺に問いかけてくる。  

「お前が何も出来ないのは村長の娘だからじゃなくて、自分自身に力が足りなくて何も出来ないんだろう」

「何も知らないくせに」

「ああ、知らない。だけど知らないからこそ言えることもあるんだぜ」

「あっそ」

ソニアは俺の言葉に顔をそらし、すねたように返事をする。まったく、図星を付かれたからって拗ねるなよ。

「それに何もできない奴なんていないぞ」

「何それ?アルビオン、言っていることがさっきと矛盾してる」

「ああ、だけどな何も出来な奴って言うのは……」

俺はソニアがそらした視線の方に移動し、真っすぐにソニアの瞳を見つめた。たぶんこれは目を見て言わなきゃいけないことだから。

「な、何よ?」

ソニアの戸惑った声を無視して俺は言葉をつづけた。

「最初から自分で何も出来ないと思い込んでいるんだよ」


かつての俺がそうだったのように。


あの時、神に後悔しているかと聞かれた時だ。少しだけ自分の生き方に後悔していた。何の努力もしないで自分は何もできないと諦め、自分はモブキャラだと諦めていた。俺だってアニメの主人公にあこがれていた時期もあったんだぜ、女の子ために剣を取り、力いっぱい戦う主人公に。その主人公だって最初はモブキャラだ、誰だって最初はモブキャラなんだぜ。









まあ、これは過去の話で主人公に対する憧れは廃れたけどな。あんな主人公みたいなことをしていたら、命がいくつあっても足りないからな。今は普通が一番、お昼寝生活最高だー!!だから異世界に来てまで猫に生まれ変わったんだからな。




まあ、たまには主人公になってみるのも悪くは無いかな。




「じゃあ、まずはエリカを救う手伝いをしてもらおうかな?」

「?!連れてってくれるの?」

「いいや、だけど教えてほしいことがある」

「何?」

「それはな………」


そして俺の気まぐれ主人公タイムが始まったのだった。

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