VS王様
あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!おまたせしましてすみませんでした!
王都に帰る準備をするかと思い、二人に声をかけようとしたときの事。リオとフィーがいきなりモンスターの死骸に近寄っていき、角やら目玉やらを剥ぎ取り始めた。
「ちょっ、二人ともなにやってんだ!?」
俺は二人のいきなりの奇行にびっくりした。
「何って・・・売れる部位と食べれる肉を剥ぎ取っているだけだけど?」
リオが血に塗れた状態でしれっと言い放った。
「お前らに教わって居ないのに知っている訳ないだろ!!」
「・・・ふつーはギルドで教えてくれるものなんだがにゃー・・・」
「受付の野郎おおおおおおおお!」
あの性格最悪な受付嬢め!あと少しで損するところだったじゃないか!!
「まあ、誰かさんが威力偵察だって言ってるのに死骸も残さずに殲滅しちゃったからねえ・・・追加報酬は期待出来そうにもないわね」
「・・・マジですみません」
「まあまあ、誰も怪我しなかったし、いいんじゃないですか?」
「ま、それもそっかあ」
・・・ちなみに、この会話の間、ずっと土下座状態であった。
*
その夜、焚き火をつかってリオが食事の用意をしている時に、俺はレベルと特技について聞いて見た。
「特技っていうのは、称号をもっている時にレベルが一定量上がると手に入るものよ。最大の特徴は何も消費しないけれど、再使用するには一定の時間が必要なことね。また、称号はあらゆる事柄で手に入るわね。生活習慣や普段の行い、ステータスや戦闘。あとは、名声かしら。どれもレベルが上がれば特技が生まれるね。しかも、使うものをえらばないから・・・」
「だから、MP0の俺にも使えたのか」
「そうよ。次にレベルだけど、一定量の敵を倒すと、レベルは上がるわ」
「・・・いや、それは知ってる。そうじゃな
くて、上限は?」
「ないわよ?」
「は?」
「頑張ればその分、レベルが上がる。当たり前じゃない。上限なんてある訳ない」
・・・そうだった。
確かに、スキルやら特技やらなどのゲームっぽい世界観だが、紛れもない現実なのだ。
データではないのだから、上限なんてある訳がない。
頑張ればその分、か・・・。
あっちの世界では無かった話である。
・・・俺は、本当に魔王を倒して帰りたいのか?
盗み食いをしようとするフィーをおたまで叩いて撃退するリオという光景を眺めながら、そんな事を考えた。
*
王都への帰還を果たした俺達は、王宮へと召喚された。
以前もみた無駄に豪華な謁見の間にて、俺達は王と対面していた。
「・・・顔を上げよ、勇猛なる勇者達よ」
王は、誰一人として顔を下げていないのに、無駄に偉そうな口ぶりで言った。
「よくやった。王都に侵攻しようとしていた数万の魔物の群れをよくぞ壊滅させた。あとで褒美を授けよう」
「「「はっ」」」
「ところで、勇者フウトよ」
「はい」
いきなり俺に話が振られたので、ビックリして声が若干震えた。
「そなたの力を見込んで、魔王退治を願いたい。できるか?」
・・・きた。これは要約すると、
『元の世界に帰りたいんだろ?とっとと魔王退治してこい』
ということだろう。
わかった。
いいだろう。
俺は思い切り息を吸って、答えた。
「断る!!!」
一瞬にして、謁見の間がしん、とした。
蛙・・・じゃなかった。王は、顔を真っ赤にして、問いかけた。
「何故だ?元の世界に帰りたくないのか?両親に会いたくないのか?友人には?いればの話だが、恋人には?それらはどうするのだ?」
いきなり、王は焦って、元の世界に帰りたくしようとし始めた。
・・・ふん。
馬鹿馬鹿しい。
「・・・お前は、決定的な思い違いをしている」
「貴様っ!王に向かってなんという口の利き方!口を慎め!!」
なんか近衛兵みたいなのがギャーギャー煩いが、無視一択。
「・・・なんだ?」
王は尋ねた。
ふん・・・答えてやろう。
「家族?友人?恋人?はっ。そんなもの・・・」
『そんなもの?』
全員から聞き返されたが、無視。
「向こうの世界では無いも等しい状態だったんだよ!!」
『悲しいなオイッ!?』
考えても見て欲しい。
向こうに帰った所で待っているのは、暗い毎日だけだ。
それに比べて、こっちの世界にはちょっとの間とはいえ、共に旅をした仲間がいる。
これでは、向こうに帰りたくなる訳が無い。
「フウト・・・可哀想に・・・。今日は美味しいもの作ってあげよっと・・・」
「フウト・・・それは余りにも可哀想にゃ・・・よしよし。ボク達がいるにゃ」
なんだか、その苦楽を共にした仲間たちから憐れみの視線を受けている気がする・・・というかフィーに頭を撫でられているが、そこは置いといて。
「と、とにかく!俺は向こうに帰りたくない!」
俺はそう締めくくった。
「な、ならば、何が欲しい?追加の褒賞か?貴族の位か?勲章か?」
うわ・・・でた。有名な3つの交換条件。
地位と名声と金。
だが、残念だったな。
俺は、普通の勇者じゃないんだよ!
「どれもいらん。金なら自分で稼ぐし、政治は嫌いだ。勲章も、別に目立ちたくてやってる訳じゃないから、いらない。だから、断る!俺は・・・」
『俺は?』
「仲間たちとダラダラ自由気ままに生きれれば、なんでもいい!」
『こいつダメ人間だ!』
「・・・わかった。どういっても討伐などしそうにないな。これにて、謁見を終了する」
こうして、俺達は王宮にケンカを売ってきた。