へんざい組:【遍在】前後のツーショット #誰まほ!
根津ちゃんへ
許せ♡
視点:フォトカちゃん
https://iachara.com/view/14752550
聞き役:任意の後輩ちゃん(未制作)
ヒマ、っすか。唐突っすね。
え、あ、当方話題を提供しろって言われてるんすか?
もー、ワガママな後輩ちゃんっすねぇ。
ん〜いい写真あったかな。
あ、覗き込むんじゃないっすよ! 見たらまずい呪いの写真とかあるんすよっ……てホントに見つけるアホがキミっすよねぇ……。
……ちょっと待ってね〜今日のシフトは……問題ナシ、っすね。
は〜。んじゃ、せいぜい呪われてもらいましょうか。
これはそこそこ前の話っす。当方が魔法少女になってからちょっとして、可愛い後輩ができたくらいの頃っすね。キミじゃないっすよ? もちろんキミの見つけたこの子らっす。
いやホンっトに可愛い子たちっすよね。キミが思わず反応するくらいには。二人で一人みたいにずっとくっついてて、二人だけで笑いあってて。
はいな、ヒトエちゃんともう一人、っす。
もう一人、知らないでしょ。
あ、亡くなった訳じゃないっすよ? ちゃあんと今もウチにいるっす。
お、鋭いっすね。もう一人の【へんざい】ちゃん、アマネちゃんっす。そう、【遍在】ちゃんってめっっちゃカワイイんすよ〜! データはあげないっすからね? 【偏在】ちゃんから止められてるんで。
呼び方が変? いや噂話してる時に名前そのもの出すの気まずいじゃないっすか。普段は普通に呼んでるっすよ?
で、なんでこんなのが撮れたかって話なんすけど、コレ、なんと魔法少女課加入初日なんすよね。まだ不安定だったからなのかなんなのか、普通に人間体で動いてたんすよ。おかげでド緊張してる姿あり【遍在】ちゃんが見れたってわけっす。【偏在】ちゃんの腕ずっと握ってたっすけどね。
【遍在】ちゃんが周囲の人を意識してない時、いっちばんイイ笑顔のタイミングでバッチリ激写できたんす!
ふっふっふ、羨ましいでしょ〜。
ということでお望みの話題提供兼写真自慢はおしまいっす。【遍在】ちゃんの素顔を拝めただけで感謝するっすよ〜。
それだけ? って……じゅ〜ぶん呪いっすよ。【へんざい】ちゃんズの耳に入ったら当方もキミもタダじゃ済まないっすから。当方とキミの仲だから教えてあげたんす。他に言えないヒミツを一緒に抱えて苦しんでくださいっす。
じゃ、当方は撮影行くんでこれで!
──────────
ニコリと笑って魔法少女課を後にする。先程戦闘が発生したという連絡が入っていた。というのも、フォトカにはその役割から自身が関係せずとも良い戦闘の連絡も全て飛んでくるようになっている。
……交戦がいいことかは兎も角、今回は逃げられてセーフっすね〜。写真見られたとはいえ、ホントのこと言う訳にもいかなかったっすし。
フォトカの話には嘘があった。写真があるからにはその写真を取れたことは本当。そしてそのもう一人がアマネであることも本当だ。ヒトエがあんな笑顔を向ける相手はアマネしかいないし、ヒトエのバディがアマネ以外だったことはない。アマネが当初は人間の姿で行動していたことも本当だ。
ただ、今の姿になった理由が違うだけである。
あんな惨劇をあの後輩が知る必要はまだないと、そう思う。
考えつつ、配置につく。
……問題は発生して無さそう、安定してるっすね。これなら援護射撃の方が役に立つっす。
あの当時は持っていなかった対物ライフル。魔法など一切関係なく、ただ目が良くて交戦場所の周りをちょこまかしているからと得た純粋な暴力。
あの時これがあったら、もしくはもっと魔法を使えていれば。今でもあの可愛い子は笑顔を見せてくれていたのかも、なんて考えが未だに頭をよぎる。
よくある酷い戦闘だった。
新人同士の危なっかしいバディと、その補助のための中堅バディ。敵は二体。魔法少女が四人もいれば問題ないと判断することになっている戦闘。
当時、援助方法を持たなかった撮影担当の目の前で、魔法少女が倒れていった。ただそれだけである。
少し違ったのは、ひよっこ撮影担当にとってそんな地獄は初めてだったことと、慣れない魔法少女が上手く暴走してしまったことくらいか。
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新人バディの片割れは、もう一人の腕にしがみついているままに戦闘態勢に入っていた。しがみついているのがアマネ、空いている手に剣を持っているのがヒトエだった。後から知ったことだが、当時のアマネの魔法は、自身及び自身と常に接触している相手を援助するものだったらしい。
少々動きづらそうなものだが、一切のズレなく二人は一人の魔法少女のように動く。
二人で一人、だとしても被弾のしやすさは当たり前のように二人分。回避行動は通常よりも大げさなものとなる。
大きな動きによる消耗もあり、ついには避けきれない攻撃が来る。
それをカバーできるように組まれていた中堅バディが二人を庇う。
上手く行っていた。独り立ちは先のことになると思えたが、他のバディと動く分には十分な働きだ。
数少ない後輩魔法少女の頑張りに、手に汗滲ませながらフォトカはシャッターを切る。
脅威となるのが中堅バディだと気づいたか、敵がそちらを集中的に狙い始めた。流れが変わったのはそこからだった。
二体同時に狙ってくるとなると、余裕は無くなってくる。中堅二人はお互いをフォローしながら動けているものの、疲れが見え始める。新人組は二人で動いているせいか、庇うという行為に慣れていないようだった。先輩二人をフォローしきれず、戦況に置いていかれる。
そんな折。誰も庇えないタイミングでの、直撃。中堅バディの片割れが吹き飛ぶ。衝撃による変身解除。二人の連携を以て拮抗していた状況があちらに傾く。
吹き飛んだ先、岩壁に叩きつけられた魔法少女はそのまま崖崩れに埋もれていった。再変身が間に合ったのかも分からず、片割れの意識は否応なくそちらに向く。それを逃す化物ではない。魔法少女の中心をその牙が穿いた。即座に再変身。もうこれ以上はくらえない。血の気の引いた顔で、化物と相対している。
「っせ、ん、ぱい……! 私の力、使ってください!」
か細くも、確かな声で。
ここまで一度も声を発さず、ただ親友と動いていただけの彼女が動く。
化物から庇うように目の前に入り込み、先輩魔法少女の腕に抱き着く。
「ご、ごめんなさい! 私の魔法、接触してる人にしか使えないんです……! 動きづらいと思うんですけどっ、あの、ここからは、私が守りますから……!」
そう言いながら回避行動に移ろうとして、やはり動きはぎこちなく、避けきることは叶わなかった。
宣言の通り、避けきれなかったそれは全てアマネが受けている。
「ごめんなさいぃ……! 次は右に動きますっ」
なにかが、おかしい。
状況にのめり込み、思わず我を忘れていた視点人物は、ようやく違和感に気づく。
でも、この違和感はなんっすか……?
目を瞬かせて考えた。
視点人物として、何たる体たらくか。フォトカにはまだ分かっていなかった。
目を閉じていた一瞬で、既に事態は決していた。
バフの無くなった新人ちゃんが吶喊。力強さも素早さも変化した状態では身体が思い通りに動くわけはなく、反撃に合う。戦闘領域の端、最早領域外と見做す場所まで吹き飛ばされた。
それによって硬直したアマネが先輩魔法少女の回避を妨げた。
それが示す結果、すなわちフォトカの眼前に広がる景色は──紛れもなく、『全滅』であった。
……え。
全滅。全滅……? こんな時ってどうするんすか。警察、じゃない。そんなんじゃなくて、座学、いやあれは広報部の話で、だから助けを呼ぶんすよ!
通信、なんで繋がらないんすか?!
「……うぅ、ごめ、ごめんなさいぃ」
声がした。
いきてる。生きてる。
……あ、再変身、っすか。
良かった。
それなら、みんなまだ。
「ひ、ひとりで何もできないどころか、皆さんの迷惑になるばかりなんてぇ……とんだ役立たず…………」
一人ゆらりと立ち上がる彼女は、立ち上がるのが遅れている彼女達を振り向いて嘆く。
か細い声で。弱々しく嘆く彼女の声が、紛うことなく視点人物まで届いていた。
今まで視点人物が聞いてきた戦場の音は、化け物の唸り声と硬質な戦闘音だけだった。
それなのに、今にも消え入りそうなこの声はこんなにもクリアに届く。
「もぅ、空気の方がまし、ですよねぇ……」
「【雲散霧」
だから反応できた。
消えゆこうとする彼女を、ここに引き止めるための一手。
本人すら自覚なく、ただフォトカがかくあれかしと望んだ結果。
「【時間よ止まれ】ぇっ!!」
カシャリ。
戦場の停止。
化け物も、アマネも魔法少女も砂埃も。全てが静止する。
止まった瞬間走る。
少しでも彼女にこちらの声が届くように。
「アマネさんっ! 消えちゃ、ダメっす!
あなたの声は、あなたの声だけは、聞こえたんっす! あなたの勇気、確かに当方まで届きました!! 戦場にすら出てない当方より役たたずなんて、絶対そんな訳ないっすからっ」
フォトカにとって初めての戦闘領域内。
時間が動き始める。
詠唱を止めた彼女が言葉のする方へと振り向く。
「フォトカさん、わた」
……目の前の化け物の存在を忘れて。
飛び起きた先輩魔法少女が即座に庇う。
ぐちゃり、と嫌な音がした。赤い飛沫がアマネに降りかかる。
「……っひ、ひゃぁぁあ!! ごめ、ごめんなさっ、せんぱい、だめ」
「あと、たのんだ」
それだけ言って、先輩は膝から頽れる。
かひゅっと喉が鳴るのが聞こえた。自分のせいだ。アマネが自爆しないようにすることだけを考えた、当方が浅慮だったから。
「……ッ、まだ、まだっす。治療、と時間を止めて遅らせればっ」
「フォトカさん……! お願いします、お願いしますっ」
縋るような声の後、怜凛な声が響く。
頼まれたからには、今度こそ化け物の存在は忘れない。
「こちらは、私がなんとかしますっ。もう消えたりなんてしません」
「【八面玲瓏】」
雲散霧消するように姿が消える。しかしそれは無為な【雲散霧消】ではなく、〈環境設定〉に至るための。
「フォトカさん、先輩と一緒に退避してください。こちらは多分大丈夫です。ヒトエちゃんもいますから」
「りょ、うかいっす」
写真を撮って、治療を試みていたフォトカは、その死体と共に逃げ出す。人ひとり抱えて動くなど簡単では無い。アマネの浮かんだ腕が後ろの攻撃を受けていた。
受けてもらっている隙に更に走って領域外へ向かう。後ろで【不穏】な雰囲気が出ているのを感じた。
「ヒトエちゃん、おきて」
領域外に出る直前、頭に直接響くように言葉が伝わってきた。
安全圏に遺体を置いて、更に遠くの通信可能地域を目指す。
……もう、無理だったなんて、言えないっす。
再変身後に消耗戦を続けて、吹き飛ばされて、直撃を庇うなんて、助かるわけがないのだった。最後まで動けたのが不思議なくらいだ。戦場とは、そういう場所だったのだと今更思う。
パニックになっているわけにはいかないのだ。
「こちら撮影担当フォトカっす。戦闘1名死亡1名脱落。1名が固有魔法を使用してると思うっす。依然戦闘中、応援要請するっす」
「了解した。すぐ向かわせよう」
これで、なんとか。
全身の力が抜けそうになる。まだ向こうで戦闘は続いているのだ、と自身の身体を叱咤してまた走る。今の自分なら、援護くらいはできるかもしれない。
戻った先では、ヒトエが一人で戦っていた。否、アマネが見えないだけで二人で戦っているのだろう。ヒトエの動きはアマネの援護魔法を受けているそれだった。
その上全身全てが使えるようになり、戦闘当初よりも更に動きが良くなっている。
二体いた化物は残り1体になっていた。二体とも少しずつ消耗はしていた。ようやくその蓄積が実を結んだようだ。
……あ、【シャッターチャンス】。
カシャリ。
カメラマンとしての感性が思わずシャッターを切らせた。それは魔法となり、被写体の活躍を華々しく飾った。
敵がボロボロと頽れていく。
応援が来るまでもなかったらしい。
力尽きたのか、ヒトエはふらりと地面に伏した。
……あれ? ヒトエさんに無理させたのってもしかして当方っすか?
魔法を使ったという感覚だけがある今、ヒトエにどれ程の負担を与えたのかが全く分からない。
冷や汗が背筋を伝うのを感じる。
すぐさま駆け寄れば、少なくとも呼吸をしていることは分かった。多分疲れているだけ……だと思いたい。
「お疲れ様、ヒトエちゃん」
頭に響くような声がする。
「アマネさんっすよね、えっと、戦闘は終わったみたいっすね。お疲れ様っす。なら……」
魔法を解除すればいい。
なぜ姿を消したままなのか。
固有魔法がどんなものかくらい知っている。嫌な予感しかしない。ダメだ、そんなのを彼女が背負うなんて、
「ありがとうございましたフォトカさん。でも、私はこのままみたいです」
そんなの、報われないじゃないか。
「そんな顔しないでください。私はここにいます。きっと消えるはずだったのに、まだヒトエちゃんといられます」
「でもっ」
「私はこれで満足なんです」
もう微笑んですらくれない。鈴のような声が頭に響く。
当方が、最初から魔法を使えてたら。中堅組が倒れる前に介入できていたら。まともな攻撃方法を持つ魔法少女だったら。
……こんなことには、なっていなかったというのに!
「本当にフォトカさんのせいじゃないんですよ?」
「……」
「じゃあひとつお願いを聞いてくれませんか。それでおあいこ? みたいな……」
「当方でよければ、いくらでも」
「私とヒトエちゃんのツーショット、ください。もうきっと撮れないので」
何回か隠し撮りしてましたよね、と言葉が続けられる。
「うぇっ、なんで知って……と、了解っす。お易い御用っすよ。
……隠し撮りしてたのは申し訳ないっす」
「ふふ、もう機会も無いので大丈夫です。実は写真とか人前に出るのとかって苦手なんです」
「うぅ、なおさらごめんなさいっす」
「そういうことじゃなくてですね、今すっごく気が楽なんです。ヒトエちゃん以外とこんなに話せるの、初めて」
そういえば、か細い上擦った話し方ではなくなっている。この鈴のような声が本来の声だったのだろう。
「これからもよろしくお願いしますね、フォトカさん」
───────────
あの後、後援部に後を任せて魔法少女課に戻った。ヒトエは医療部に回されて、フォトカとアマネは高畑に事情聴取されることとなった。亡くなった先輩魔法少女のバディは瓦礫の中で潰れていたのが見つかったことを後に知った。
あんな戦闘はもうしないしさせない。
大丈夫、今の当方には力があるんすから。
カメラの準備が済む。
ピントを合わせる。シャッターを切る。
戦闘中の魔法少女はフォトカの援助を受けたことがある二人だった。化け物の意識が逸れたその一瞬を逃さない。
普通の戦闘だった。
何事もなく魔法少女課に戻る。シフトが交代したようで、既に後輩ちゃんはいない。代わりのようにヒトエがいた。
頭に声が響く。
「フォトカさん! お疲れ様です」
「お疲れ様っすよ〜アマネさんにヒトエさん」
「お疲れ様です」
彼女達が未だに生きていてくれていることをフォトカは嬉しく思う。
ヒトエがいれば一時的な実体化が可能だと知った時は本当に嬉しかった。
ひとつ、決めていることがある。
全部全部、もし終わることがあれば、この二人に自分の固有魔法を使うのだ。
……もう一回、ツーショットを撮らせてもらうっす。写真は苦手かもしれないっすけど、今度は隠し撮りでもないちゃんとした写真を。
なんか二人死んじゃった……
〇固有魔法について
固有魔法(偽):【雲散霧消】
効果:自身が身体的に消滅する。肉体的ロスト。
代償:???
特記:「消えたい」という願いだけを以て魔法少女アマネが発動しようとした魔法。おそらく発動しない。彼女の固有魔法はこれではない。
固有魔法:【八面玲瓏】
効果:自身の基本形態を永続的に【遍在】状態とする。
代償:コスト無しに実体化できない。
特記:魔法少女アマネが発動した固有魔法。当該魔法少女は現在も【遍在】状態で活動中。
??:https://ncode.syosetu.com/n8372mo/
固有魔法:【時間よ止まれ、汝は美しい】
効果:任意数の全身を写した被写体に自身の〈幸運〉の値を全て譲渡する。分配は自身で選択可能。100を超えた場合、消費可能な〈幸運〉として対象に付与される。これは〈幸運〉消費ルールが適応されていない状況下でも使用可能とする。
代償:魂の消費。永続的ロスト。
特記:魔法少女フォトカの固有魔法。




