その11 【デブブサメン、原始服を纏う!】
注文してから4日、今日はニューコスチュームを受け取りに行く日だ。
その間オレは、ルーシェル嬢の作ったパンツを身にまとい危険を回避してきた。
これもなかなかに優れており、下腹に力を入れるとパージするという特殊能力が付与されている。
「こんなもんいつまでも履いてられるか!早く取りに行こうぜ!」
『がんばって作ったんだから、感謝しなさいよ!』
あれからも風呂は強制的に一緒、寝るときは隣にべったり。
この世界の男はどうなのか知らんが、オレは欲望にまみれたおっさんだぞ?こいつに危機感はないのか。
多少離れても問題ないはずだが、なにかとオレに触れてくる。
最近はあの柔らかミサイルを押し付けてくる印象があるが、これはオレの頭がお花畑になってしまっているからだろう。
『じゃん!今日はこれで行く』
………相変わらずこの世界の叡智というのは何をしているんだか。
これもあのミレイって子が作ったものなのだろう。
その恰好は遊戯なカードの黒い魔法使いガールが元ネタか?
「チチがこぼれそうだぞ。」
『ん?…大丈夫だよ?ほら』
だからさぁ、おっさんだって男なんだぞ?狼だぞ?食べちゃうんだぞ?
眩しいから嬉しそうな顔をするな。
『今日は帰りに食料調達しなきゃね。』
「あれ?食べ物は作ってるんじゃ………って原料を作ってるのか。」
『野菜やお肉、お魚なんかは買わなきゃ無いのよ』
食べ物は元いた世界と作り方も含めほぼ変化がない。
これもデウスとかいうヤツらに授かった知恵らしい。
こんな面倒なことをしなくても、もっと簡単に栄養を取ることは可能だと思う。
だが、それではダメなんだそうだ。
『長生きできないわよ?』
ロリババァが言うと言葉の重みが違うな。
『あのね、前はミレイに触っちゃいやだって言っちゃったけど…
もう大丈夫だから気にしないで。』
オレたちはパッソルに乗り込み、ミレイの店があるファルカの街へと向かう。
確認はしていないが、おそらくルーシェルはファルカの街が苦手なのだろう。
あの街で見た娘達は、ルーシェルと違い冷たく感じた。
ちゃんと聞いたほうが良いんだろうけど………
『サーガ、ちゃんと捕まっててよ!』
考えすぎか、めっちゃ元気じゃん。
『ちょっと!そこはダメだって!』
「大丈夫だって言ってたじゃないか。」
街に入るとルーシェルは少し肩をこわばらせ、視線をあちこちに走らせる。
女性たちの表情は相変わらず硬く、笑みひとつ見せない。
浮遊する小型の機械が頭上を滑るように飛び、無音の視線を投げかける。
オレの姿をみて、通報とかされないよな?
『大丈夫だと思うわよ、ただの荷物だと思われてるだろうから。』
「おい、なんでオレが荷物扱いなんだよ。」
『だって、こんなに大きなオスなんて見たことも聞いたこともないんだもん。』
ルーシェルはオレの腹をプニプニと弄ぶ。
「オマエ、覚悟はできてるんだろうな。」
『あっ!ダメ!ココじゃやだ!帰ってからなら良いからやめて!』
強引かもしれないが、少し笑顔が戻ってホッとした。
どう見てもお化け屋敷だ、服を売ってる雰囲気ではない。
ギィィィィィィィィッ………
『ミレイ、取りに来たわよ。』
『いらっしゃいルーシェル、と、不細工さん。』
「いらっしゃいましたよっと。」
『あら、不細工さんも真似してるのかしら?』
『………そう…みたいよ。』
直接触れなければ、オレの言葉が理解できないのは決定だな。
『これね、凄いじゃない!』
『左右のバランスをとるのが難しくて、思ったより手こずったのよ。』
『あっ!パンツまで作ってくれたの?』
『だってあれでしょ?あの…エクスカ……リバーさん?がぷらぷらしちゃうんでしょ?』
『そうなのよ、しかも掴むと怒るのよ、この子。』
なんの相談をしてたんだオマエは、掴んだり引っ張ったりしてることを宣言するな。
『直しが必要かもしれないから着せてみて。』
『そうね、サーガ、こっちおいで。』
「かせ!自分で着れるわ。」
『なに?どうかした?』
『自分で着るんだって。』
『変わったオスね、自分でできるんだ。』
この世界の男は全て執事にやらせちゃう王族か貴族なのか?
鏡の前に立つ。
とても動きやすく、ムカつくほどよくできている。
『すごい!メッチャ似合ってる!』
オレが見ても、本物のネアンデルタール人の様ではあるが………
原始人コーデが似合うといわれても、少しも嬉しくないわ!
『また作ってほしくなったらいつでもいらっしゃい、サイズは取ってあるから。』
『わたしのも欲しくなったらまた相談に来るね。』
『ルーシェルの注文は面倒だから遠慮したいわ。』
『そんなこと言わないでよぉ。』
ミレイは同じ第一世代だって言ってたな、ルーシェルより表情や感情は希薄だが、外で見る子たちとは明らかに反応が違う。
同じ人間のはずなのに、なにが違うんだ?
『それじゃ何かあったらまた来るね。』
『何もなくても来て良いのよ?』
『わかってるって、じゃあねミレイ。』
『不細工さんも、またいらっしゃい。』
軽く会釈をして店を後にする……だが!不細工さん呼びで確定するな!
『フフッ、仲良くしてくれて嬉しいわ。ありがとう、サーガ―。
でも、ミレイと話したかったんじゃないの?』
「オレが?なんで。」
『ううん、何でもなーい。』
ロリババァが嬉しそうにしやがって。
ミレイに触れていいなんて言ってたけど、あんな寂しそうな顔をされたら…ね。
それに、第一世代とその他は何が違うのか、ちゃんと聞いておいた方がよさそうだしな。
『じゃぁ、次は買い物して帰ろっ。』
オレに抱き付き、柔らかミサイルを押し付けてくる。
あのさぁ、こんな事されたら、おっさんは勘違いしてしまう生き物なんだぞ!




