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恋愛日常!  作者: 雪鈴空斗
第一章 すべての始まり
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一人暮らし第一日目の朝

  何を泣いているのですか?

  また、ですか…まったく。

  ほら、泣き止んでください。僕がなんとかしますから。

  な!べ、別に、貴女様限定ですし…。

  …別に、なんでもありません。ほら、早く行きましょう。

  ――――様。



「………」


 朝。

 目覚ましのアラームを止めてゆっくりと起き上がる。

 何か夢を見ていたような気がするんだけど…。気のせいか。心に残ってないってことは、そんなに面白くない夢だったということだろう。

 大きく伸びをして、ベッドから出る。学校の制服に着替えて、部屋のカーテンを開ける。

 そして、朝食を食べに下の居間に行く。


「お母さん、朝ごは…ん…あれ?」


 誰もいない。

 あ、そうか、世界一周旅行に行くって昨日言ってたっけ。出るの早いなあ。

 テーブルの上を見ると、手紙とラップされた朝食があった。手紙には「ラブラブしてきます」と書かれていた。

 相変わらずの万年恋人夫婦だ…。

 小さく笑いながら、テレビをつけ、朝食を食べる。食べ終わったら洗い場まで持って行き、歯を磨く。

 磨き終わると、まだ出るには少し早い時間だったので、鞄とゲーム機を持ち居間に来て、数分ほどの時間しかないがゲームをプレイする。

 これが、いつもの朝だ。

 といっても、いつもなら両親が「あのな、人間って頑張ればなんでもできると思うんだ。だからかめはめ波だってやればできると思うんだ」「そうね、お父さん頑張って!じゃあ私も頑張って高校時代の制服を着て町に出てナンパでも待ってくるわ!」と言ってお母さんが高校時代の制服を探してたり、お父さんが庭に出てかめはめ波って小さな声で言って、近所の人が通ったらラジオ体操してる振りをしてたりするのだが…。

 今日は誰もいないせいで、すごく静かだ。

 たまにはこういう朝もいいなと思いながら、鞄を持って家を出る。


「…平和だ」


 よくよく考えてみると、あの両親がいると結構平和じゃなかったような気がする。

 お菓子の家を作りたいと言ってお金を無駄遣いしようとしたお父さんを止めたり、温泉掘ってくるって言ったお母さんを止めたり、なぜかヤクザに追われてしまったお父さんをお母さんが助けたり、家族でババ抜きした時一人負けたお父さんに罰ゲームとして女装させて町内をゆっくりと歩かせたりして、誰にも男だと気づかれなかったのに安堵したからなのかショックだったのかあるいは両方だったのかで泣いたお父さんを慰めたりと…。

 …うちって、やっぱり変わってるなぁ…。


「っと」


 考え事をしいると、誰かとぶつかりそうになる。

 ごめんなさい、と呟きながら視線を上に上げると、驚きの人物がそこにいた。


「…あ…」


 女性からすればうらやましくて仕方がないだろうサラサラの黒髪に、かすかに驚きの色を映す切れ長の瞳。高い身長に、乙女ゲームでどういった人がカッコイイのかと感覚が鈍った私でもハッキリ分かるほどの整った顔。

 要するに、芸能界でも食っていけるんじゃないかと思うほどの美青年だ。


「き、如月君、おはよう」


 如月風斗。

 幼稚園の頃から高校までずっと一緒の、うちから徒歩で三分の所に住んでいる、いわゆる、幼馴染という関係の青年。

 といっても、もう五年も口をきいていないが。

 ちなみに、最後の会話なんて「そのプリント回収だよ」「ん」というなんとも短いものだ。

 如月君に挨拶すると、彼は視線を彷徨わせ、軽く頷いてから高校の方へ早足で歩いていく。

 …噂じゃクールなところとあの容姿が合わさって、女子にモテモテらしい。

 今の部分を見ると、クールというより無愛想っていうほうが正しいような気がするけど…。昔はそうじゃなかったんだけどなぁ。


「あ、見て見て、如月君よ」

「カッコイイわよねぇ…」

「私もう年下でもよくなってきちゃったわ」


 先輩方からの人気もかなりのものらしい。

 これで私と如月君の仲がまあまあよかったら、恋愛漫画でも始まりそうだ。


 正門を通り、下駄箱まで行く。

 如月君とはクラスが一緒なため、下駄箱の位置も同じだ。

 さて、と、さっさと上履きに履き替えて教室行くか。音楽聴きたいし。

 そう思いながら上履きを取り出そうとすると、


ドサドサドサッ


 横から何か落ちる音がした。

 見ると、大量のラブレター(らしきもの)が下駄箱の中だけでは納まりきれなかったようで、あふれ出て如月君の足元に小さな山ができていた。


「………」


 入学して二週間経つ。

 彼に惚れて、ラブレターを送ろうと乙女たちが決意するのに、十分時間はあった。

 週明けの月曜日だったし、手紙を書く時間もたっぷりあっただろう。

 たまたま、手紙が出した日がみんな同じだったのだろう。

 …というか、この時代に下駄箱にラブレターを入れる人っていたんだね。まあたしかに如月君のアドレス知っている人ってあまりいないだろうし、それくらいの方法しかなかったんだろうけど…。

 如月君は呆然としているのか、無表情なため分からないがラブレターを見つめたまま動かない。

 ………仕方がない。


「ほれ」


ラブレターの山を拾い、彼に渡す。

如月君は戸惑いながらそれを受け取る。


「鞄の中にでも入れときなよ」

「…ああ」


彼は頷き、鞄の中に入れ始める。

その間に私は上履きを履いて、さっさと音楽を聴くため教室に向かう。

さて、と、さっさと令一のキャラソンでも聴こうっと。

というか、眠いわ…授業中寝ちゃおうかな。ばれないように。

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