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12襲撃①

 野宿を終え、朝になる。俺達は、明るくなる前に行動を再開した。明るくなると見つかりやすくなるからだ。


 しばらくして、駐屯地を見つけた。魔族が警戒に当たっていてそう簡単には通れそうも無い。すると、中から別の魔族が出てきて、見張りの魔族と交代する。どうやら、夜の見張り番と、朝の見張り番とで交代する時間のようだ。


「よし、そろそろだな。襲撃は、夜中やればいいものじゃない。夜中は襲撃を警戒している者も多い。反面、朝は新しく交代する寝起きの者たちで注意力散漫になりがちだ。襲撃するなら今が良いだろう」


 さすがは騎士団長。本来は襲撃を警戒する側だが、だからこそ警備が手薄になりやすい時間などを把握しているのだろう。ここ辺りは人間族と魔種で変わらないというのも大きい。騎士団長の経験が通じるからだ。


 襲撃の許可が出たので、俺は、魔力を練り、魔法をイメージする。そのイメージを言語化し詠唱する。

「|落ちるは土塊。空から落ちて敵を押しつぶせ。その質量をもって城をもつぶす兵器となれ。…………《纏うは炎。巨岩に纏いて敵を燃やし尽くせ。その熱を持って全てを溶かす災害となれ。…………》」


 並列詠唱――このスキルを使い、2つの属性を混ぜ合わせる。普段より長い詠唱を確実な魔法のイメージをしながら詠唱していく。


 詠唱時間は約10分。これは、詠唱文が長いのではなく、俺のイメージと魔力を練る技術、知力の演算能力補正の問題だ。なので、詠唱を早口で言うなどという小細工は使えない。魔力を練るのは、これ以上早くするのは今のところ難しいので、戦闘では到底使えたものじゃない。しかしこの場、不意打ちという現状では、これ以上の魔法はなかった。


「メテオ・ストライク」


 巨大な影が駐屯地を覆い尽くす。異変に気づいた魔族が上を見上げる。そして誰しもが驚愕した。建物全てを飲み込んでしまうほどの巨大な1つの岩。それが炎を纏い、遥か彼方から降り注いでいた。いくら魔法に長けた種族でも、こんな芸当ができるのは四天王……いや、四天王でも可能なのは、上澄みのエリートのみだろう。誰一人とその岩の行く手を阻めず、駐屯地を押し潰した。


 巨大な岩は地面に激突した衝撃で割れた。岩の下から這い出でるものはおらず、魔種は全滅した……なんて上手い話がある訳もなく、割れた岩の下から人影が現れた。


 黒い肌に赤い髪。その髪からは黒の角が2本生えている。魔種の中で最も数の多い魔族という種族だ。身長や体格は人間族と大して変わらず、その鋭い眼光で俺達を睨んだ。


「貴様らよくもやってくれたな…」

 

 怒りに満ちた声は、覇気は、その人物が相当な力を持っていると感じるのには充分だった。

 

「お前が四天王か」

 

 圭が問う。

 

「いかにも。我は憤怒の魔王の四天王が1人、激昂のグラシャだ!貴様らの罪、その命をもって償え!『激昂』」

 

 グラシャがスキルを発動する。彼の瞳孔は赤く染っていた。

 

「ぐぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」

 

 グラシャは狂ったように叫んだ。魔力を撒き散らし、周囲の存在全てを威圧する。

 

「土杭」

 

 俺が魔法を発動する。

 

 土杭――地面の土を操作し、指定の場所からいくつもの土の逆さ向きの杭が生える魔法だ。俺が創ったオリジナル魔法だ。


 しかしグラシャの体を貫通することは無かった。すぐに杭が壊され、残ったのは少しばかりのかすり傷のみだ。圭が踏み込む。その首を狙い、剣を振るう。グラシャは、その剣を避けるでも防ぐでも無く、ただ食らった。圭の剣は少しの切り傷のみをつけた。グラシャは、技もなく、ただ殴る。殴られた圭は、そのまま吹っ飛び、木に激突する。

 

「ロング・ヒール」

 

 陽花のオリジナル魔法。本来よりも遠くまで影響を与えるこの魔法は、後衛から、直接前線を回復することができる優れものだった。

 圭が起き上がる。騎士団長も前に出て四天王と相対する。

 

「ぐぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙」

 

 グラシャは未だに吠え続ける。

 

「おい、みんな!こいつは正気を失っている!付け入る隙があるならそこだ」

 

 スキルの効果か、グラシャは、狂っていた。まるで獣のように俺達に襲いかかる。

 

「プロテクト」

 

 陽花が俺達全員にプロテクトをかける。

 全員の体が光り、薄い膜がはられた。青色の結界は、俺達にとっては命綱も同然だ。彼の攻撃力は、本来なら、恐らく一撃で動けなくなるほどのものなのだから。


「グランド・クロス」

 

 騎士団長もスキルを発動する。そのスキルは、地面を割り、数十メートル先まで届いた。圭ですらまだ届いていない剣を扱う職業の実質的な奥義。人間が届く最高地点だ。その十字の斬撃は、グラシャの左腕を切り落とした。

 

「ぐっ」

 

 呻き声を上げたのはグラシャでは無い。グラシャは相変わらず狂った叫び声を上げている。呻き声は、騎士団長から発せられたものだった。


 騎士団長は、勇者でも無ければ、魔王でも無い。レベル78という化け物クラスでも、勇者や魔王、四天王の戦いについて行くことは難しい。俺達よりステータスが劣るだけでなく、救う者の3倍効果もない。そんな彼がこの戦いに参加したのには理由がある。

 

 彼の持つ特殊スキル、『持たざる者の抵抗』。このスキルは、5秒間、相手のステータスの2倍のステータスになることができる。しかし、その後、ステータスが一時的に90%低下するという諸刃の剣だ。さっきの呻き声は、急なステータス変化――主に体力の最大値の大幅な減少による苦痛だった。騎士団長の役目は、野営などになれていない俺達のサポートと、最初に傷を負わせ、こちらが有利に戦えるようにするというものだった。

 

「すまない、あとは頼んだ」

「ああ、分かった。お前ら!騎士団長が作ってくれた好機、無駄にはするな!」

「おお!」「うん!」

 

 圭が鼓舞し、俺と陽花が同時に頷く。

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