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恋愛日常!  作者: 雪鈴空斗
第一章 すべての始まり
7/27

いつかのどこかで

「やー、あのね水無月君、そもそも私たちって…」

「好きだよ、冗談とかじゃなくって、真面目に」

「うん、まずは真面目に人の話を聞こうか」


 告白なのか漫才なのか、よく分からなくなってきたよ。

 今だにクラスメイトたちからの視線はすごいし、中には睨み付けてくる人も…っていうか、如月君がすごいショック受けた顔でこっち見てる。なんか今にも自殺しそうな顔だ。なんだ?なにが彼にあんな顔をさせてるんだ?

 って、今はそれよりも、するべきことがあるな、うん。


「あのね水無月君、そもそも私たちって今日初めて会ったんだよね?」

「え…あー、うん、そのはずだよね?」

「いや、私に訊かれても困るんだけど…」

「いやごめん。なんか君とは初めて会った気がしなくってさ…」


 初めて会った気がしない…?


「なんか、すごい懐かしい気がして、それと同時にすごく愛おしく思えるんだ。君を見てると」

「……そ、すか」


 今すごい恥ずかしいことを言われた気がする。

 乙女ゲームキャラ顔負けの甘いこと言われた気がする。


「でも、ごめん、私まだ水無月君のことよく知らないし…えと、ごめんなさい」


 どんなに甘いこと言われたって、初対面の相手とそう簡単と付き合うわけにはいかない。

 だからといって、彼のことをよく知ったあとに告白されても受け入れられないような気がするけど…。

 私が頭を下げると、彼は露骨にがっかりした顔をした。


「そっか…まあ、普通そうだよね…こっちこそごめん、急にそんなことを言って」

「ううん…」

「じゃあ、また明日」

「あ、うんまた明日」


 手を振ると彼は少し考えた末、強気な笑顔を浮かべた。


「あ、でも俺、諦めるつもりはないからね」

「…………………は?」

「じゃ」


 颯爽と去っていきました…すごいことを言って。

 水無月君が去ると、同時に私は何人もの女子に囲まれる。


「ちょっとちょっと、どうして天原さんが水無月君に!?」「っていうか、私と付き合ってくれないかな?」「というか二人に何かあった?」「そういえば今朝二人で見つめあっていたよね!?」

「え、ちょ、女性の方々、落ち着いて…」


 うわわ、すごいよ。なんか皆さん怖いよ。

 どうしよ、なんか当分話してもらえない雰囲気なんだけど!


「おい」

「へ」


 無愛想な声で呼ばれると同時に、腕を掴まれる感触が。

 この声、如月君…?


「ほら、帰るぞ」

「え、あうん了解。あ、じゃあねみんな」


 引きずられるように教室を出る。。

 とりあえず、ポカンとしている女子の方々に手を振っておく。

 き、如月君、いきなりどうしたんだろ…??




「あー、あの、如月、君?そろそろ離して、くれない?」


 帰り道。

 家までの道を半分のところで、私は恐る恐る言ってみると、如月君はハッとした表情で手を離してくれる。…ちょっと強くって痛かったんだよね…。


「…ごめん」

「ううん、いいよ別に跡も残ってないし…。というか、あの…助けて、くれたんだよね?」

「…」


 如月君は無言のままそっぽを向く。

 あ、当たり?当たりだった?


「そ、それより、水無月と何かあったの」

「…そらしたね、話」

「いいから、何かあったのか」

「別に、何もないよ。朝なんか見つめられちゃったくらいで、他は目さえ合ってないし…」

「…そう、か…」


 如月君は何かを考え込むように、顎に手を当てた。

 あ、変わってないな、如月君。何か考えるときに顎に手を当てる癖、昔っからだなぁ。


「…なんだ?」


 私の視線に気づいたらしい如月君が、怪訝な顔でこちらを見ている。


「いやぁ、ただ顎に手を当てる癖、変わってないなって。やっぱ如月君は如月君だね」


 正直に思ったことを答えると、如月君は眉をひそめる。

 そして、短く告げた。


「風斗」

「?」

「お前に如月君って呼ばれるの、なんかやだ。昔のままで、いい」


 言ってから、照れたようにそっぽを向く。

 私はしばしの間ポカンとしてしまう。名前呼び…って…。

 そういえば昔は名前で呼んでたけど、話さなくなってからはいつの間にか苗字呼びになってたんだよなぁ…。名前、か…。


「…ふ、風、斗?」

「…ん」


 なんだか恥ずかしくなって疑問系になってしまった。

 さらに如月…風斗が嬉しそうな笑顔を浮かべるので、さらに恥ずかしさ倍増。

 恥ずかしくなったので、私はとりあえず他の話題の話をする。


「そ、そういえば、こうやって話すのって久々だよねっ」

「え…ああ、そうだな…」


 そう言って、彼はハッとした顔をし顔をサッと赤らめた。

 …どうしたんだろう…?


「風斗?」

「あー…いや、なんでもない。気にするな」

「?そう…?」


 ならいいけど…。

 でもどこか府に落ちず、風斗を見つめていると風斗は居心地悪そうに目線をそらした。

 そして、わざとらしく話題をそらす。


「そういえば、水無月なんか変なこと言ってたな」

「変なこと…?」


 私からするば、彼が言ってたことほとんどが変なことな気がするんだけど…。

 私の思ったことが分かったのか、風斗は苦笑しながら「特に変なことだよ」と付け足してきた。


「あいつ、懐かしいとか初めて会った気がしないって言ってたよな」

「そういえば…」


 そんなことを言ってた気がする…。


「お前、あいつとどこかで会ったことあるのか…?」

「いや、初対面。会ったことないと思うよ。会った記憶ない、し…」


 言っている最中に、ふと感じた違和感。

 …なんだろ…?

 首を傾げていると、風斗はあ、と声を漏らした。

 なんだろう、と思ったけどすぐ分かった。もう家に着いたのだ。


「じゃあここまでだね」

「そう、だな…」


 風斗は名残惜しそうに私を見て、じゃあと言って自分の家の方に歩く。


「また明日!」


 去る背中にそう声をかけて、家の門を押す。

 その直前、風斗を見て入ろうと一瞬だけ見ると…


「っし」


 ガッツポーズしてました。

 なんでだ…?



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