間奏~とある青年と母~
「っし」
無事に話せたっ!
青年は一仕事終えたかのような、達成感で胸を一杯にしていた。
他のやつに告白されたことは非常に気に入らなかったが、そのおかげで少し話せたのはラッキーだった。これで明日から普通にはなしかけても、特に不自然でもなんでもない。
家のドアを開け「ただいま」と短くそう言い、リビングのドアを開ける。
コーラを飲もうかと思ったのだ。
「あら、お帰り!」
しかしリビングには先客がいた。
この時間帯はいつも買い物していていないので、少し驚きながら青年は母親にただいまと返す。
母親はいつにもましてテンションが高い気がした。
そのことに少し嫌な予感を抱きながら、冷蔵庫からコーラを取り出し、一口飲ーーー
「ねえ、鈴香ちゃんと付き合い出したの?」
んだ瞬間吹き出した。
慌てて口元を拭い、母親に詰め寄る。
「な、なななな、なに言ってるんだ!?」
「あらすごい動揺」
母親は楽しそうにケラケラと笑った。
そして、期待に満ちた目で息子を見ながら、言葉を続ける。
「だって、さっき一緒に歩いていたじゃないの!」
「あれはたまたまに決まってるだろう!た、たまたま一緒になって…」
「あら、そうなの?」
残念、と母親は露骨に残念そうな顔をした。
「そうよね…考えてみれば、ヘタレのあなたが告白なんてできるわけないわよね」
グサッ
「ただでさえ、普通に話すのもできてない状態だしねぇ」
グサッグサッ
「きっと鈴香ちゃんもただの幼なじみだとしか思ってないしねぇ」
グサッグサッグサッ
「本当に、どうしてあなたはそんなにヘタレなのかしらね…って、どうしたの、なんで部屋の方に行っちゃうの?風斗~?」
お母さん、息子を苛めて楽しいですか…?
青年…風斗は心のそこからそう思いながら、自室へと足を運ぶ。
もしかしたら、最近よく見ている不思議な夢を見るかもしれないが、構わなかった。
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