その14 【リユース品につき取り扱い注意】
それにしても夥しい数だ。
それぞれ説明文があるようだが、オレには読めんので通訳か必要となる。
数字だけでも覚えるべきだった。
『何回か価格改定があったって聞いたけど、随分上がったのね。』
「そんなに高いのか?」
『普通の家なら2軒分かな?』
たっけぇ!
きっと性能も上がったんだよな?
どこぞの国の家電のように、余計な物を付けて値上げってわけじゃないよな?
「少し安いリユース品なんてないのか?」
『えっ?新しい子はこの13個だけで、後はリユースよ?』
「リユース品がこんなにあるのか!」
『人が随分減ってきてるからじゃない?』
他人事じゃなくオマエたちの問題だぞ?
オレはルーシェルの手を掴む。
「少しでも安くなる方法がないのか聞いてこいよ。」
『わたしはそこまでして欲しくないもん。』
『あら、ルーシェル久しぶり、何しにきやがったの?』
『あちゃー!』
ピンクの長いツインテールがふわりと揺れる。
涼しげな目元に整った立ち姿、清潔感あふれる綺麗系メイドのお姉さんがそこにいた。
『この……デブはナニモノ?』
「オレだって泣くぞ?」
『不細工なくせに理解不能な言語を使うのですね。』
「………ル、ルーシェル!なんだコイツは!」
『アハハハッ!ナイスよリィナ!』
「オマエの知り合いか!」
『ヴェラ・ミロン』
「…へっ?」
『この子はヴェラ・ミロンのリィナよ。こっちはサーガ、挨拶してあげて。』
『こんにちはブタ野郎。わたしはヴェラ・ミロンのリィナです。リィナ様と呼ぶことを許可いたします。』
随分と口の悪いメイドだな。
ヴェラ・ミロンてこんな感じなのか?
「なあ、コイツは触って良いだろ?」
『何も起きないと思うけど、触ってみれば?』
パチッ!
「いてッ!」
触れた瞬間、静電気が走った様な痛みがあった。
と同時に、リィナの目の光が一瞬無くなった気がしたが…
「オレの言葉がわかるか?」
『再起動中、暫くお待ちください。』
『ちょっと壊しちゃったの?やめてよ?』
「何もしてないって!」
なんだ?どうなったんだ?
『お待たせしました、ご主人様。』
そう言いながら、オレの手を両手でそっと包み込む。
「ご主人様?!」
『ご主人様?!』
なんだ?何がどうなった?
『あらルーシェル、相変わらず頭悪そうね。』
『ありがとうございますぅ!』
『ご主人様、本日はどの様な御要件でしょうか?』
「えっと、あの……」
動揺し過ぎて、うまく言葉が出てこん!
そこにルーシェルが横から質問を投げかける。
『あなたは何してるのよ。』
『バッテリーが劣化していたので交換してもらい、ケージに戻る途中でしたの。』
「なら早く戻りなさいよ。」
『戻れない理由ができたので、あなたの意見は却下DEATH☆。』
『相変わらずのようで嬉しいわ。』
かなりイラついてますなぁ、ルーシェル様。
「なんだ?2人は知り合いなのか?」
『えっと、この子はね…』
ルーシェルの言葉を途中で遮りリィナが割り込む。
『あなた、お伝えしておりませんの?』
『もう!めんどくさいなぁ!』
『申し訳ありませんご主人様、ワタクシはこの小娘を、180年ほど前までお世話してやっておりました。』
「そ、そうなんだ。あれ?言葉わかるのか?」
『ご主人様はワタクシの全てですから当然で御座います。』
『わたしの事はご主人様なんて言ってくれなかったくせに!』
『当然でしょ?』
そこにもう1人、パンツスーツ姿の子がはいってきた。
ヤバイ、このままじゃ言葉が理解できん!
オレはそっとルーシェルの手を掴む。
「ごめんなさい、何かありましたか?リィナさんはケージへ戻ってくださいね。」
リィナの表情は一気に冷たくなり、鋭い眼光で店員を睨むように一言呟いて立ち去っていく。
『下等生物が…』
これは聞かなかったことにしたい。
『あれっ?ルーシェルさんじゃないですか!やっと引き取りに来てくれたんですね!』
ここの店員と思われるパンツスーツの子が言った。
引き取りに来た?
『えっ?引き取るって何を?』
『リィナさんですよ!』
『あれは買い取って貰ったわよね?』
『リィナさんは初期化できない不具合が修復不能だから、廃棄処分はできるけど買い取りはできないって言いましたよね?
そうしたら店長と直談判して、150年以内に買い手が現れなかったら引き取ってもらう事になったじゃないですか!』
『えっ?そんな話したっけ?』
『契約書にもちゃんと書いてありますからね?』
『いや待って!今日はそんなつもりで来たわけじゃ……』
オレはルーシェルの手をそっと離す。
「昔からポンコツなんだな。」
そう言って、急足でリィナの後を追う。
その背中は哀愁が漂い少し寂しそうに見えた。
ふとヴェラ・ミロンって驚くのか確かめたくなり、無言で後ろから抱きついてみる。
『うおりゃぁぁ!』
バァン!
オレは見事なまでの一本背負を喰らい床に叩きつけられた。
「こ、コイツも、ヤバイんじゃ…ないのか?」
やがて視界が滲み、意識が遠のいていった。
『あら、ご主人様、そんな所で寝ては風邪をひかれますわよ?』




