その15 【目覚めたら、強制契約】
遠くから話し声がする。
なんだろう、すごく楽しそうだ……
『……って事をしてるんだから、邪魔しないでよ?』
『面白いことをしてやがりますのね。』
『でしょ?』
『ワタクシも、少々試してみたくなりましたわ。』
『それは別の方法を考えて。』
あれ?ここは…?
『ルーシェル、ご主人様が御目覚めでしてよ』
『サーガ大丈夫?』
オレはゆっくりと身体を起こし周りを見渡す、ここは…ウチの和室か?さっきまでIKEAに居たはずじゃ…
『ほらリィナ、一応謝っておいたら?』
身体中が痛いなか、一連の流れを思い出す…
「てめぇ!なにしゃがる!表へ出ろ!」
『それは構いませんが、ご主人様が相手では秒で決着がついてしまいますが、宜しのでしょうか。』
『サーガが後ろから襲いかかったんでしょ?なら仕方ないわよ。』
オレはヴェラ・ミロンが驚くか試したかっただけだ!
『そうで御座いましたか、それは大変失礼致しました。
ワタクシが驚いた結果、このような形となってしまいました。』
「……ちょっと待て、オレの思考が読めてるのか?」
『はい、テレパス持ちはかなり稀少ですが不完全な方が殆どです。ワタクシのシリーズ以降はオプションとなりましたが、その補助機能を持ち合わせております。』
オレは自分に着けられた首輪に軽く触れる。
こいつの機能と同じって事か!
『そういえば、まだ仮契約のままで御座いました。
失礼致します。』
そう言うと、リィナの顔が近づいてきて突然唇を奪われた。
柔らかく、温かいものだった。
唇が離れた瞬間リィナの瞳が微かに光り、軽く微笑む。
「…へっ?」
『これで両者完全同意の元、契約成立です。ワタクシの心も身体も全て、ご主人様の物となりました。』
「これでリィナはサーガの物なんだから、この子がやらかした責任はサーガがとってよ。」
落ち着け!落ち着けオレ!
IKEAで一本背負い決められて、目が覚めたら突然キスされて、危険な匂いしかしないヴェラ・ミロンと契約させられて、責任は全てオレが取らなきゃいけなくなっただけだ!仮契約?そもそも仮契約なんていつした?全く身に覚えがないぞ!ヴェラ・ミロンてなんなんだ?そこもまだちゃんと……
『ご主人様?かなり取り乱しておられますが…』
『いいのよリィナ。』
『宜しいのですか?』
『サーガって、見てて面白いでしょ?』
『…そこは完全に同意致します。』
オレはリィナに膝枕されている。
外観に関しては、ルーシェルたち第1世代をモチーフに作られているそうだ。
見た目や感触、体温すら人と全く変わらないのは驚きだ。
表情は若干固く冷たさを少し感じるが、これも慣れてくるのだろう。
リィナの事は納得は出来ていないが、少しだけ理解できた。
最初に触れた時パチッと静電気が走った感覚があったが、どうやらそれが仮契約と誤認したようだ。
『サーガ落ち着いた?お茶入れたからしばいちゃってちょうだい。ミレイってば、こんなに持ってこなくても良かったのに。リィナもこっち来なさいよ。』
ルーシェルは少しお姉さんぶってる気がする。
『実際ワタクシにとって、姉のような存在です。』
「そうなのか?」
『はい。ワタクシの人格形成のベースとなっているのがルーシェルですから。』
「ルーシェルがベースになってるのか、可哀想に。」
『ちょっと、どういう意味よ!』
『はい、ですから売れ残り、行き遅れなどと言われ、辛い日々をあの場所で過ごしておりました。』
オレは目を瞑り思い出す。
だから店員さんのことを下等生物とか言ってたんだろうな。
『ルーシェル、発掘はまだ続けているのですか?』
「発掘?初耳だな。」
『ルーシェルが大量のオートリクスを所持しているのもそのためです。』
「あれで発掘するのか?」
『違う違う、原料を作ってるって言ったでしょ?あれを大量のオートリクスにやらせれば、殆ど何もしなくて良くなるから、余った時間で発掘紛いのことをしてたの。』
ポンコツの癖にいろいろ考えてるんだ。
隣にルーシェル、向かいにリィナがいて、水色で見た目最悪の美味しい紅茶を飲みながら、なんでもない普通の会話を遠慮なく重ねる。
オレにこんな経験は殆どない。
1人でいいなんて強がってたからなぁ、仕方ないか。
でも……
『ご主人様、大丈夫ですか?』
『サーガ、ちゃんと聞いてた?』
「ごめん、ちょっと考え事を……」
そこまで言うと、ルーシェルがいたずらっ子ぽく笑いながら言う、
『でも、これも悪くない…でしょ?』
油断した、この2人にはオレの思考がだだ漏れだ。
『ご主人様は、顔に似合わず繊細で、センチメンタルな性格をなさっているのですね。』
「うるせぇ!人の心を勝手に覗くな!」
『一方的に飛ばしてくるんだから仕方ないでしょ?』
『聞かない振りをした方が宜しいのでしょうか?ただその場合、後から更に恥ずかしめを受ける結果になると思われますが…』
『そうよ、後からもっと恥ずかしくなるんだから!』
ルーシェルはいつも通りだが、リィナも少し笑ってる?
もし神様かいるなら、オレの思考が勝手に飛ばないようにしてくれ!




