朝顔
昨晩ある屋敷で事件があった。被害者は水無月順子。13才の少女だった。
前日に偶然立ち寄った探偵と名乗る男、夕顔密が事件の捜査に乗り出した。
容疑者は四人。屋敷の主人の水無月貴志、叔父の水無月孝司、母の水無月恭子、使用人の和泉優那。
それぞれにはっきりとしたアリバイがあり、警察はお手上げ状態。
しかしここには名探偵が居る。密は証拠を次々見つけて犯人をあぶり出す。
アリバイも崩れてお手上げ状態。さすがは名探偵、警官達は手を叩いた。
「犯人はあなたです。」
指の先には和泉優那。肩は震え、顔は青ざめ、違う違うと否定する。
しかし証拠はここにある。身を守るアリバイもない。鋼の輪が彼女の手に迫った。
その時奴は現れた。
「ウフフフフ……アハハハハ!」
高笑いと共に一人の女が舞い降りる。スラリと細身の身体をくねらせて、密の顎に指を添え、血濡れた手袋で頬をなぞる。
女の名前は御伽里。神出鬼没な殺人鬼。
順子の髪を撒き散らし、順子の名の入ったハンカチを見せびらかし、密の真新しい白いシャツに口づける。
音程の狂った笑い声を残して彼女は去った。
赤いサイレン唸りだし、パトカー走らせてももう手遅れ。
キスマークを残した彼女はまたどこかへ消えてしまった。