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デブブサメンが生かされてます  作者: 霧野 カナタ


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19/20

その19 【スーパー電磁なヴェルタレン】

 てれってってれーてってっ!

 てれってってれーてってっ!

 トゥルルトゥルー トゥルルトゥルー

 たとえ嵐が吹こうと──!


『うるさいわねぇぇ!!』


 気持ちよく歌っていたら、運転席にルーシェルが怒鳴りこんできた。耳が尖ってるくせに、怒鳴り声はさらに尖ってる。


「なんだよ、暇なんだからいいだろ?」

『アンタの意味不明ボイスが大音量で響いてくんのよ! テレパス無効化されて意味が分からないから余計イラつくの!』


 そう、オレのスピーカー音声はなぜか翻訳されず、意味不明の言語ノイズとして処理される。

 いやマジで、なんでだよ。


「ロマンなんだよ! レッツコンバインってやつ。あれ? ブイブイブイッ、だっけ?」

『いいから大人しくしてて!』


 ほんと、この世界の住人は“男のロマン”を理解してくれない。


 


 オレはいま、ヴェルタレンとかいう高さ5メートル超えの巨大収穫機に半ば強制的に乗せられている。

 本来は、ターゲットをセンターに入れてスイッチ押すだけで勝手に仕事してくれる賢いヤツだ。

 ……のはずだったんだけど。


「ブーッブーッブーッブーッ!!」


 突然アラームが鳴り、ヴェルタレンは急停止した。


「なんで止まるんだよ!」


 コンソールの警告ランプが赤く点滅している。


『どうした?』

「なんか光ってる。」

『あ〜……やっぱり詰まっちゃったか。サーガ、その横のレバー引っ張って。』

「これか?」


 ガタン、という鈍い音が外でした。


 


 運転席から降りると、ヴェルタレンの側面カバーが大きく開いており、リィナが中を覗き込んでいた。

 何かがぐっちゃりと絡まっている。


「なにこれ……」

『ストプキングという植物ですわ。』

「スト……ストッキング?」

『ストプキングです。よく絡まり、よく詰まり、よく作業を止める最悪の植物ですの。

 ジカタ・ビィと似ていますが別物ですわ。』


 名前のセンスどうかしてる。


『詰まったら、こうやって手で引き抜いて。』

「えっ、これ全部手作業なのか?」

『当たり前でしょう?』


 当たり前じゃねぇよ。


 結局、オレはストプキングを両手でズルズル引き抜き、カバーを閉め、運転席に戻り……

 再始動。

 ヴェルタレンは7メートルほど進み──


「ブーッブーッブーッブーッ!!」


「またかよぉぉ!!」


 


 そこからは地獄の往復運動だった。


 降りる。

 カバー開けるの忘れて登り直す。

 降りる。

 草を引き抜く。

 登る。

 7メートル進む。

 止まる。


 二時間。延々と。


「ヒィ……ヒィ……フゥッ……なん、何往復だよ……」


 視界がかすみ、星がチカチカしている。

 ここはジカタ・ビィ砂漠のど真ん中。ルーシェルもリィナも、はるか遠くに小さく見えるだけだ。


「ヘルプミィ……誰か……」


 スピーカー越しに叫んでみたが、ただ体力を削られただけだった。


 オレはこの世界で、ストプキングとともに朽ち果てるのかもしれない……。


 


 最後の力でストプキングを剥がし、運転席まで這うように戻る。

 コンソールの手動レバーを、震える手で握った。


(……クソッタレが……)


 オレの中で何かがぷつんと切れた。


「て、めぇ……ヴェルタレン……

 さっきからチンタラしてんじゃねぇぞ……!」


 怒号とともに、オレはレバーを押し込む。


「ぶっ壊れてもいい!! 全部刈り取れぇぇぇ!!」


 脳内で謎の合体音が炸裂した。


 テレッテレッテーテッテー!

 テケテケテンテッテー!

 ブイブイブイ! ビクトリー! コンバイ──!!


 ヴェルタレンが跳ねるように加速した。

 巨大な影が砂煙をあげ、地面が揺れた。


 


『ル、ルーシェル……あれ、今まで見たことのない速度ですわ。』

『なにあれ速っ!? は? え? ちょっと!?』

『旦那様……暴走してますね。』

『さっきなんか叫んでたわよね!?』


 遠方にいたはずの二人が、急速に近づいてくる。

 ヴェルタレンが一直線に突っ込んでいくからだ。


 


「見つけたぞコノヤロー!!

 ターゲット確認!! センターに入れてスイッチじゃボケェ!!」


『え、ちょ、ちょっと待って待って待って!!

 こっち来ないでってばぁぁぁ!!』


「ヌハァ! ヌハハハハハ!!

 お前もヴェルタレン様が刈り取ってくれるわぁぁ!!」


『こっちくんなぁぁぁ!!』


『……活動限界ですわ。3、2、1──停止』


 ヴェルタレンは地面を削りながら急停止した。

 側面から白煙がモクモクと上がる。


 オレは衝撃で運転席から前方に投げ出され、砂の地面に転がった。


「……レッツ……コンバイン……」


 手にストプキングとジカタ・ビィを握りしめたまま、オレの意識は途切れた。


『……アンタねぇ……!』

『旦那様、ご無事でなによりですわ。』


 白煙の向こうで、地平線がゆらゆら揺れている。

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