フィーの魔術試験
転移から二週間と二日。
ボクは、魔術講座の最終試験・・・実習試験に臨もうとしていた。
合格条件は、風の神殿の完全攻略。
これが終われば後は歓待を受けた後に転移で魔王城に帰るだけだ。
「フィーさん、準備中はよろしいですか?・・・では、始め!」
闘いの火蓋が切って落とされた。
*
風の神殿第一階。
そこには、人間の上半身を持った食人植物アウラルネが蔓延っていた。
モンスターデータ:アウラルネランクB
人間の少女の上半身を持った食人植物。可愛らしい少女の姿に惹かれてやってきた愚か者を花びらの下に隠してある触手で絡めとり花びらの内側にある口から摂取する。気が向くとたまに人間を触手で弄んで遊ぶ。
ボクはまず、ありったけの補助魔術をボクに掛けることにした。
まずはストロングの魔術を最大威力でかける。
この魔術の効果は半日の間、攻撃力を三倍にすることだ。
次に、ファストランを最大威力でかける。
効果は半日の間、移動速度を三倍にする。
最後に、シャドウエイドをかける。
効果は、致命傷を受けた時に一度だけ無かったことにする。
それらをかけた後、ボクは無詠唱で氷雪系禁術級魔術『ブリザード』を発動させた。
ここで、無詠唱で魔術を発動させることのメリットがなんなのかを伝えようと思う。
無詠唱で魔術を発動させるメリット・・・それは、魔術と魔術の融合による強化とその他の細かい設定だ。
今回のブリザードを引き合いに出すと、
①威力の設定
②範囲の設定
③雪の形状の設定
④他の魔術を混ぜるか否か
というところだ。
今回のブリザードは、
①威力最大
②範囲最大
③形状・・・氷で出来た小さなナイフ
④他の魔術・・・ハリケーン(威力最大範囲最大)
といったところだ。
さて、ここで問題。
Q.この状態のブリザードを発するとどうなりますか?
A.全てが凍りつきます。
という訳で、ブリザードもといアイスハリケーンを発動。
ビュゴオオオオオオオオオオオ!!!!!!
という凄まじい音と共に視界が白く染まった。
白く染まった視界の向こうから時折、「キャアア!」とか、「イヤアアアアッ!」とかいう悲鳴が上がっている。
暫らくして雪煙が晴れるとそこには・・・
アウラルネ達の血と死体が凍りついてゴロゴロと転がっていた。
ボクは生物が居なくなったその回廊をゆっくりと歩き始めた。
後は、この階層のボスを倒して上に登ればいい。
登ればいいのだが・・・
ボス部屋に行く為の扉が凍りついてしまって開かなかった。
・・・。
・・・。
・・・。
・・・まあ、うん。あれだね。
ちょっと、やり過ぎたね。テヘペロ☆
*
ボクはとりあえず初級魔術のファイアでドアの氷を溶かして中に入った。
そこには、とてつもなく大きな木があった。
だが、ただの木では無い。
歴とした食人植物だ。
モンスターデータ:トリファドランクA
巨大な食人植物。一見するとただの大木にしか見えないが、根元に根が二つに裂けたところがありその奥に粘液があることで判別が可能。うかつに近寄ると、食われる。
相手が単体なので、氷雪系禁術級魔術の一つを叩き込むことにした。
その名は───コキュートス。
対象は体の芯まで凍りつき、死に絶える。
ボクは、コキュートスを発動した。
この魔術は威力も範囲も形状も(正方形)他の魔術との融合も出来ない。
なぜなら、変えずとも最強だから。
トリファドは正方形の氷の中に一瞬で閉じ込められた。
こうして、ボクは第一階をクリアして第二階層へと進んだ。
*
第二階層には、犬型の魔物であるガトルがいた。
モンスターデータ:ガトルランクB
集団で行動し獲物を狩る。属性が生息地によって変わる性質を持ち、成長して大きくなり過ぎた個体は一人立ちする特性をもつ。
「「「グルるるる.・・・」」」
ボクはいきなり三匹のガトルに囲まれてしまった。
ボクは急いでアイスランスを二つ発射する。
だが、難を逃れた一匹がボクに噛み付こうとして───
ズッパーーーーーーーーーン!!!
───ハリセンで殴られて頭がグチャっと潰れ、事きれた。
・・・え?ちょっと待って?ボク今、牽制の為にハリセンで殴ったんデスケド・・・?
グチャって。よりにもよってグチャって。
グロいよおおおおお。
そんなことを考えながら進んでいくと、またガトルが4匹の群れで現れた。
ボクは魔術を発動させるのがダル・・・ゲフンゲフン。疲れるので、魔力集圧砲で一掃することにした。
凄い棒に魔力を通して、それをガトルの群れに発射した。
ちゅどーん。
ガトルは死体も残さず消し飛んだ。
・・・。
・・・。
・・・今までのボクの工夫とか、正直要らなかったよね・・・。
その後は魔力集圧砲で全て一掃して行った。
さらに暫らく進むと、ボス部屋にたどり着いた。
そこにいたのは・・・
モンスターデータ:フェンリ───
「コキュートス」
勝負は一瞬で決着した。
*
三階には、ボス部屋しか無かった。
ボス部屋の中には、グリフォンがいた。
モンスターデータ:グリフォンランクS
空をかける魔物。その翼は強力無比。肉が結構美味しい。
今日の晩御飯は久々に鳥肉のようだ。
じゃあ、コキュートスで一撃で仕留めますかね。
「コキュートス」
ボクはコキュートスを発動させた。
だが、グリフォンは高く舞い上がりコキュートスから逃れた。
素早いせいで逃げられたようだ。
なら、アイスハリケーンを使うまでだ。
アイスハリケーンを発動させ、グリフォンに襲い掛からせる。
だが、グリフォンの翼の一振りでアイスハリケーンは散らされた。
───そんな!ボクの魔術師があっさり無効果されただなんて!!
ボクは愕然とした。
・・・これは、ピンチだ。
もしかしたら、『あの魔術』を使わないといけないかもしれない。
『あの魔術』ならば、確実に勝てるだろうけど・・・ボクも確実に、結構なダメージを巻き添えで食らうだろう。
・・・やるしか、ないのか。
ボクは、『あの魔術』を発動させた。
『あの魔術』とは───
①威力最大
②範囲極小(比例して威力の上限がアップ)
③形状は、槍。
④ライトニングと混ぜ、追尾性能を追加
───氷雪系禁術級魔術最終奥義、グングニルだ。
天空にジジジ・・・と十字架の形の次元の穴が空く。
そこから、恐ろしい程の冷却が発せられ・・・
ズドン。
という音と共に巨大な氷柱が落ちてきてグリフォンを貫き、その体をカミナリが焼いた。