その18 【ジカタ・ビィ畑と機械の花】
オレは悟りを開いたのだ。
風呂に無理やり連れ込まれても、うろたえたりはしない。
『ほら、ちょっとこっち向いて。』
なすがまま、されるがまま。時の流れに身を任せ――
「そこは自分でやるから触るな!」
『なに遠慮してるのよ、ほら、きれいきれい。』
「!!!!」
『リィナ!サーガがそっちに行ったから拭いといて。』
『承知いたしました。旦那様、こちらですわよ。』
トボトボとリィナの元へ歩いていく。
もはやオレは人ではない。ペット、マジでペット扱いじゃ!
「少しは人として扱ってくれよ。」
『はて?ワタクシ旦那様を、オスとしてこれ以上ないくらい、丁寧に接しておりますわよ?』
そうかもしれないけど、そうじゃないんだよ…
「あと、この服だよ。原始人服だぜ、原始人服。とりあえず2着あるけど、もう少し他にないのか?」
『そこはこの家の主、ルーシェルに頼んで頂くしかございませんわ。』
「お前らは毎日違う服で、寝間着も別だろ?オレなんてず~っとこれだぜ?」
『そうね、考えてあげなくもないわ。』
不意にルーシェルが現れ、
『クンクン、よかった、臭いは取れたみたいね。』
目の前にぶら下がる素晴らしき二つの………ありがとうございます!
『これ、注意事項に「毛が抜ける」って書いてあるけど大丈夫じゃん。』
「おまえ!それでオレの頭を洗ってただろ!」
『あら?お礼を言われた気がするけど、何を見たのかな?」
くぅぅぅぅぅぅっ!
『旦那様、ちゃんと拭きませんと風邪をひいてしまいます…あら?少しリバーソンさんが……』
「いっ、いいから早く服を着せろぉ!」
『エリア40と50番台はヴェルタレンで収穫するわ。』
少し遅めの昼飯を食っていると、突然ルーシェルが言い出した。
『もう大丈夫そうでしたか?』
『思ってた以上にたくさん出来てたわ、去年もすごかったんだけどね。』
「何のことだ?」
ルーシェルはお得意のドヤ顔で話を続ける。
『ジカタ・ビィよ。』
「地下足袋?忍者が履くやつか?」
『おそらく旦那様がおっしゃっているものとは別だと思われます。』
「紛らわしいな…何する物なんだよそれ。」
『詳しくは知らないけど、薬の原料になるの。』
そこから軽くルーシェルのジカタ・ビィ講座が始まったが…興味ないって。
ひたすら喋るルーシェルをよそに、小声でリィナに尋ねる。
「収穫ってどうするんだ?」
『おそらくですが、収穫する機械「ヴェルタレン」も含め、全てお願いするのではないかと…』
『そこよ!』
?!
『すべて頼むと当然料金が発生します。
ヴェルタレンだけ借りて3人で分担して収穫すれば、金額も半分以下で済むのよ!』
「分担?」
『ワタクシがいた時は、そのようにしておりましたね。』
『リィナも帰ってきたし、サーガも…少しは役に立つと思うから、今回は3人で収穫しようと思います。』
「オレにできると思ってんのか?」
『あらぁ?服が欲しいんじゃなかったのかなぁ?上手にお手伝い出来たら買ってあげるわよ?』
本当、いい性格してやがる。
――翌日――
『朝一で連絡したら、今日1日だけって事でOKもらえたわ』
「いきなりでよく貸してくれたな、暇なのか?」
『旦那様、先方も相手も見て判断していますのよ。』
目が合うと、ルーシェルは薄気味悪い笑みを浮かべた。
なるほど、あれは力づくで押し通したな……
『もうすぐ届くはずよ。』
「持ってきてくれるのか。」
『この拠点は登録されていますので、自動でこちらへ来るようになっております。』
こういったところは便利だよな。
『で、問題が一つ。サーガに何をやらせるか困ってるのよね。』
『クアルサルを任せればよろしいのでは?』
『サーガって、パッソルも動かせないのよ?無理でしょ。』
「クアルサルって……なんだ?」
『簡単に言えば、刈り取ったジカタ・ビィを入れるものよ。』
『パッソルを浮かせられないのでしたら、クアルサルの操作も難しいかと。』
『そうよね…やっぱり無理かぁ。』
何を言ってるか全く理解できんが、オレが無能だと言っている事だけは間違いない。
『それじゃあ、ちょっと怖いけどヴェルタレンを…』
「ヴォン…ヴォン…ヴォン…ヴォン…」
ルーシェルの言葉を遮るように、低く重たい音が近づいてくる。
キョロキョロと周りを見渡し、少し動揺しながらオレは言う。
「何の音だ?」
『あれ?…もうきちゃった!』
『では、受け取りの手続きをしに伺いましょう。』
「なんじゃこりゃぁ!」
そこには、前方に巨大な円盤状の刃が6枚並んだ、まるで金属の花が大きく口を開いているような奇妙な乗り物と、巨大なトラックのようなものが、わずかに浮いたまま止まっていた。
『よく見て、円盤の刃が付いてるのがヴェルタレン、その後ろにいるのがクアルサルよ。』
合体ロボなら、どちらも胴体に変形しそうだな。
いや、クアルサルは足の方が似合うか。
『その合体ロボ?の胴体みたいな方を、サーガに運転してもらいます。』
『ヴェルタレンでしたら能力は不要なので、旦那様でも問題なく操作可能ですわね。ですが…』
お…オレがこれを?……
お嬢さん、それはちょっと無謀すぎやしませんか?




