フウトVS最悪の魔物。その名は・・・!?
ヒュドラを何時間も・・・もしかしたら、何日も殴り続けて倒した後、俺は火山から出た。
これで、生贄などという下らないことは起きないだろう。
俺は安心して西に移動を再開した。
・・・ちなみに、ヒュドラの皮とウロコは売った。おかげで懐が非常に暖かい。
肉もついでに食べてみた。
臭みが無く、歯ごたえがあり噛めば噛む程旨味が出ていて・・・つまり、なかなか美味かった。
*
俺は西に移動を再開した・・・が。
俺が走ると衝撃波で辺り一面が荒地になってしまうので徒歩での移動である。
そんな訳で歩き続けて二日後。
それまで森が生い茂っていたのが、唐突に視界が開けた。
そこは・・・
地面が露出していた。
まるで・・・何か巨大な生物が通った後にできる道のような。
これは・・・。
調べるっきゃ、無い!
*
あの後しばらく進んでみると、道は幾つにも分かれていた。
俺はそこで追跡を諦め、途中で偶然見かけた民家に泊めてもらった。
夫婦で仲睦まじく暮らしている。
夕飯時に俺はあの謎のモンスターについておっさん達に聞いてみた。
するとおっさん達は・・・
「・・・!!(ガタンッ!!)」
「・・・!!(カランッ!!)」
いきなり立ち上がったり食器を落としたりした。
そして、慌ただしく家財道具をまとめ始めた。
「えっと・・・どうしたんですか?」
俺は努めて平静を装って尋ねた。
「『奴』が発生したら、その土地には住めん。そのうち全て吸収されてしまうからな」
「ああ恐ろしい・・・!!この森もついに終わる時が来たのか・・・!!」
・・・そんなにヤバいのか・・・?
「俺はそいつを倒してみたいんですが・・・」
俺がそう言うと、夫妻は猛反対を始めた。
「や、辞めなさい!」
「そうだ!無駄に死に行くようなものだ!」
・・・ああ、そうか。この人達、俺の実力を知らないんだっけ。
「・・・あの~。心配していただけるのはありがたいんですが・・・」
「「なに!?」」
殺気立つ夫婦。
「俺、ヒュドラを倒すくらいのチカラがあるのですが・・・」
「「・・・・・・・・・・・は?」」
夫妻は呆気にとられた。
まあ、それはそうだろう。
目の前にいる少年と呼んでも差し支えの無い人物がヒュドラを倒したって言うんだからな。
しかし、俺のその予想は外れた。
「「・・・ぷ、く、わーっはっはっはっは!!」」
夫妻は大笑いし始めたのだ。
「え?え?なんで?」
俺は大いに混乱した。
ヒュドラである。Sランクである。
なんで?なんで笑うの?
「あのな、兄ちゃん?ヒュドラってのは、そこら辺の一流冒険者なら普通に倒せんだよ。倒し方が確立されているからな」
・・・え?
「そうですよ。なんったって、バーンウエポンをかけた剣で首を切れば良いだけですからね」
・・・ゑ?
「ヒュドラと『奴』じゃあ、格がちげーよ」
「そうですねえ~」
「「あっはっはっはっはっは!!」」
お二方は仲良く笑いあっている。
実に良いふんいきである。
和やかな時が流れる。
だが、そこに水をさす少年が一人。
なんと俺である。
「あのー。すいません。仲睦まじく笑いあっているところ悪いんですが・・・」
「「ん?」」
俺は、核爆弾を投下した。
「俺、胴体を殴りまくって殺したんですが?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」」
あ、固まった。
俺は二人が固まっている間に、お茶をすすった。うむ。美味。
俺がお茶をすする音が響く。
俺がそうして暫らくまったりしていると、
「「その話、詳しく聞かせろ」」
「うおっ!?」
いきなり肩をガシイッとつかまれた。
・・・面倒くせえ・・・。
*
事情を説明後、得られた感想は一つだった。
『お前、本当に人間か?』
ということだった。
俺が人間か否かと問われると凄く怪しい。
だって、破壊神だし。
そして、お前なら大丈夫だろうと言うことで『奴』は基本的には右から移動するので、1番新しい道は最も左にある道だろうと教わった。
次の日。
俺は夫妻に礼を言い、出発した。
夫妻に教わった通りに満ちを進んだ先にいたのは――――
――――スライムであった。
モンスターデータ:スライムランクSS
ゼリーの様な体を持った魔物。
何処からか現れて、あたりにあるものを吸収しながら進み、一定以上の大きさになると消滅する摩訶不思議な魔物。
周りのものを食べながらHPを回復する。
魔物よりも災害に近い存在。
今だかつて倒された記録は無く、弱点などは一切が不明。
強っ!?
スライムって普通、雑魚キャラじゃね?
なんか滅茶苦茶強いんだけど!!
・・・まあいいや。とりあえず、あのスライムを倒そう。
俺はカタストロフを構えて、走り出した。
まずは一撃。
俺はスライムに攻撃を加える。
ムニッという感触と共に、スライムの一部が崩れる。
「――――!――――!」
ダメージがあった様で、スライムは苦しそうにフルフルとふるえる。
スライムは、HPを回復するためか辺りの植物を体の一部を触手の様のして手当り次第に取り込んでゆく。
触手の内の三本が、俺に襲いかかって来た。
だが、俺は触手をカタストロフで殴って破壊した。
しかし、触手はどんどん生み出され、辺りの植物や動物を取り込みながら俺に攻撃を仕掛けてくる。
・・・くそっ。殴っても殴っても終わらねえ。俺と戦っている奴らもこんな気分だったのか・・・!!
ああ、もっと力が欲しい。
チカラが、ホシイ・・・!!
その時だった。
俺の脳内でシステムメッセージが鳴り響いた。
《武器特技『爆砕ノ鎚』を習得しました。クールタイム600秒》
丁度良い!武器特技だ!
俺はスライムに『爆砕ノ鎚』を発動させた。
「くらえ!爆砕ノ鎚イイイイイイイ!!!」
カタストロフが紅蓮の炎に包まれる。
そして、俺はスライムをそれで殴り――!
――ズドオオオオオオオン!!
轟音が鳴り響き、紅蓮の炎の柱がスライムを焼く。
「――――!――――!!」
スライムは水分を失い、どんどん縮んでゆく。
炎が収まったところには・・・
黒く炭化した、スライムだったものがあった。