2召喚②
俺は、前世で、高校3年生というところで死に、神となった。
前世では、ありふれた、それでいて全く幸せとは言えない生活を送っていた。
中学校時代、学力、運動能力共に高く、成績優秀だった。陸上部に所属し、県大会の決勝戦まで勝ち進み、更にはいくつかのコンクールで賞をとる。そんな文武両道の俺は、両親から県内の有名進学校への進学を期待されていた。
俺もその期待に応えるべく、そして、その高校の進学率の高さに心を引かれて、必死に受験に向けて勉強していた。模試ではA判定を取ることが出来ていた。しかしテスト当日、駅のホームで電車を待っていたら、誰かに背中を押され、線路上に転落した。慌てて退避スペースに避難するも、間に合わず、左脚を負傷。命には替えられずやむなく切断となった。だが不幸は終わらない。受験当日に病院送りになった俺は、問答無用で不合格となった。本来なら事故や事件、その他理由でも、正規の手順を踏めば追試験が受けられる。だが、それは休むという旨を当日の受験開始までに伝えた場合であり、それをしていなかった俺は追試験の資格を得ることができなかった。俺はあまりのショックで、取り乱し、泣き崩れてしまったものだ。背中を押した者を恨み、呪ったものだ。嫉妬、妬み、僻み・・・はたまた、ただの気まぐれ。そんなもので殺されかけては、溜まったもんじゃない。
その後は、入院期間が終わった後、少し遅れての入学となった。陸上部が強い高校に、だ。だが、今の俺は脚を切断している。そんな俺にこの高校は地獄だった。元々偏差値は低めで治安の悪めな高校だった。そんな高校生にとって俺はいじめの餌食となった。頭が良くて落ち着きのある、才能に溢れた人間。そんな俺は周りから見たらさぞ気に食わなかっただろう。
「お前陸上部入らねえ?」
「おいおい、こんな脚で陸上部は無理だろw」
こんな事は日常茶飯事。だから俺は気にしないように振る舞う。
「うん、そうだね。陸上部は難しいかな。ごめんね」
脚のことをいじっても気にする素振りすら見せず流される。気に食わないのに、いじめることもままならない。萎縮することも無く、ただ平然としている。そんな俺に苛立つ事は至極当然のことなのかもしれない。彼らにとっては。
ある日、登校すると、机の上にいくつかの落書きがあった。
「あれれーw大神くん、机に落書きしたらダメでしょーw」
「・・・」
俺は、声をかけてきた男を一瞥し、何事も無かったかのように席に座った。落書きを消そうにも油性で、しかも結構な量が書かれているので消すことが出来ない。なので諦めて気にしないことにした。すると、男は舌打ちして、自分の席に戻った。俺は極力絡まれるのをされるため、登校時間ギリギリに登校している。なので、少しすればすぐに先生が来た。
「大神くん、その落書きはなんですか?」
「分かりません。今日登校したらありました」
「せんせぇー、俺、大神が机に落書きしてるの見ましたー」
さっきの男が言う。そんなはずは無い。落書きには明らかに俺への悪口が書かれている。脚を切断している者なんてこのクラスに一人しかいない。しかし、
「そうですか。大神くん、後で職員室に来なさい」
今更驚くことも嘆くこともない。いつも通りの光景。
腐ったみかんは、やがて周りのみかんをも腐らせると言うが、先に腐っていたのは生徒なのか、それとも教師か。とにかく、この教室、学年、学校は腐りきっていて、誰1人として止めようとする者は居ない。職員室に行っても、説教などする訳でもなく、ただただ荷物を運ばせる等の仕事の押し付け。罰として押し付ければ都合がいい。それだけのため。
いじめは、日々加速して言った。わざと聞こえるように悪口を言うなど日常茶飯事。肉体的に暴力を受けることも珍しくない。水をかけられることも稀にある。だが俺は、そのほとんどを意に介さないのだから、アイツらにとって気に食わないことこの上ないだろう。
俺がいじめを受けても平然としていられたのは、親友の鋼青のおかげだ。高校は別だが、中学校時代から仲が良く、今でもよく遊んでいる。よく愚痴を聞いてもらい、心の支えとなってもらっていた。彼が居なかったら、俺は高校をやめていただろう。
そんなある日、風邪をひいた。いつもの奴らに水をかけられ、体調を崩したのだろう。今まで体調を崩すことは稀だったので少し珍しい。学校に休みの連絡を入れ、ベットで寝る。そしてゆっくりと眠りに入り、気づいたら、今に至る。
世の中、不思議なこともあるものだ。
(次こそはいい人生を歩もう。気心の知れた友人が欲しいし、結婚もしてみたい。)
別に俺が物語の中のような凄惨な人生を歩んできた訳では無い。しかし、もっと幸せのある人生を歩んでいる人もいるわけで、俺もそんな人生を歩みたいと考えることは、特段おかしなことでもないだろう。
「そろそろいいか?」
「ああ、頼んだ」
こうして俺は、固い決意と共に、1つ目の世界へと旅立った。




