誕生
昨日分ですm(_ _)m
家を買ってから約一週間。
リオがようやくメイド服とメイド口調に慣れ始めた頃のこと。
魔物が卵から孵化したのだ。
*
「ああー・・・ダラダラ出来るってホント、素晴らしいなあ・・・」
その日の俺は、いつも通りどこに行くでもなくダラダラしていた。
「・・・ご主人様、少し働いた方がいいのでは?」
額に青筋を浮かべてリオが注意する。
その手には何時の間にか漬物石が・・・。
「まあまあ。今のボクたちはお金の余裕があるからね。別にいいんじゃ無いかな?」
そう言ったのは、机にダレているフィーだ。
猫耳がペタンとしていて、非常にゆるい雰囲気を出している。
ためしに野菜スティックを差し出すと、その体勢のままポリポリと食べ始めた。・・・和む。
「それはそうですけどっ!私だけ働きづめっていうのが我慢ならないんですっ!」
机をバンッと叩いて威圧するリオ。
だが、フィーの出すまったりした空気は全く減らなかった。
尻尾をフリフリしながらフィーは言った。
「・・・ボクは魚が食べたいにゃ」
「・・・買って来るので、それぞれの部屋の片付けをお願いします」
そういうとリオは、買い物バックを持って出かけて行った。
俺とフィーは仕方なく、自室の片付けをはじめるため、それぞれの部屋にもどって行った。
・・・え?無視しないのかって?前に無視したら、飯抜きにされたことがあったんだよな・・・マジで。
だから、どうしたって無視出来ないのだ。
まあ、俺の部屋はそもそも物が少ないので、ほとんど片付ける必要性が無いのだが。
そんなことを考えながら部屋に入ると、そこには・・・
ちっこい黒色のドラゴンがいた。
「・・・は?」
状況が呑み込めず、しばしフリーズする。
・・・どっから入ってきた?
そう思って部屋を見渡すと、ある異変に気がついた。
無いのだ。
リオから預かっていた魔物の卵が。
・・・ということは?
こいつ、まさか・・・
「生まれた、のか・・・?」
あの卵から。
このドラゴンは生まれたのか?
そう思って近づくと、ドラゴンは不思議そうに見つめてきた。
・・・とりあえず、フィーに報告しよう。
そう思って部屋を出た。
出たのだが・・・
「なんでついて来てんだよっ!?」
ドラゴンが後ろからパタパタとついて来ていた。
するとドラゴンは、「?」とでも言いたげに首を傾げた。
・・・頭はいいようだ。
もしかすると、刷り込みで俺のことを親だと認識しているのかもしれない。
このままついて来ても問題ないだろうと判断して、フィーの部屋へ。
「フィー、入る」
入るぞの『ぞ』は言えなかった。
なぜなら、目の前の何かが崩れてきて、俺をしたじきにしたからだ。
その何か、というのは・・・
「・・・フィー。ゴミを扉の目の前に積むな」
「にゃ?」
ゴミ袋の山だった。
*
「なるほど。あの卵が孵ったのがそこのドラゴンなんだね?」
「ああ。その通りだ」
俺とフィーはリビングで話し合っていた。
それは・・・
「餌って肉でいいのかな?」
ということだった。
食べてはいけない物や習性など、そこらへんがわからないと非常に困るのだ。
それに加えて・・・
「・・・どこから買ってきたんだろうね・・・」
ということだった。
ちゃんとした店なら育児・・・いや、育竜の手伝いをしてくれるだろう。
だが、魔物の卵をガチャポン形式で売り出している場合は?
正直、アフターケアは望めなくなる。
先行き不安な状態に溜息を俺はつかざるを得なかった。
そのとき、頭の中にシステムメッセージが。
『《最凶の竜使い》の称号を獲得しました』
・・・最凶の竜使い・・・?
なんなんだ、それは。
そう思って悩んでいると、フィーが突然、
「あーーーーーっ!!!」
と叫んだ。
「・・・どうした?」
飽きれて俺が尋ねるとフィーは、
「まだこの子の名前つけてなかった!」
といった。
名前。
たしかに、早い所決めないと不便である。
「そうだな。早く決めるか」
・・・リオがいないのに勝手にはじめるのはスルーする方向で。
「そうだねえ・・・。クロとか」
・・・。
・・・。
・・・。
「フィーは少し黙っていようか」
「ええっ!?」
今時、小学生でもつけない名前である。
えーっと、黒竜か・・・。
有名なのは、
バハムート
ファーブニル
・・・この二つだな。
でも、なんか名前というには呼びやすさがない。
うーん・・・。黒竜か・・・。
ダークネスドラゴン。
・・・お。
並び替えてクーゴとかどうだろう?
「クーゴとかどうだろう?」
「・・・無いと思うよ?」
「えー・・・」
結局、クロで落ち着いた。