9防衛戦③
モンスター軍団との戦いから2日後、圭は目を覚ました。陽花は相変わらず、心の傷が癒えず、町の人からの態度も変わらない。モンスターはだいぶ倒したが、それはこちらも同じで、少なくない被害が出ている。圭が回復仕切っていない今、襲われたら尋常ではない被害がでる。そこで、戦闘中の安全の為にも陽花に立ち直ってもらい、協力してもらう必要があるという話になった。
「なあ、陽花、少しいいか?」
圭が尋ねる。
「…何?」
少しの間の後、短い返事が返ってきた。
「一昨日、モンスターの軍団がまた襲って来た」
「っ?!……そう」
「俺はそこで倒れた。どうやら、疲労が溜まっていたらしい」
「それは…大丈夫だったの?」
「ああ、英治が助けてくれた。しかし、これからもこんな戦いが続く。そうなれば、お前の協力が必要不可欠なんだ。頼む協力してくれ」
「無理だよ」
陽花が、震えた声で答えた。
「私、あの時の事を思い出すだけですっごい震えが止まらなくなるの。私のせいで沢山の人が死んじゃったし、沢山の大切な人を奪ってしまった」
「あれは陽花のせいじゃない!」
「私のせいだよ。あの人達は私を信じてくれていたのに、それを裏切った」
「っ!」
圭もその時の事を思い出したのか、悲痛な面持ちであった。
「それは……俺も同じだ。勇者として頼られていたのに、それを裏切った。でも、それは足を止めていい理由にはならない。魔王どもを放っておけば更に被害者が増える。それをとめられるのは俺たちしかいないんだ」
「でも…」
「頼む、協力してくれ。俺達には、お前が必要なんだ」
「ごめん、ごめんね」
陽花が誤っているのは俺たちか、それとも死んでしまった者達へか。
「……また来る」
そう言って圭は去っていった。
俺は、こういう時になんてお声を掛ければ良いか分からなかった。それでも、言えることが一つだけあった。
「なあ、陽花。お前が戦わなくちゃ誰が戦うんだ?きっと、さらなる犠牲者を出すだけだ。俺達も、お前がいないと、戦えない。世界を救えない。死んだ者へ謝罪したいのなら、そいつらが守ろうとしたこの町を、この国を救うことが一番の罪滅ぼしになると、俺は思う。俺に言えることはこれだけだ……じゃあな」
次の日も圭は説得した。
「陽花、頼む協力してくれ。陽花の力が必要なんだ」
「私でも、力になれるのかな?レベル差も開いちゃったし、まだ臆病なところもある。それでも助けられる?」
「ああ、大丈夫だ。レベル差なんてすぐ埋まるさ。俺達だって一日で上げれたレベルだ。それに、陽花の言う臆病は悪いことじゃない。陽花は、死んだ人達やその家族の事をしっかりと考えてあげられているんだ。それは臆病と言うより優しさだと思う。まだ誰かを助けたいと思っているなら、協力してくれ。一緒に世界を救おう」
陽花は乾いた笑いをこぼした。
「ずるいよ、圭くん。そんなこと言われたら協力しない訳には行かないじゃん」
陽花はそう言うとガチャリと鍵を開け扉から出てきた。
「圭くん、英治くん、待たせてごめんね。これから挽回できるように頑張るから」
「「ああ、頼んだ。」」
陽花はトラウマを克服した。まだ忘れることはできていないだろうが、きっともう大丈夫だろう。死んだ者たちの為、世界の為に戦う覚悟を決めたのだから。
その28日、ちょうど1ヶ月後に、モンスターの軍勢が、数を増して攻めてきた。
俺達は、今までと同じく、城壁の上から敵を見据えた。ただ今までと違うのは、俺達3人全員が確かな覚悟を持ってこの場に立っていたということだ。DランクモンスターのオークとEランクモンスターのゴブリンといった今までと同じ様な軍団。しかし相手にも少し違う点があった。ゴブリンアーチャー、ゴブリンマジシャン、ウルフに乗ったゴブリンライダーがいた。全てDランクモンスターだ。更に、BランクモンスターのゴブリンキングにCランクモンスターのオークジェネラルが多数、Aランクモンスターのオークキングまでいた。
俺達は、臆すことは無かった。準備は万端。魔力も、体力もしっかりと管理していたおかげで、戦闘中の事故等はまず起きないだろう。
特訓の成果も出ていた。
俺は、アイテムボックスのレベルを3に、更に狙撃というパッシブスキルを得た。アイテムボックスは、レベルが上がったことで手に入れたスキルで、これからの戦いで必要になるらしく、何度も使う事でレベルを上げた。
*スキル説明
狙撃
遠距離攻撃の威力を強化するスキル。効果はスキルレベルに依存する。
圭は、身体硬化のレベルを2に上げ、更に身体能力強化と身体硬化を併用した訓練を行っていた。
陽花は、魔法強化のレベルを4に、プロテクトのレベルを2にあげた。
オークキングの存在のみが気掛かりであったが、それ以外は、俺と圭なら問題ないような相手であった。
圭が城壁の外に出て敵を迎え撃つ。陽花がプロテクトをかけると、圭の身体に青色の結界が現れた。ダメージを一部吸収してくれる結界だ。圭は、自身に身体硬化のスキルを使用する。そして身体能力強化や、単純魔力エンチャントは使用せずに敵に突っ込んだ。油断では無い。相手と自身の実力を見極めた上で長期戦を考慮し、最低限の負担で倒す方法を取ったのだ。




