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リオ@過去

「気がついた?」

わたくし――サラ・イクスピアル――は、目が覚めると荷馬車の中で横たわっていました。

・・・ええっと・・・なぜ、わたくしは気絶していたのですっけ?

気絶する前の事を一つづつ思い出してみましょうか。


始まりは、私が父に独り立ちのための試練を与えられた事でした。

・・・あ、言い忘れていましたが我がイクスピアル家は代々の豪商ですの。

話を戻しますわ。

その試練とは魔王城城下町に新しく開店させる支店で一定以上の売り上げの伸びを出すことです。

そのために、私は王都からやって来たのですが、わたくしの事を快く思わないもの達が執拗に追って来たので魔王城城下町まで行く事を途中で諦めて逃げていたのですが・・・

この森に逃げ込んで少しだけ安心した直後に囲まれ、もうダメかと思った途端に目の前にの女性が現れ、敵を鎌でどんどん引き裂いて全滅させてしまったのでした。

・・・そうでした。問題は、この後の言葉でしたわね。

放った言葉は・・・



「どうもー。死神でぇーす」



でしたわね。


・・・。


・・・。


・・・死神ですか。


・・・死神、ですか・・・。


わたくしの記憶違いでなければ、死神は人間に干渉などしませんし、ヒラヒラのメイド服を着ている美女でも無かったはずです。

ですが・・・なぜでしょう。


メイド服をどす黒い血にまみれさせているこの方の凄惨な『笑顔』は、この方が死神であってもおかしくない、という感情を抱かせました。


「・・・あの~。黙りこくって居ないで返事をして欲しいんだけど?」


わたくしが黙りこくって考えていますと死神さんは少々不機嫌そうな表情をしていました。


「ひっ!?すみません死神様!」


わたくしは、とにかくこの方の気に触らないように平伏しました。

すると死神様は狼狽して、


「っ!?そ、そんな事しなくても大丈夫よ!」

と仰った。

「・・・そうですか?」

「ええ、私は元人間だし・・・」


わたくしは顔を出し上げました。

よかったですわ。本物の死神ではあっても、ものがたりに出てくるような怪物では――




「・・・精々、人間を縦に引き裂くぐらいの事しかできないもの」




「助けてくださいまし」




気付けばゴリゴリとわたくしは額を地面に擦り付け命乞いをしておりました。地面が冷たくて風邪を引きそうですわ。


「べっ、別にむやみやたらと殺すような事はしないわよ!・・・敵対したらその限りじゃないけれど(ボソリ)」


怖いです。後半の言葉がやけに怖いです。


「そ、そうですか・・・。ところで、お名前は・・・?」


わたくしはとにかく早急に話題を変えるべく、名前を尋ねました。

ですが・・・


「あー・・・名乗って無かったっけ。私はリオ。リオ・アルケイル」


わたくしは、その言葉を聞いて思わず大声を出してしまったのだ。


「アルケイル家のお嬢様なのですか!?」


アルケイル家。

それは、代々優秀な魔術師を出して来た名門貴族。

今の宮廷魔術師と魔術隊隊長はアルケイル家の出身です。

詰まるところ、アルケイル家の者であると言う事は・・・


「あなたもすごい魔術師なのですか!?是非とも、わたくしの護衛をしていただけないでしょうか!?」


凄い魔術師で、魔術がつかえると言う事なのですわ!



私は、困っていた。

今、目の前にいるのは育ちの良さそうな少女。

その子が目をきらつかせて私を見ている。

・・・でも。


「・・・ごめんなさい。私、魔術が使えないのよ。


私は、魔術が使えないのだ。


「えっ!?なんでですの?アルケイル家の方ですわよね!?」


「ええ。そのことについては今から説明するわ」

そうして、私は語り出した。



私は、魔術の名門アルケイル家に生まれながら魔力を殆ど持たずに生まれて来た。

上の二人の兄は魔力に満ち溢れていたにも関わらず、である。

周囲からの風当たりはすごく、言われの無い様々な誹謗中傷の的となった。


曰く、欠陥品である。


曰く、不貞の子である。


曰く、アルケイル家の恥さらしである。


などなど。

家のもの達はいつも『そんな事は無い』といってくれていた。

でも、外での風当たりのキツさは変わらなかった。

そのうち、風当たりのキツさに耐え兼ねて父と母は私の存在を秘匿した。

凄く、悔しかった。


なぜ、魔力が無いの?


なぜ、魔術の適性が無いの?


なぜ・・・私は、存在を認められないの?


だから私は、力を求めた。

血の滲むような努力をして、Sランク勇者になり新人勇者のお供を王室から任されるようになるその日まで。



「・・・と言うわけで、護衛は出来るけど魔術は使えないの」


私が話し終えると、少女はポカーンとしていた。

仕方ないので、おーいと言いながら目の前で手を降り続けた。


「・・・・・・・・・・・・・・っは!?」


あ、気がついた。


「えーっと・・・すみませんでした。いらない事をきいてしまいましたわ。・・・護衛をお願い出来ますか・・・?」


少女はそう言うと、私を上目遣いで見て来た。

いい、と言いたいところだけど・・・


「ごめんね?魔王城を目指しているから「あら、わたくしもですわよ?」・・・あ、そうなんだ」


じゃあ、護衛決定だね。


「リオさん。これからもよろしくお願いしますわ。わたくしの名前はサラ。サラ・イクスピアルですわ」


こうして少女・・・サラと魔王城を目指して進んでいった。

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