7話 一方的な縁談
カイの回想が終わり
「つまり、父の早合点だったんですね」
話を聞いた燈子カイに確認する。
「まあ、言いにくいけどそういう事。しかし燈子さん一人で直々にこの館に来させるなんて・・・。ご令嬢一人で嫁入りとはご足労をかけてしまったね。
御当主は心配しないのかな?」
「それは・・・そうですね」
確かにこれでは燈子が無理矢理押し掛けた事になる。
大正になり結婚式は
本来嫁入りは縁談をし結納を済ませ、式を挙げるはずだ。
(きっと真莉の時ならそうするでしょうけど)
事情を知らない、ましては父と同業の今から婿入りするかもしれないこの人に高柳での暮らしを話す訳にはいけない。
きっとこの結婚は破談になる。
でも、かといって燈子は帰れない。
「あのっ、女中でもいいから私をここに置いて下さいませんか!?」
「いや、そういう訳にもいかないだろう」
「そうですよ」
燈子の突然の申し出にカイとエミリーは驚いた。
「あの、でもそしたら私はどうすればいいでしょうか?」
どうすればいいでしょうかと聞かれてもカイに考えはない。
しかし燈子をすぐ高柳の家に戻す事は一方的に口約束をされたカイにだってする事はできない。
「分かったよ。確かに出戻りなんて君の父上がが許す訳ないだろうし。
しかし、嫁でもなく女中でなければどうしようか」
うーん。
三人集まれば文珠の知恵だが燈子とエミリーは主人であるカイに口出しは出来ないのでカイの返事を待つしかない。
「おい、二人とも俺に気を遣わずアイディアがあったらちゃんと言ってくれ」
「あ、あいで?」
初めて聞く英単語に燈子の頭に疑問符が浮かぶ。
「あ、そうか。いい案があったらちゃんと燈子さんも言ってね」
「!はい」
(本当に私が当主である方に意見をしていいのかしら?)
「燈子さん、本当に何か思いついたら言う事!」
「・・・はっ、はい」
燈子の考えをカイは見透かした様だ。
彼の淡褐色の瞳にジッと見つめられるとなぜか燈子は落ち着かない。
「ねえ、カイここで話すのには少し煮詰まらない?気分転換にお庭で話しましょう」
突然のエミリーの提案にカイは
「そうだな。エミリー、お茶をお願いしていいかい?」
「では、私も!」
お茶を淹れますと立ち上がると
「駄目ですよ。トーコ様は今からこの家での役割が決まってないんですから」
美味しい紅茶を淹れてくるので待っていてくださいね。
と言いながらメアリーは部屋を出て行った。
「燈子さんも一緒にテラスに行こう」
「はい!」
(てらすってどこの事かしら?)
と燈子は思ったが、カイがドアを開けて燈子に先に出る様促すのでお礼を言って先に部屋を出た。
カイに続き、輪島の家に訪れた際に入って来た玄関と反対側部屋の奥に向かう。
すると燈子は思いがけない知り合いに出会った。
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