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デブブサメンが生かされてます  作者: 霧野 カナタ


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その12 【かれいがわえきで買い物を】

 オレたちはミレイの店を出て、ひたすらに裏路地を走る。

 来るときに少しだけ通る表通りを走った方が速いんじゃないか?

 そう思うが、ここはルーシェルに任せるしか方法がない。


 オレもこのパッソルに乗ってはみた、だが結果は………


『ほら、だから言ったでしょ?無能なオスにこれは扱えないんだって。』

「無能ってなんだ!なにか秘密が!そうだ、鍵か何かあるんだろ!」

『生体認証はあるけど、今は無効にしてるから誰でも動かせるの。』


 そう、微動だにしなかったのだ。


「ココに電池っぽいものが入るようになってるじゃないか!入れてみろ!」

『そこは緊急用だから、普段は空でいいのよ!』


 なんて理不尽な世界じゃ!




 繁華街から少し離れた、ストレートに言ってしまえば錆びれた場所にやってきた。

 人通りはほとんどない、こんな所で商売なんて成り立つのか?


 そんな中、わりと人の出入りが多い場所の前でパッソルは止まった。


『じゃぁ、ここで買い物して帰ろ?』


 その建物は[かれいがわえき]の看板がとても似合う風貌をしている。

 今度は駅舎がモチーフか?誰が分かるんだこんなマニアックなもん!


「おい、叡智を読んでこい。」

『何言ってるの?気分でも悪くなった?』




 外観はかなりノスタルジックだが、足を踏み入れるとそこは全くの別世界だった。

 車輪のない買い物カート?のスイッチにルーシェルが触れると、カートは浮かび上がり自動で付いてくる。

 オレも触れてみるが全くの無反応。これは差別だ!これこそが差別ってやつだ!


『遊んでないで行くわよ。』


 店の中を徘徊していると、目が虚ろでスレンダーな、見るからにひ弱で小柄な人?を発見する。

 腕のあれ、怪我……じゃないよな。

 その子はカートと同じように一人の女性にふらふらとついていく。


「なんだあれ?」

『あれがオスだよ。』

「オス?!」

『あとでちゃんと説明するから、いまは大人しくしてね。』


 ルーシェルが小声でささやく。

 騒ぐの得策じゃないって事か、これは一旦棚上げだな。




「ここって何なんだ?なんでこんな所まで来たんだ?」

『ここはね、特定の人しか入れない場所なのよ。』

「……つまり会員制ってやつか。」

『そうそう、私は会員だからここで買い物ができるの。』


 いや、そのドヤ顔は見飽きてきたぞ。


「だからわざわざここまで来るのか。」

『他では売ってない、ちょっと形が悪いものが安く手に入るのが良いところかな。』

「形が悪い?」

『詳しくは知らないけど普通の販売所は形が悪いと買い取ってくれないんだって。

 高くはないけどここは買い取ってくれるらしいわ。

 見た目以外はそんなに変わらないのに…変でしょ?』

「………どの世界も似たようなもんなんだな。」

『そうなの?』


 第一印象はとても大事だからな。見た目は関係ないなんてただの戯言だ。


 魚や野菜はやけにカラフルだったりするが、基本は元の世界と変わらない。

 大きく違うのは………


『うーん、こっちの方が良いかな?』


 アイツらには重たいものも運べる能力があるから、男がマウントを取れないってところだな。


『限界はあるからカートは必要だけどね。』

「生体には能力が使えなかったんじゃないのか?」

『ん?箱や入れ物に入ってれば大丈夫だよ?』


 つまりあれだ、檻に入ってればオレも運べるって事か。


『そうだよ、なに?檻に入りたいの?』

「そんなわけあるか!」




 清算を済ませパッソルまで帰ってきたが、


「どう考えても、この荷台に入らないだろ。」

『なんで?普通に入るわよ。』


 ルーシェルは荷台のふたを開け、次々に食材を放り込んでいく。


 ………もう何でも有りだな。


 空になったカートのスイッチにルーシェルが触れると、自動的に店へ帰っていく。


「便利だなぁ。」

『でしょ。』


 これで本日のミッションは全て終了だ。


『乗った?ちゃんと捕まっててよ。』

「わかってるって。」


 そういってオレたちは通称[かれいがわえき]を後にする。




 オレは空気の読める日本人だ。言いにくそうにしている雰囲気は感じている。

 だが先のことを考えると、知らん顔してる訳にもいかん。


『………やっぱり気になるよね。』

「まあ、そうだな。」


『前に言ったでしょ、アタリのオスは管理されてるって。

 さっきのは“ハズレ”の方。

 生活は保障されてるけど、労働力として扱うのも…ちょっと厳しくなちゃうの。

 今日見たのは、まだマシな方かな。』


 ルーシェルの声が少し沈む。


『サーガは会話もできるし、反応も早い。

 だからオスだってことをつい忘れちゃうの。

 あれがこの世界では当たり前だけど、サーガが見たらわたしが…わたしたちが嫌われちゃうかもって思って…』

「見せたくなかったってことか。」


 彼女は、ほんの一瞬だけ目をそらした。


「街で落ち着かなかった理由はそれか?」

『……そんなにわかりやすかった?』

「あれで隠せてると思ったのか?」


 少し笑って、空気を戻す。


「いいか、こっちの男がどんな扱いを受けてるのか知らんが、正直オレはどうでもいい。

 同じ扱いを受ければ当然抵抗する。

 ただ、女性にいじめられて喜ぶ男は多いからなぁ。」

『え゙っ?』

「鞭でたたかれて喜ぶ輩もいるんだぞ。」

『ま、まさかサーガも………』

「かもしれんぞ?」

『えぇぇぇぇぇぇっ……』


 めちゃくちゃ怯えてる姿に笑いをこらえる。


『わ、わたしもが、がんばるから!』

「ぶはっ、ぐっははっ……げほっ!何を頑張るつもりだよ。」

『ええっ?だ、だって…』

「オレにそんな趣味はねぇし、叩かれて喜ぶわけがないっての。」

『ムーーーーーッ!』


 からかわれたことに気付いたようだ。


『サーガは今日、晩ご飯抜き!』


 ルーシェルはこのくらい元気な方がらしくて良い。

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