夢と現
…あの、何をしているのですか…?
…あのですね、貴女様は一国の姫だという自覚はあるのですか?
姫である貴女様が、料理なんて…。
…僕に食べてほしかった?って何を言ってるのですか!?
いいですか?僕は貴女様の…いえ、食べたくない訳ではないのですが…。
…ああもう、そんな顔をなさらないでください!分かりました!食べますよ。
………あ。
いえ、ただ…美味しいなと思いまして。
こんな美味しいもの、初めてです。ありがとうございます。
――――様。
「…ちゃん」
「…かちゃん」
「鈴香ちゃん!」
「!」
大声で名を呼ばれ、ハッと目を覚ます。
「おはよ、もう昼休みだよ。いつまで寝てる気?」
「え…もうお昼?」
どうやら爆睡してしまったらしい。
一時間目の途中から記憶がない。
「ほれほれ、早くお昼食べちゃお」
すぐそばには親友の舞ちゃんがいた。
手にはオレンジ色のチェックの袋に包まれていたお弁当箱があった。
「ごめん、ついつい寝てしまって…今急いで準備する!」
慌てて、鞄の中からお弁当箱をだそうとするが…。
「……あれ」
「どったのー?」
ガサゴソと鞄の中を漁るが、ない。
このお昼時、最も必要なものが。
舞ちゃんは私が何を探しているか分かったようで、困り顔で訊いてきた。
「もしかして、忘れた?…お弁当」
「……………………………………みたいッス」
そういえば、今日からお母さんいないからお弁当作ってさえないんだ…。
いつもお母さんが作ってくれていつの間にか鞄の中にあるから、すっかり忘れてたわ…。どうしよう…。
困っていると、横から大袈裟なんじゃないか、と大きな溜め息をつかれる。
「仕方がない、私のお弁当少し分けてあげるよ」
「…舞」
「ん、何?言っておくけど、この借りはいつか必ず返してもらーーーわあっ!?」
彼女が最後まで言い終わらない内に、私は彼女に抱きついた。
「こ、心の友よ一!愛してるぅ!」
「…はいはい、私も愛してるよー」
ポンポンと、私の背中を優しく叩いてくれる彼女。
私は良い友達をもった…と何度も思っていると、目の前に予想外の人物が現れた。
「如月、君?」
目の前にいたのは、如月君立った。
彼は無表情のまま私をじっと見て、そして口を開いた。
「弁当、忘れたのか?」
「うん…そう、だけど」
滅多に話しかけてこないのに、どうしたんだろ急に…。
キョトンとしていると、如月君はどこかホッとしたように、息を吐いた。そして、どこからともなくピンク色の、彼には似合わない色の袋を私に差し出す。
「ん」
心なしか、頬がうっすらと赤い気がする。
どこか恥ずかしそうに、視線をそらしながら彼は、差し出している。
「これ、母さんがお前に…って」
「おばさんが?」
「お前絶対に弁当忘れるだろうからって」
「おばさん…!」
さすがだ。私のことをよく分かってる!
「ありがとう如月君!おばさんにもお礼言っといて」
「ん」
如月君は、短くそう言い、早足でこの場を去っていく。
「ようしっ!昼食確保!そんなわけで、舞ちゃん、せっかくだけど分けてくれなくても大丈夫だ…よ?」
振り向くと、舞ちゃんは俯いてワナワナと震えていたら。
「ふ…」
「ふ?」
聞き返すと舞ちゃんは勢いよく顔を上げ、教室どころか学校中に響くんじゃないかと思うほどの大声を出す。
「恋愛フラグたっとるーーーっっ!!!!?」
誤解をとくのが大変でした。
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