表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛日常!  作者: 雪鈴空斗
第一章 すべての始まり
4/27

気づかない変化

「あの夫婦が国外を出たらしい」

「おおっ!チャンスじゃん。ずっと身を潜めて待ってたかいがあったなぁ」


 その部屋には、二人の男女がいた。

 明かりが一つだけのためか、全体的に薄暗いが二人は特に気にした様子もなく、コーヒーがはいったカップを傾ける。


「まあそう焦るな。何事も焦りは禁物だぞ」


 女が、中性的な口調でそう言う。

 男の方は分かってるよと、陽気に答えた。


「でも、なるべく早くしような。余裕を持ちすぎてゆっくりしてたら、あの夫婦が帰ってきてしまうかもしんねーだろ」

「無論、それを視野にいれてきちんと計画を遂行させるさ」


 ならいいけど。

 男はそう答え、コーヒーを一口飲む。

 が、口に合わなかったのかすぐに顔をしかめて角砂糖を二個ほど、コーヒーの中に入れた。

 スプーンでかき回しながら、男はなにか思い出したようで、そういえばと話を始めた。


「もう一人の騎士が、もうすぐ姫さんとこに行くらしいぞ」

「ああその話か。これで、騎士が姫の周りに二人いることになるのか」


 女は面倒くさそうに顔をしかめた。

 対照的に、男は楽しそうだった。


「すげえよな。何も覚えていないはずなのにさ。この調子だと、他のやつらもあつまってくるんしゃないか?」

「可能性は高いな」


 女は短く返し、だが、と言葉を続ける。


「その前にやることをやればいいだけさ」

「…そうだなー。じゃあ早速始めようぜ?あいつらの力が覚醒しない内に、さ」

「…」


 女は答えず、無言で返す。

 男はそれを肯定と受け取ったらしく、走って部屋を出た。

 一人のこった女は、コーヒーを一口飲み、

 小さく呟く。


「七人の騎士と姫…か」




 放課後。

 舞ちゃんに、私と如月君の仲が何もなかったことを理解させ、帰路につく。

 それにしても、変な勘違いされたなあ。

 幼馴染みだからといって、少女漫画とか、乙女ゲームみたいな関係になるわけないだろうし、そもそも如月君は私のことをなんとも思ってないだろう。

 と、考え事をしながら歩いていると、


「ふぎゃっ」


 転んだ。

 しまった、ここ段差があったんだっけ…。すっかり忘れてたわ。


「てて…」


 膝からは血が出ているが、大したことはなさそうだ。

 家に帰ってばんそうこを貼っとけばなんとかなるだろう。

 それにしても、周りに誰もいなくってよかったわ…。

 フゥ、と軽く息を吐き、立ち上がろうと足に力をいれようとした、次の瞬間。


『何、してるんですか』

「…え?」


 目の前に、一人の青年がいた。

 優しげな顔立ちの青年だ。着ている衣服は中世のヨーロッパで着てるようなものだが、彼に似合っていたからなのか、特に違和感は感じなかった。

 彼は、翡翠色の瞳で、優しく私を見つめていた。

 どことなく、この顔には見覚えがあるような気がする。…気のせいなのかな。


「っていうか、君は…えっと、誰、ですか?」


 あれ、さっきまでこの道誰もいなかったよね…いつの間に…。


『…また、転んだんですか?』


 彼は呆れ気味に、だけど、優しさも感じられるような、そんな口調と声で言った。

 っていうか、また?


『まったく、貴女はもう少し周りに注意をはらったほうがいいですよ。我々がいつもそばにいるとは限らないんですから』

「え、あの…私たち、どこかで会いましたっけ…?というか、あなた誰?」

『ほら、早く立ってください。座り込んだままだとみっともないですよ』


 駄目だ、この人話を聞いてない…。

 スッと私に手を差し出した青年は、どこか呆れたように、けれど優しく微笑む。

 そして、そのまま、


フッ


「!?」


 消えた。

 え、ちょ、なんで!?まさかあの人…幽霊!?

 いや、もしかしたら私が幻を見てたとか?こんなキャラがいたらいいなっていう、そんな隠れた願望が幻として現れて、しかも幻聴までプラスされたとか!?

 …うん、きっとそうだ。夢みたいなものだ。今のは。うん。

 よしっと、ひとまずこの出来事は忘れて、帰ってゲームしよう。うん。それが一番だ。


 私は立ち上がり、早足で家路を急ぐ。







 いつの間にか、膝の怪我が治っていたなんてことに気づかずに。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ