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102 猫の恋愛相談

「え、一体、年いくつなの?」

「そうだな……猫に生まれて五年は経ったかな、五歳かな」

「私より年下だったの?!」

俺の答えに驚いたようだった。実際は五年+十五年で合わせて二十年。精神は丁度はたちだな。俺も年をとったな。あっちなら大人の仲間入りだ。そんなに年月が経ってしまったのか……。

「私、年下に………」

「なんだ、不服だったのか?」

「そう言う事じゃないけど無いけど………色々と損をした気分」

そう言ってため息をついて、何かを吹っ切るように空気を吸い込む。


「そうか……お前が宛てにした年の功は無駄だったな」

「そうは言うけど……ほら、猫の方が早く大人になるしね。アルだって他の雌猫に誘われたことが無いわけじゃ無いんでしょう?」

そう言ってしゃがんで俺の顔に近づいてくる。

「誘われたことはあるが……はっきり言って意味が無いぞ。猫ははっきり言って本能を優先して、相手を選んでいるからな」

エリカは俺の言葉に首を掲げて、頭の上に?マークを浮かべている。意味が伝わらなかったようなので、仕方なく俺は説明した。

「いいか、生き物と言うのは子孫を残すことが本能である。つまり子供だ。で子供を残すと言う事で雌が相手を決めるので一番重要な事は何だと思う?」

俺が突然説明をしだすと目を白黒させていたが、俺が質問をすると一生懸命考え始める。

「えっと……ちゃんと獲物を取って………くる?」

「まあ、それもだが、オスは強いと言うのが一番重要なんだ」

「………」

「だから恋愛感情と言うもの無いと言っても過言では無いんだよ。動物の世界だと」

「へえ~」

「だから俺にその恋愛相談をされても意味が無いんだ、分かったか?」

「うん」


エリカは俺の説明を聞いて、俺が当てにならないことが分かってしょんぼりとする。俺はそんなエリカを見て、少しだけ力になることにした。


「俺がその男の想像図を予想して言えることは二つだな」

俺がそう言うとしょんぼりした顔を俺の話に耳を傾ける。

「一つは策士でもう一つは純情君だ」

「どうして?」

「もうすぐ冬だろう?聞いた所によると家から出られないくらい積もるらしいじゃないか」

「うん、あと二日くらいかな……」

「そうしたら告白の返事をすぐには返せないだろう」

「確かにその通り……うん」

俺の言葉に納得したように頷いて肯定してくれた。

「そうすると考える時間や自分の事を調べる時間は余り無いだろう。そうしてすぐに返事を出さなければならない。そうなった場合、告白を受け入れる可能性が高くなるだろう」

「なんで?」

「断ったら悪いとか、後味も悪くなるだろう。だからだ。あまり嫌な事はしたくないし」

「へえ~」

「でこれが策士だ」

「じゃあ、純情君の方は?」

すっかり俺の説明に聞き入っているな、こいつ。軽い気持ちで解説したのは間違いだったかな?ここまで真剣に聞いてくるとは思わなかった。参考ぐらいに思ってくれればいいんだけどな………。まあ、いいや、解説を続けよう。

「純情君は前からお前のことが好きだったんだが、中々告白に踏み切れずズルズルここまで引きずってきてしまって、そして今日『あと二日しかないと』自分を奮い立たせて告白したんだ。これが俺の男の想像図だ」

俺の説明を黙って納得してしまったようだ。半ば俺の半妄想みたいな感じなのに。

「どちらにしても早めに何らかの答えた方が良いと思うぞ」

「え?」

俺の言葉に意外性を感じたのか、驚いたように声を上げる。

「相手を冬が明けるまで待たせるのは悪いだろう、少なくても伸ばすなら伸ばすと言った方が良いぞ」

「うん、相談に乗ってくれてありがとう」

「ああ」

相談か、これは相談になるのかな?まあ人は相談する前から自分で決めてると言うし、俺は背中を押しただけかな。




丁度その時、階段下の地下の扉が開く音がする。カシムたちの氷作りが終わったのだろう。


「終わりましたよ、アルさん。ん?」

台所のイノシシとエリカの姿で、エリカがイノシシを解体していてくれたことを察したのだろう。こちら側に来て、捌いてあるイノシシの様子を見ている。

「ん、上出来だね。うまく捌けるようになったね。成長したね、えらいえらい」

カシムはそう言うとポンッとエリカの頭に手を置いた。

「もう子供じゃないんだからそう言うのやめて」

そう言いながら頭を撫でられるのには抵抗しないで撫でられている。満更でもない様子。


「エリーちゃんだけに任せるのも悪いし、私も捌くのをやりましょうか。カシム君は捌いた物を下に運んでおいてくれるかしら」

「分かったよ」

カシムはエリカの頭から手を放すとイノシシを下の貯蔵庫に持って行くために持ち上げた。

「重いな~」


「アル君はまだ出していない物があったら出してね」

「ああ」

アイテムボックスを開けると俺は最後の鳥を出して渡した。カナリアはそれを見ると感心したように俺を見てくる。

「なんだ?」

「いいえ、ちゃんと人数分のお肉が集められていると感心しただけですよ~」

カナリアはそう言うと俺の肉に刃を入れ始め、解体を始めた。

人数分肉が集まったと言う事なら俺も本題に入らせてもらうことにした。

「感心したついでに豆腐を作ってくれないか?」

「豆腐ですか?別に構いませんけど…時間もありますし」

「そうか、なら油とお酢それと砂糖、塩くらいかな」

「それなら用意できますね。用意しておきますね~」


これで本題のお稲荷さん作りを始められるな。






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