表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/26

2話 私とは違う扱いの妹


意識してなくて小さい頃から見えていたからか普段はその頃は女中からもらった無地の反物で縫った手袋を付けていた。


今、身につけているそれはもう何代目になるか分からないが色んな女中が残していった反物を縫ってこしらえた物だ。


ふうっとため息を吐き、他の女中に買い付けが終わった事って今から片付けに一緒に入ってほしい事をを伝えに行こうとしていると目の前から

「あら、ため息なんて付かないでよ」と女学校から帰って来た高柳家の一人娘(・・・と公には言われている)真莉まりが陰気臭いったらありゃしないわと燈子を押しよけ広間に入っていく。


「まあ、これが今度三ツ橋に出るのね!」

三ツ橋は街にある百貨店で開館当初からこの高柳家も関わり、所有する店舗 高柳は今日まで軍を抜いて売上を叩き出す老舗だ。


いつも高柳の店には季節ごとにこうやって元康が専門店から集めた目利きの新作を燈子に選ばせた物が広い店舗に並び、目の前を通る老若男女に人気の店だった。

真莉は広間に入るなり鮮やかな春物に浮き立ちいても立ってもいられないらしい。


「こら、真莉。帰って来たら手洗い場が先だろ」

そうやって父は真莉を叱るが娘の反応に中々満足している様子だ。


その様子を燈子が小さい頃だったらチクリと傷んでいたはずだが真莉と違う扱いを受けて十五年にもなる。本来なら羨ましいわと思うところを、夕方になれば夕飯を運ぶ手筈がある為お父様ったら早く真莉を広間から追い出してほしいわという感想しか浮かばない。




燈子は高柳家の養女だ。

まだ真莉が産まれる三年前、春の夜にひっそりおくるみに燈子と書かれ赤子が出来ない裕福なこの家の門の前に置かれた。


男児ではないものの、半ば子が出来ないと諦めていた元廉とカヲリ夫婦は喜んで燈子を可愛がった。


しかし、ふとした時に何かに触ると癇癪を起こす。

人見知りで引っ込み思案。


子育てが初めてな母カホリは子は明るく元気なものではないのかと疲弊し戸惑いながら燈子を育てたがしばらくし、奇跡的に真莉が産まれ燈子とは違い愛らしく子供らしくその時から両親の子育ては真莉の方に熱が入った。


元廉が買い付けのついでに土産をやると燈子は触るやいなやそれを返す。

一方、真莉は土産をもらい上機嫌だ。燈子が返した分も貰い元廉が家にいなかったからかその分父に甘える。


それが続くと両親はどうして上の子はこうも扱いにくいのか?と気にかける事も諦め、元康、カヲリにとっては「可愛げがない子」になっていった。

  

しかも時を悪くして高柳の売り上げは落ちていた。

高柳の家の空気にはどこか気が張り詰めた様な空気が漂っていた。


商売の事が分からない母のカヲリには夫が気を悪くしないようと手がかる真莉を見ておく事に必死だった。



しかしそんな時、どうして燈子が何か触る事に癇癪を起こす事が反面した。


それは真莉の三つのお祝いで健康を祈願しに行った日の帰り。


節約をしていた高柳家が久しぶりに外出した日になった。


神社の開けた参道で偶然会ったお爺さんがいた。

「こんにちは。かわいいお嬢ちゃん」

「こ、こんにちは」

家以外の女中や使いに話しかけられない燈子にとって外での出会いは貴重だ。


父や母は離れたところで真莉と一緒になって話し込んでいた。


お爺さんは燈子を見て

「いやあ、本当にお人形さんみたいだ。私にもお嬢ちゃんみたいなひ孫がいるんだよ」


(そうなのね。だからお爺さんは優しいのね)


そう燈子が思っているとお爺さんは何気なく自分の孫達にするように彼女の頭を撫でた。


その時だった。


「いやあ!・・・ぁあ!」

突然の燈子の癇癪に気づいたのは母のカヲリだ。

「まあ、何事!」

高い着物を着ているカヲリにお爺さんは驚いていた。


カヲリはこの時、この年寄りの風貌を見るや野蛮な人攫いではないかと怪しんだ。


怪しまれている事を勘づかれたお爺さんは

「すみません!自分にもこのくらいのひ孫がいるもので頭を撫でたら気に障ったようで」

と必死に謝るとカヲリはまた燈子の面倒くさい癇癪が始まったと呆れた。


「あなたいい加減にしなさい!すみません、もぅこの子ったら」

カヲリはすっかり娘より他人の見方だ。


「違うの。お母様、あの人すぐに死んでしまうわ」


カヲリが謝って参道を降りる階段に向かって行ったお爺さんにはもう燈子の言葉は聞こえない。


「何を言ってるの?それはお年だもの。私達より早くこの世を去るものよ」


「違うっ、違うわ。すぐ死んじゃうわ!この階段を落ちて亡くなっちゃうわ。早く止めないと!」


「・・・何ですって?」


燈子の突然の死者宣告に彼女は驚いた。


直後、


「うわあああ!」

ドサッ!


悲鳴と何か異様な大きな音が下から響いた。


「なんだ!何事だ!?」

話し込んでいた父、元康と神主が駆けつけるとカヲリは腰を抜かしていた。


階段の下には燈子が話した通り頭から血を流し倒れた老人の姿があった。


神主は恐る恐る老人の息を確認したが虚しくもそれは止まっていた。







燈子の高柳での扱いが変わったのはそれからだ。

「食わせてやってるのにどうしてお前はこうなんだ!」


行き詰まった高柳の家計、はたやら見れば不気味な燈子の姿についに父はしびれを切らし激昂した。


そんな父に母カヲリは

「うっ・・・。本当にこんな恐ろしい子と分かっていたらなんで家に・・・」

泣きつく。


「?」

その時まで燈子にとって二人は本当の家族だった。


自分のせいで父が怒るのは分かっているが能力は制御できない。


しかし燈子にはカヲリの涙に違和感と困惑を隠せない。


自分が本当の高柳家の長女ならば「こんな子生まれてこなければ」と発言をするところ、「・・・本当にこんな子だと分かっていたら」

なんて言われたら自分は拾いっこみたいではないかという疑念がその時に生まれた。


それからとゆうものの掠りを来て女中と一緒に生活をした。


*・゜゜・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゜・**・゜゜・*:.。..。.:**:.。. .。.:*・゜゜・*


ここまで読んでくださりありがとうございます。

蔑まれ令嬢ものが好きな方はいいね、ブクマ、感想よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ