その３ 【野生のオスに番号はない】
「Talen-haren!」
『早くしなさい！』
ズルッ
「おわぁ！」
無情にも剝がされたオレのパンツ！
その瞬間、少しだけ膨らんだオレのショートソード（中）がこの世界に晒される！
「Vie-ra… viera-lu? Siron… melun-nir… no-len…」
『やっぱり野生のオス？…番号が…ないわ……』
心なしか、彼女の声がわずかに震えていた。
「野生のオスってなんだよ！オレは普通の男だ！！」
「Lu… séra-nir? Tira… nira-sor-el-ri?」
『何これ？変なもん付いてるわよ？』
彼女は恐る恐る手を伸ばし、オレのショートソード（中の大）を掴む。
「変なもんじゃねぇ!」
オレは彼女の手を振り払う！
粗末なものだと言われなかったのがせめてもの救いだが、掴まれるとは思わんかった！
「Méra-thal… siren-lu-ri?」
………………
「何言ってるのか分からん」
「…haa’len」
ため息をつくと、めんどくさそうにオレの手を掴む。
「Méra-thal… siren-lu-ri?」
『やっぱり記憶改ざんされてるんじゃない？』
触れないと意思疎通ができないのは確かに面倒だな。
ただ現時点でそれしか方法が無い、諦めろ。
それに記憶改ざんされてたとしたら、オレに何を聞いても無駄だろ?
そう心の中で呟いてみる。
「Siron… méra-len.」
『確かにそうよね』
「Lu… siren-vel… Sira-nor… melun-nir, nira-talen… nira-sor-vel-ri?」
『でも困ったわ。番号が無いって事は届け出ることも、売りに行くこともできないって事よね？』
…………
少しだけ分かったことがある。
おそらく、触れていると彼女のしゃべっている言葉は理解できるが、心の声は聞こえない。
一方オレの方は声に出さなくても通じるが、思ったことが全て駄々洩れになる。
先ほどから豊満な二つの果実から目が離せなくなっているのも、きっとバレている。
「Siron… talen-lu.」
『バレてるわよ。』
「Nira-sol méren-ri? Taren… sol-vel lu?」
『見てて楽しい？重くて邪魔なだけよ？』
やはりバレているか！
「Siron… viera-melun… nira-valen-ri… sorin-lu…」
『そういえばオスには無いのよね？うらやましい……。』
ずっと見ていても怒られず犯罪者扱いもされないのはすばらしい！
だがなぜだろう、なにか物足りないし、心の奥が少しだけ痛い……
「Viera-lu… melun-nir… tal-en… soren-lu…?」
『野生のオスなんて取り上げられるだけで何の得もないし、このままうちで使っちゃうか……』
「Siren… talen-nor… lu-har-el.」
『役に立たないなら捨てちゃえばいいし。』
なんか物騒なこと言ってるな、犬や猫でも捨てるとsnsに晒されて袋叩きにされるぞ！
「Lu… siron-har…! Talen… val-en… lu-ran.」
『とりあえず休憩終わり！今度は荷台じゃなく後ろに乗って。』
よく見ればタイヤのないバイクのような乗り物？がある。
オレが座っているこの四角い箱が荷台なのかな？
「Val-en… soren-lu… méra-thal… lu-har-el…! Talen… lu-ran… siron-lu….」
『荷台の方が楽かもしれないけど、私が疲れちゃうから後ろに乗るのよ』
オレは脱ぎ散らかした服を着る。
言ってることがちょっと理解できんが、移動するから後ろに乗れって事だよな？
売るとか捨てるとか物騒なことを言ってたけど、詳しいことは移動しながら聞いてみるか。
それに邪なことを考えても反応がないところを見ると、やはり直接触れていなければ伝わらないようだ。
バイクのような乗り物の後ろに乗り、彼女の腰に腕を回す。
随分久しぶりに人の温かさを感じる、いい匂いだし柔らかくて気持ちいい！
ドュフフ。
「Tira! Méra-sen… nira-vélen-ri!!」
『ちょっと！、気持ち悪いんですけど！』
「Siron-lu… thal-ren méra-sor-el… nira-velen… véra-lu-ri!」
『運転しにくいから、あまりベタベタくっつかない！』
確かにオレは不細工だが、気持ち悪いとはなんだコノヤロー！
彼女の腰に回した腕を解き、今度は二つの果実を鷲掴みにしてやる。
「Tira! Gura-run… mara-lu… nira-talun… tala-wael-haren!」
『こら！強く握ると痛いし、邪魔だから腰の辺りを掴みなさい！』
……触るなとか言わないのか。
「Siron-tha… nira-len vel-ri? Méra-lu… siren-vel… nira-sol talen-ri… vie-ra mirun. Val-en nor… thal-en nira-sol… viera-thel melun-ri, noren-tha séra-lu.」
『さっきから言ってるでしょ？これは気まぐれで作られた、ただの肉の塊よ？旧世紀の頃は何か大切な役目が有ったみたいだけどね』
「旧世紀？」
「Valen-tha… siren-lu méra-sel viera-nor thal-en. Siron… nira-talen-ri?』
『お母様達が生まれる遥か前の時代。それも忘れちゃった？』
「初耳だ」
「Méra… viera-lu nira-sol… siren-tha noren-len.」
『まあオスには不要な知識だからね』
この娘の中で、オレはどんな扱いになってるんだ？
気持ち悪がられてはいるが、恐いとは思われて無さそうだし……
「Lu… nira-vorn-lu… tala-wael-haren… siron-lu.」
『それじゃあ、振り落とされないようしっかり捕まってて！』
「命の保障はしてくれよ！」
タイヤの無いバイクと連結された荷台は音もなく浮かび上がる。
「Lu… siron-thal!」
『それじゃ行くよ！』
うおおおおおお！なんじゃこりゃー！
