表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
盾の間違った使い方~工具資材縛りの異世界ショッピングにてDIYで生き抜きます!ダンジョンボス部屋から始まるハードモード生活~  作者: KeyBow


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/32

第21話  DIYアーマー計画(安物の悲哀)

 快適な朝食で(炭水化物!)心身ともに充実した俺は、すぐさま次の作業に取り掛かった。

 今日やることは決まっている。「鎧作り」だ。

 昨日のホーンラビットとの戦闘で、防具の重要性は骨身に染みた。すねと太ももはプロテクターで守ったが、急所である胴体がガラ空きだ。

 俺はノートに書き出した計画案を眺め、まずは主となる素材の選定から始めた。

【胸当て素材候補】

 A. 『合成ゴムマット(厚さ5mm)』:100 PT

 B. 『鉄板(厚さ1.6mm)』:300 PT

 ゴムは衝撃吸収に優れているが、突き刺す攻撃には弱いかもしれない。これより厚いものは、重すぎて実用性がなくなる。鉄は硬いが、重く、加工が難しい。

 俺はまず、解体作業の反省から、新たな刃物を購入することにした。

 当然、「武器」なんてカテゴリはない。探すのは「実用品」だ。

 「キャンプ・アウトドア」カテゴリを見る。薪割り(バトニング)に使うための、極厚のナイフや斧が並んでいる。

 俺が選んだのはこれだ。

『薪割り用 ブッシュクラフトナイフ(フルタング・極厚刃)』:4,000 PT

 刃厚が5mmもある鉄の塊だ。

 本来は薪を割るための道具だが、これならハンマーで叩いても折れないし、岩のように頑丈だ。実質的な武器として十分通用する。

 4,000ポイントは痛い出費だが、命には代えられない。

 実験開始。

 届いたばかりのゴムマットを、カマドの壁に立てかける。

 俺は数メートル離れ、真新しいナイフを、えい、と投げてみた。

 ブスリ。

 厚みのある刃が、音もなくゴムマットを貫通し、深々と突き刺さった。

「……ダメだな」

 5mmのゴムなど、紙同然か。ホーンラビットの角なら、もっと容易く貫くだろう。

 次に、鉄板を同じように立てかける。同じように、ナイフを投げる。

 カキン!

 甲高い音を立てて、ナイフは弾かれた。鉄板には小さな傷がついた程度だ。

「……まあ、そうだよな」

 結果は明白だった。防御力は、圧倒的に鉄板だ。

 俺は胸当ての主素材を鉄板に決定した。

 次に、防御範囲の拡大。

 一枚の板で胸だけ守っても、脇腹をやられたら終わりだ。可動域を確保しつつ、防御力を上げたい。

 俺は「荷役・運搬用品」カテゴリから『吊り下げ用スチールチェーン(10m)』を購入した。これを脇腹に垂らせば、簡易的な鎖帷子くさりかたびらになるはずだ。

 チェーンを切断するための『ボルトクリッパー』と、固定用の『革紐』もカートに入れる。

 材料は揃った。次は、最大の難関である「加工」だ。

 鉄板に、鎖と革紐を通すための穴を開けなければならない。相手は1.6mmの鉄板だ。キリや釘で開く相手ではない。

 俺はショッピング画面の「電動工具」カテゴリを開いた。

 狙うは、信頼と実績のプロ用ブランド。

 現場の職人が愛用する、あの独特のティールブルー(青緑色)のボディ。

 『MAKOTAマコタ』だ。

 ハイパワー、高耐久、そして急速充電。おとこの憧れ。

 価格は25,000ポイント。高いが、これからの長いサバイバルを考えれば安い投資だ。

 俺は意気揚々と、[カートに入れる] ボタンをタップした。

 ブブーッ。

 無機質な拒絶音が響き、赤い警告ウィンドウがポップアップした。

『※現在のランクでは「プロ用・業務用機材」は未開放ロックのため購入できません』

「……はぁぁぁっ!?」

 俺は素っ頓狂な声を上げた。

 嘘だろ。ここでも制限かよ!

 商品は表示されているのに、システムが「お前にはまだ早い」と弾くのだ。

 どうやら俺のランクでは、ホームセンターの中でも「家庭用(DIY用)」のグレードまでしか解放されていないらしい。

「くそっ、マコタはお預けかよ!」

 文句を言ってもロックは解除されない。

 俺は渋々、検索条件を「価格の安い順」に並べ替えた。

 トップに出てきたのは、聞いたこともないメーカーの、安っぽいオレンジ色のドリルだった。

『家庭用 充電式ドリルドライバー(バッテリー1個・ACアダプター付)』:3,980 PT

 スペックを見る。トルク(回転力)もバッテリー容量も、マコタの半分以下。

 付属品には「ACアダプター」とある。本体のジャックに直接挿して充電するタイプだ。

「……ACアダプター、か」

 俺はため息をついた。

 付属はしている。だが、今の俺には「充電器」としての意味がない。

 この洞窟にコンセント(商用電源)なんて気の利いたものはないし、俺はまだ『ポータブル電源』や『発電機』を買っていないからだ。

 つまり、一度バッテリーが切れたら、再充電は不可能。

 頼みの綱は、メーカーが出荷時に行う『品質保持のための充電』のみだ。

 リチウムイオン電池は、空っぽ(過放電)の状態で放置すると著しく劣化し、使い物にならなくなる。

 だから通常、メーカーは在庫保管中にバッテリーが死なないよう、ある程度の充電――一般的には60~90%程度を充電して出荷するはずだ。

「頼む……半分とかやめてくれよ。せめて7割、定石通り入っていてくれ……!」

 安物メーカーだから管理が適当で、放電しきっている可能性もある。俺は祈るような気持ちでカートに入れた。

「……予備も買っておくか。あと、肝心の『刃』もな」

 俺は関連商品にあった『専用スペアバッテリーパック』(1,000 PT)を追加する。

 そして、工具コーナーから『鉄工用ドリルビットセット(チタンコーティング)』を選択した。安物のドリルに付属している木工用の刃では、鉄板に穴を開ける前に折れるのがオチだ。ここはケチれない。

「……ポチっとな」

 ドサリと荷物が届く。

 俺は緊張した手つきで、届いたばかりの安物ドリルに、付属のバッテリーを装着した。

 トリガーを引いてみる。

 ウィ……ン……。

 どこか頼りない、弱々しい回転音が響く。軸も少しブレている気がする。

 俺は恐る恐る、バッテリー残量のインジケーターを見た。

 3つの目盛りのうち、2つが点灯している。

「……7割、か」

 よかった。セオリー通りだ。このメーカー、品質管理はまともらしい。

 だが、安堵と同時に、厳しい現実も突きつけられる。

 「たった7割しかない」のだ。

 手元には、今装着している「本体付属」と、追加で買った「予備」の計2個。

 どちらも7割程度の残量だとすれば、実質バッテリー1.4個分でこの作業をやり切らなければならない。

「……念のため、もう一個買っておくか」

 保険だ。途中で電気が尽きたら、全てが水の泡になる。

 俺は再びショッピング画面を開き、さっきの『専用スペアバッテリーパック』をカートに入れようとした。

 ブブーッ。

 無機質な拒絶音が響き、赤い警告ウィンドウがポップアップした。

『在庫切れ(Sold Out)』

『※在庫数不足のため、購入できません』

「……は?」

 画面を更新すると、商品ページには無情な【Sold Out】の文字。

 まさか、さっき俺が買ったのが、ラスイチ(最後の一つ)だったのか?

 こんな無名メーカーの、いつ廃盤になっても不思議じゃない製品の在庫……再入荷なんて期待できない。

「……マジかよ」

 背筋が凍りついた。

 つまり、俺の手持ちは、この「7割残量のバッテリー」がたったの2個。

 これだけで、分厚い鉄板との勝負を決めなければならない。

 失敗は許されない。途中でバッテリーが尽きれば、ドリルはただの文鎮と化し、鎧は完成せず、俺は裸同然で戦うことになる。

「ふう、やるしかないな」

 俺は覚悟を決めて、鉄板に向き直った。

 総力戦だ。俺の知識と多少の無理にて、残り少ないバッテリーの、ギリギリの戦いが始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ