表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛日常!  作者: 雪鈴空斗
第一章 すべての始まり
5/27

間奏~遠き日の夢~

「鈴香ちゃん、今日は、なにして遊ぶ?」

「えっと…鬼役が包丁持って追いかける、まじこわ鬼ごっこ!」

「…ねえ、それごっこじゃすまないよね。というか、危ないよ」

「ちなみに逃げる人は三発たまが入った銃を持つことオッケイ」

「きゃっか!」


 ああ、これは夢だ。

 幼い頃の、まだ彼女を全然意識していない頃の夢。

 彼は、彼女の家の子供部屋のすみっこの方から、第三者として幼き日の自分と彼女の会話を、見て、聞く。


「じゃあ、あーるぴーじーごっこは?」

「あーるぴーじーごっこ?」


 幼い自分が首をかしげると、彼女はお父さんが教えてくれたんだけどね、とあーるぴーじーごっこというのを教えてくれる。


「まず、世界に魔王が復活するの」

「うん、なんかそうだいなものになる予感がするよ。それで?」

「そんで、私たちはその魔王を倒しに行くんだ」

「…つまり、魔王を倒すまでの過程をやるってこと?」

「そ。私は勇敢で勇ましい設定で」


 そんで、と彼女は幼い自分を指さす。


「クールで無口な設定」

「わあ、なんかカッコイイねそれ!」

「でしょ?ちなみに、眼帯つけてんの」

「そうなの?」

「うん、それで時々眼帯つけてる目を押さえて『くっ…おさまれ…!』って言ってるの」

「なんかすごい過去背負ってそうな設定なんだけど!?というか、その役なんかイタよ!?」

「ある村に着いた時にボロボロになった家を見てこう言うの『あの頃は楽しかったな…』って!」

「なんか重い!!」

「それで魔王と戦うときに『両親の仇をとらせてもらう!』って」

「殺されてた!両親魔王に殺されてた!」

「しかし魔王の圧倒的な力を前に、二人は倒れる。そして彼は倒れた私をかばうかのように立ち『お前を…殺させはしないよ』と言って眼帯をはずして魔王を弱体化させる。その隙に私は魔王に止めをさし、彼のもとに駆け寄ると『実はこの力を使うと俺は死ぬんだ…だけどお前は…俺のことなんか気にせずに…生き、ろ、がくり』」

「死んだああぁぁぁ!!!!」

「そのご私は彼の立派なお墓をたて、彼を英雄として祭り、最後は天国の彼へと向けた手紙でしめる」

「なんか感動的だ!いいね、その話!」

「ちなみに手紙の内容は『私…君のことを絶対に忘れないよ。…君が死んでくれたおかげで、姫様は私と結婚してくれたのだからな…クックック」

「感動的なのが台無しだあぁっっ!!え?なにもしかして黒幕!?黒幕とかそういうのだったりするの!?というか男設定だったんだね!!」



 全力でつっこんでいた幼き自分は、ぜえぜえと肩で息をしていた。

 一方彼女は、楽しそうだった。

 何度も頷きながら「これ本にしたら10億万部の売り上げも夢じゃないな。それで、ゆくゆくはゲーム化にアニメ化…」と呟き始める。


「っていうか、鈴香ちゃん、それじゃあごっこの意味ないよ。別のやつにしよう?騎士ごっことか」

「えー、でもそれじゃあまた私がお姫様の役でしょ?助けを待ってるだけじゃつまらない」

「じゃあ雑魚キャラの役もやっていいよ」

「それ妥協したつもりなの?」

「でも鈴香ちゃん、お姫様がいないと騎士はただの劍持ってる人だよ?」

「じゃあ、私が騎士の役する!それで、君がお姫様の役!」

「男が姫役やってどうするの。いいから鈴香ちゃんはお姫様の役やって!僕が必ず、必ず助けるから!」


 彼女は若干不満げだったが、しばらく考えた末わかったと頷いた。

 そしてその代わりと人差し指を幼い自分に向ける。


「絶対に助けに来てよね?中断はなしだよ」

「うん、分かってる!」

「じゃあ、始めよっか、風斗」


 久々に名前を呼ばれた気がした。

 もう数年もまともに会話してないせいか、たとえ夢のなかだとしても、名前を呼ばれるのを嬉しく思った。


 そこで、如月風斗は、目を覚ました。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ